2017年12月期の決算で売上高1兆円を初めて突破した資生堂。当初計画より3年前倒しでの達成となった(撮影:今井康一)

「(2020年12月期を最終年度とする)中長期戦略で目標としていた売上高1兆円を3年前倒しで達成できたのは非常にうれしい。世界で勝つためにはもっと高みを目指したい」。資生堂の魚谷雅彦社長は満足そうにこう語った。

シワ改善クリームが牽引

2月8日、同社は2017年12月期の決算を発表した。売上高は1兆0050億円(前期比18.2%増)、本業の儲けを示す営業利益は804億円(同2.1倍)と増収増益で着地した。資生堂が売上高で1兆円を超えたのは創業140年余りの歴史で初めてのことだ。


2017年6月に発売したシワ改善クリーム。ドラッグストアなどでの販売が好調に推移している(資生堂提供)

好調だった要因の1つが訪日外国人(インバウンド)需要だ。とりわけ、中国人女性を中心に高品質の日本製化粧品に対する人気が高まっている。資生堂では高価格帯の化粧品が伸び、免税売上高は585億円(前期比70%増)と拡大。日本だけではなく、中国本土や世界各地の空港免税店で同じモデルを起用したプロモーション活動を展開するなどの販促策も効いている。

強いのはインバウンドだけではない。主要顧客である日本人の購入が増えているのだ。資生堂の2017年12月期の国内売上高4310億円のうち、日本人向けの売り上げは3725億円と圧倒的。かつ、その売り上げが前期から5%伸びているのだ。

牽引役はシワ改善クリームだ。2017年に初めて医薬部外品として厚生労働省の認可が下りた製品で、同年1月にポーラが先行して発売したところ、瞬く間に大ヒット商品となった。

負けじと資生堂も6月に「エリクシール」ブランドのシワ改善クリームを発売。さらに11月には美白効果を加えた第2弾のシワ改善化粧品も投入し、2つの製品を合わせて昨年末までに約170万個を売り上げた。


魚谷雅彦社長は会見中、たびたび笑顔を見せた(撮影:尾形文繁)

魚谷社長は「シワ改善クリームはブームの様になっている。これが一過性にならないようにしていきたい。(専門店ブランドの)ベネフィークからも2月21日にシワ改善化粧品を発売する。コアにいろいろな形で展開し、市場を作っていきたい」と意気込む。

国内事業は絶好調の資生堂だが、悩みの種がある。米国事業だ。苦戦が目立つのが2010年に買収したベアエッセンシャル社で、2017年12月期は707億円に上るのれん減損を計上し、純利益は227億円(前期比29.1%減)と減益になった。

国内では最大950億円を投資

同社は強みであったテレビ通販(QVC)への投資を圧縮したことや、自然派を売りとする競合が複数登場したのが痛手となって、売上高が低迷。みずほ証券の佐藤和佳子シニアアナリストは資生堂のベア社買収について、「中期経営計画の最終年度に買収し、短期的な目標達成のための買収であった印象がある」と指摘する。2018年12月期は直営店閉店による固定費圧縮や、デジタル分野の強化で挽回を狙う。

米国事業の懸念事項は残るものの、資生堂は好調な国内事業を引き続き強化していく方針だ。栃木県で中価格帯スキンケア製品を扱う工場を2019年中に稼働させるほか、翌2020年までには大阪工場を大阪市から茨木市に移転し、生産能力を増強する。総投資額は最大で約950億円に達する見通しだ。

今回の決算発表時に合わせて、新年度にあたる2018年12月期の通期業績見通しについて会社側は発表を見送った。3月5日に3カ年の中期経営計画の公表を控えており、それと同時に新年度の通期業績予想を発表するという。現在の国内事業の勢いが続けば、2008年3月期に達成した過去最高の純利益354億円を超えるのは、ほぼ間違いないだろう。