仕事と介護を両立させるのは簡単ではないが国の支援制度も改善。介護離職を避ける手がある(写真:EKAKI/PIXTA)

親の介護をするために仕事を辞める、介護離職が増えています。前回の「介護離職をすると、自分の老後が危なくなる」でも触れましたが、仕事を辞めれば自身のライフプランに大きく影響します。

もちろん、やむをえない場合もありますが、働き手を失うのは、社会にとっても大きな損失です。そこで国は介護と仕事を両立させるための支援策を充実させています。今回は、2018年から一部改正された「育児・介護休業法」などについてお話しします。

仕事と介護を両立するためには?

前回も述べたように、「介護離職」を防止するため、国はさまざまな取り組みを行っています。そのひとつとして、実際に仕事と介護の両立を実現している人や、ケアマネジャーへのインタビューを基に、両立するための「5つのポイント」を挙げています。


1: 職場に「家族等の介護を行っていること」を伝え、必要に応じて勤務先の「仕事と介護の両立支援制度」を利用する

2: 介護保険サービスを利用し、自分で「介護をしすぎない」

3: ケアマネジャーを信頼し、「何でも相談する」

4: 日ごろから「家族や要介護者宅の近所の方々等と良好な関係」を築く

5: 介護を深刻にとらえすぎずに、「自分の時間を確保」する

5つの話をひと言でまとめると、職場の理解を得て各種制度を活用したり、介護保険のサービスを上手に利用したりしながら、家族や近所の人の協力も得て介護をする、一人で抱え込まない、ということです。

国は育児や介護と仕事を両立させるため、「育児・介護休業法」という法律を設けています。働く人に親などの介護が必要になった場合、仕事を休んだり、勤務時間を短くしたりできることを定めたもので、前述のように今年から制度が拡充されています。

「介護休業」は年93日、「介護休暇」は半日単位で取得可

まず挙げられるのが「介護休業」です。これは介護する対象者(要介護者)1人につき、通算93日まで休業できるというものです。2017年までは1回に限られていましたが、2018年からは、計93日の範囲内で3回までに分けて取得できるようになりました。

93日では足りない(介護は通常、長期間続くため)という声も多いのですが、介護休業は、介護するために取得するというよりは、介護の態勢を整えるために利用する、ととらえたほうがいいでしょう。

たとえばケアマネジャーと面談する、利用する介護サービスについて検討する、実際に利用をはじめて本人の反応をみる、必要に応じてサービスの変更を検討する、といったことにも時間が必要ですから、その間、まとまった休みがとれれば安心です。

介護休業を取得できるのは、1年以上勤務しているなどの条件を満たす人で、自身の父母や配偶者(事実婚を含む)、配偶者の父母、兄弟姉妹、孫の介護が必要になった場合です(祖父母、兄弟姉妹、孫は、同居かつ扶養していることが条件)。

また「介護休業」とは別に、1年に5日まで取得できる「介護休暇」という制度もあります。

2017年までは1日単位でしたが、2018年からは半日単位でも取得できるようになりました。要介護になると通院にも付き添いが必要であり、そうしたときに介護休暇が取得できると便利です。

そのほか、事業主は、家族の介護が必要になった従業員に対し、(1)所定労働時間の短縮、(2)フレックスタイム、(3)始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ、(4)介護サービス費用の助成のうち、いずれか1つを会社の制度として定めることが義務付けられています。

昨年まで、労働時間の短縮などは介護休業と通算して93日でしたが、今年からは介護休業とは別に、3年間で2回以上の利用が可能となっています。

さらに介護が終了するまで、従業員が希望すれば残業が免除される制度も新設されています。日中は介護サービスを使い、夜は定時で帰宅する、といったことができれば安心です。

そうはいっても、「同僚に迷惑をかけるから休みにくい」という人もいますし、「介護休業など取得していたら昇進できない」という不安もありますよね。

育児・介護休業法では、介護休業や介護休暇、時短などをした従業員に対し、解雇や降格、不利益な配置変更、減給、不利益な評価、仕事をさせないなど、不利益な取り扱いをすることは違法としています。

さらに2018年からは事業主に対し、「上司や同僚などが職場において、妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする就業環境を害する行為をすることがないよう防止措置を講じなければならない」という防止措置義務も追加されています。

法的には不利益にならないように定められているし、嫌がらせなどを受けることなく、休んでいい、というわけです。ここまで法律で定めるのは、介護離職する人を減らしたい、介護と仕事を両立してほしい、ということです。ためらわず、制度を使うことをお勧めします。

介護休業をしても、賃金の一部が保険から給付される

休みを弾力的にとれるようになったのは前進ですが、おカネについても、気になるところです。まとめておきます。

介護休業を取得した場合は、雇用保険から「介護休業給付金」が給付されます。この金額も増額されています。

金額は勤務先からどの程度支払われるかによって異なります。介護休業中に勤務先から支払われる賃金が0〜13%以下の場合は賃金の67%、13%超80%未満では賃金の80%相当額との差額となっています(勤務先から80%以上が支払われる場合は支給なし)。つまり、介護給付金を受ければ賃金の少なくとも67%、多ければ80%が受け取れるわけです。

もしも介護離職すれば収入はなくなりますが、介護休業をして介護態勢を整えるなどすれば、賃金の7割程度は確保されるのです。残業を回避すれば残業代はなくなりますが、介護離職するよりは、家計面への影響は抑えられるはずです。

また介護給付金は、介護休業開始日前2年間に、12カ月以上雇用保険に加入している人、1年以上雇用が継続している人が対象ですから、1年以上勤務している会社員ならほとんどが当てはまります。パート勤務の人でも条件を満たす場合がありますから、確認してみましょう。

たとえば会社員の夫、パート勤務の妻といった世帯では、介護が必要になるとパート勤めの妻が主に介護を受け持つことになりがちですが、ここは要注意です。妻は介護休業がとれない(介護給付金も受けられない)というケースなら、介護休業が取得でき、介護休業給付金の給付が受けられる夫が休業したほうが、経済的にメリットが大きい可能性もあるからです。

要介護度に応じて「介護保険サービス」を利用する

介護と仕事を両立させるためには、介護保険サービスを上手に利用することも大切です。利用できるサービスは要介護度によって異なります。


たとえば、立ち上がりや歩行が困難で、食事、洗濯、入浴などに一部介助が必要な状態は「要介護2」が目安で、利用できる在宅サービスの目安は、週1回の訪問看護、週3回の通所系サービス、3カ月に1週間ほどの施設への短期入所(ショートステイ)、福祉用具の貸与などとなっています。支給限度額は19万6160円で、自己負担は1万9616円です(支給限度額は標準的な地域、自己負担額は1割負担の場合)。

もし「これではとても足りない」という場合は、全額自己負担でサービスを利用することもできます。

費用は介護を必要とする本人が負担するのが原則ですが、親には負担しきれないケースもあるでしょう。親の介護費を子が負担すると子の生活や将来に支障を来すこともあり、避けたいところですが、おカネがないからといって自身で介護する、そのために介護離職する、というのは避けたいところです。


介護休業をして時間をつくり、ケアマネジャーに相談する、兄弟姉妹で話し合う、近くに住む親戚や近所の人にも力を借りるなど、あらゆる方法を考えましょう。サービスの利用料を負担しても、離職して収入を失うよりは合理的というケースもありますから、長期的な視点で検討することをお勧めします。