〈旅と写真とゴハンと〉[湯布院編]各駅停車で九州一周! おいしい“裏ななつ星”紀行

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写真家小平尚典さんが、『世界の中心で、愛をさけぶ』の著者、片山恭一さんと巡った、ローカル線で行く九州一周の列車の旅。それは時間に縛られない、自由でおいしい贅沢な旅だった。

旅と写真とゴハンと Vol. 4


旅した人/小平尚典さん  旅した場所/大分 湯布院


旅の写真家たちが、旅先での“おいしい記憶”を、写真とともに振り返る人気連載。第4回は、九州は小倉出身の小平尚典さん。同じく九州は福岡在住、『世界の中心で、愛をさけぶ』の著者である片山恭一さんと、「九州満喫きっぷ」と使って旅した“裏ななつ星紀行”の思い出を教えてくれた。なかでも印象深かったという、湯布院と熊本について、前編・後編にわけてお届け。

自由気ままに九州を一周。格安ローカル列車の旅が教えてくれたのは“真の贅沢”


北九州市小倉北区出身の写真家でありメディアプロデューサーである小平さんにとって忘れられない旅がある。今から約3年前、20年来の友人、『世界の中心で、愛をさけぶ』の著者であり福岡在住の片山恭一さんと巡った、九州一周の列車の旅だ。コンセプトは“裏ななつ星紀行”。JR九州が企画する、クルーズトレイン「ななつ星 in 九州」と同じルートを、ローカル線で巡るという、大人に許されたある意味、贅沢な旅。

大分〜博多間の移動は、「久大本線」を利用。

ホームから見える線路。単線列車ならではの、まるで映画のワンシーンのような風景。

列車の旅に欠かせない駅弁。最近では東京でも手に入るが、現地でしかも列車の中で、車窓を眺めながら食べるそれは格別。

風情のある建物の「豊後中村駅」。小平さんが幼い頃キャンプへ行ったとき降りたったことがあり、望郷の思いがあふれたそう。

ふたりの旅をバックアップしたのが「旅名人の九州満喫きっぷ」。3回利用分で10,800円。一日あたり乗り放題で約3,000円の、とてもお得な切符。旅を盛り上げるべくふたりが自ら課した条件は、3泊5日で予算5万円。

「リーズナブルでおいしいごはん処にありつくために、地元の人においしいスポットを聞いてまわりました。なにせ時間はたっぷりある。行き当たりばったりでいろんな人と話したり、温泉があったらふらりと立ち寄ったりして。地元の人が通う居酒屋や飲食店で、地産のものとお酒をいただく。その土地の人と食と、時間をかけて向き合うことがこんなにも贅沢なことなのかと気がつきましたね」

湯布院のメインとなるビュースポット金鱗湖。

地元の人に「金鱗湖近くで、手軽に入れる温泉はありませんか?」と聞いたら教えてくれたのが「下ん湯」(写真下)。ゲゲゲの鬼太郎に出てくるような無人ポストに、入浴料200円!を入れて自由に利用できる。

“おいしい作戦”を練るのが、旅の醍醐味


「旅は、人生最大の教科書」だと言う、小平さん。大学卒業後、渡英し欧州を放浪。新潮社『FOCUS(フォーカス)』専属カメラマンとして取材活動に明け暮れ、ロサンゼルスに22年間滞在した。現在も国内外問わず、多くの場所を訪れている。旅先の数だけ、食体験が増えるなか、小平さんならではのセオリーがいくつか芽生えたという。そのうちのひとつが「地域に昔からある食べ物とお酒を味わうのが礼儀」ということ。

“車中酒”は、湯布院で作られた、どぶろく。

「旅先ではやはり“そこでしか食べられないもの”に惹かれますね。自分がはじめて訪れる場所も住んでいる人からしたら昔から生活をしている場所。その土地のことを知る上で、昔から地元の人が親しんでいる料理とお酒との出合いは大事にしたい。だから出発前にはリサーチもしますが、それはあくまでも予習。結局は現地でうろうろしながら冒険感覚でお店を探すことが多いのですが、今回のように片山さんと“あのお店が人気らしい、このお店が気になる”などと、“おいしい作戦”を一緒に練るのもまた楽しい。気の置けない仲間がいたら旅はもっと楽しくおいしくなります」

束縛しない、されない。気の合う人と行く自由きままな旅は、大人ならではの旅のスタイルだ。急がない旅路だからこそ辿りつけた、地元の“おいしい”。今回は湯布院〜大分間で巡りあったグルメスポット2軒をご紹介。

地元の人に愛される、洗練された味わいの蕎麦/湯布院「古式手打ちそば泉 金鱗湖店 」


会津出身の料理人が作る洗練された蕎麦の味わいが絶品だというこちらの必食は、かもせいろ。

「名勝地、金鱗湖を眺めながら蕎麦をいただけます。蕎麦に対する造詣が深い主人は、蕎麦道場を営むほど。香り高い二八蕎麦が、鴨入りのコクのあるつゆと絡んで、そのおいしさに箸が止まらない。系列店で売っている黒糖揚げまんじゅうも絶品。食後のデザートとして買うのをお忘れなく」



 

天然ものの、ふぐと鰻が揃い踏み


湯布院から大分に移動した小平さんを待ち構えていたのは、とっておきの食体験だった。

「大分といえば、ふぐ、うなぎなども有名。写真下の茹でた川蟹は前菜です(笑)。鮎の甘露煮、鱧のあらいなどが出たあとに、メインとして、ふぐ刺し、スッポン鍋、鰻の素焼きと蒲焼をいただきました。驚くべきは、これらすべて天然ものであるということです。旅先ならではの贅沢ですよね。こちらのお店は完全予約制。その日仕入れた食材のみを使うので、メニューは無しの時価ですが、1万円でおつりがくるので安心してください」

味処 雪うさぎ
大分県大分市大道町1-3-25
097-543-5534

大分駅周辺のふぐのお店

大分駅周辺のレストラン

次回は、熊本編をお届け。乞うご期待!

PROFILE


小平尚典(こひら・なおのり)

福岡県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、渡英し欧州を放浪。帰国後、エディトリアルカメラマンとしての実績を積み、1980年に新潮社『FOCUS(フォーカス)』専属カメラマンとして、創刊に参加。1987年より22年間米国ロサンゼルスに拠点を移し、取材活動。1987年7月23日にシアトルにて、孫正義をインタビュアーにむかえビルゲイツを撮影、日本で話題となる。2009年に帰国後は、米国での経験を生かしメディアプロデューサーとして活躍。著書では『4/524(御巣鷹山日航機墜落事故写真集)』『シリコンロード』『e-face』『原爆の奇跡』『This is NOMO』が有名。旅関連では、『そうだ高野山がある』『神が創ったった楽園タヒチ』『彼はメンフィスで生まれた』『アトランタの案山子・アラバマのワニ』などを刊行。公益社団法人日本写真家協会会員、米国海外特派員協会会員、早稲田大学非常勤講師。

写真:小平尚典

取材・文:吉村セイラ