マウントゴックス事件当時のカルプレス氏 ©共同通信社

 何の変哲もないコメントでも、こいつだけには言われたくない、というときがある。

「(コインチェックのセキュリティは)かなり甘いと感じた」

 1月26日に大手仮想通貨取引所「コインチェック」で発覚した時価580億円の仮想通貨流出事件をめぐり、ある専門家がネット放送のAbemaTVで発した言葉がネットで炎上している。

 発言主は、2014年に480億円相当の仮想通貨「ビットコイン」流出が発覚した、当時世界最大の仮想通貨取引所マウントゴックスのマルク・カルプレス元代表。マウントゴックス自体が何度もハッキングにあっていたため、ネットでは《今世紀最大の「お前が言うな」》などと揶揄する声が相次いだ。

 カルプレス元代表は、顧客から預かっていた資金を自分の別事業に充てたりした業務上横領罪などで東京地裁で公判中。現在はシステムエンジニアとして働いているという。全国紙社会部記者はいう。

「カルプレス元代表は無罪を主張していますが、その核のひとつが『ハッキングを受けた』というもの。今回、コインチェックのセキュリティが甘かったのは事実ですが、彼によそのセキュリティを云々されても……。ちなみに罪に問われているのは顧客からの預かり金の流用で、ハッキングは直接は無関係。当局は有罪間違いなしとみています」

 ただ、カルプレス元代表の発言にも考慮すべき一面がある、というのは当時を知る警察関係者だ。

「マウントゴックスをめぐっては、ずさんな経営体質の側面を突く形で捜査が結実したが、流出した仮想通貨の一部はカルプレス元代表が本当にハッキング被害を受けたもので、まだ犯人が分かっていない。犯行の手口は巧妙で、かつ海外からとみられ、外国の捜査機関に協力を要請したものの、なかなか国境を越えて真実がつかめない」

 一縷の光明もある。米検察当局の捜査で昨年、資金洗浄疑惑で逮捕された別の仮想通貨取引所の黒幕とされるロシア人の男が、関与を疑われているのだ。当局の発表では、マウントゴックスから流出した仮想通貨を資金洗浄していた疑いがあるという。

 元祖の事件ですらこの調子。コインチェックの流出事件の真実が解明されるのはいつの日か。

(「週刊文春」編集部)