店舗の2Fに飾られている大きなナマズとエビが目印だ/photo by 小塚清彦/(C)KADOKAWA

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岐阜県海津市にある千代保稲荷神社。参拝した後は、やはりなんといっても名物のナマズやウナギ料理を味わいたい。それもできるだけリーズナブルに。そんな時にうってつけの店が、東口の大鳥居から徒歩1分の「稲金(いなきん)本店」だ。

【写真を見る】香ばしい香りが食欲をそそる「なまずの蒲焼き」(時価)。ほかにコイのあらい、ご飯、吸物が付く「なまず定食」(1300円から2000円)もある/photo by 小塚清彦/(C)KADOKAWA

■ ナマズやウナギの料理を低価格で提供

戦前にあたる1932(昭和7)年、現在よりも2回り以上は小さな店として創業したという「稲金本店」。その後、宴会用の別館「なまず館」や見事な石庭など徐々に店を拡大し、つい2年ほど前には新たにテーブル席も作られた。現在は座敷60席、掘りごたつ40席、テーブル40席の計140席。その成長ぶりからも、長年にわたる人気のほどがうかがえる。

そんな人気の秘密は、なによりも良心的な価格設定にある。「当店でお出ししているナマズは、地元の漁師さんから特別に安く分けていただいたものを使っているんです」と話すのは、3代目店主の早川金裕喜(かねゆき)さん。仕入れ値を抑えることで、リーズナブルに提供することができるのだという。

■ 生きたナマズを注文を受けてからさばく

「稲金本店」のナマズ料理は、鮮度のよさも大きな売りだ。店頭に生けすが作られており、注文を受けると生きたナマズを網ですくい、そのまま調理場へと運んでいく。

「新鮮なナマズは身がやわらかくて、独特のプリプリした歯ごたえが楽しめるんです」と金裕喜さん。調理場に立ち続けて30年以上のベテランだけに、慣れた手付きで素早くさばいていく。見事な手際のよさである。

そして長い串を刺し、焼き台でじっくりと蒲焼きにする。なお、タレは先代から受け継いだ継ぎ足し。少量生産のたまり醤油など、使用する調味料にもとことんこだわっているそうだ。

香ばしく焼きあがった「なまずの蒲焼き」(時価)。なお、「稲金本店」はナマズの大きさを大中小で分けており、写真のナマズは中と大のあいだ。3〜4人前で価格は4000円前後だとか。大きさはたっぷり30cm以上はありそうだ。

そしてもちろん、ウナギ料理も「稲金本店」の名物だ。「うな丼」(1550円)や「ひつまぶし」(2400円)などもあるが、一番のおすすめはウナギ1匹を丸々使った「特上うな重」(2700円)。ご飯が隠れるくらいにウナギがのっており、このボリュームだと、ほかの店なら4000円以上するのではないだろうか。

さらにもう一品、「稲金本店」のいち押しを紹介しよう。これがなんと「鶏すき焼き」(1050円)。千代保稲荷といえば川魚料理が有名なので、意外に思う人もいるかもしれないが、創業当時からのれっきとした看板メニューである。「千代保稲荷はキツネの神様ですから、4本足ではなく2本足の動物を。そういう意味もあって牛肉ではなく鶏肉を使っているんです」と金裕喜さん。素材にもこだわっており、鶏肉は宮崎産。ネギや白菜など野菜は先代が畑で作ったものを使っているという。

■ 門前町トップクラスのコストパフォーマンス

現在は金裕喜さんが調理を一手に引き受け、女将を務める母の京子さんと夫人の昌世さんが接客を担当している。なお、店頭には京子さんの手作りという「もろこ」(大1000円、小500円)などの持ち帰りメニューも並ぶ。昔からの同じ味付けを守っているそうで、みやげにも最適だ。

「どこよりもいい食材を、どこよりもお値打ちに提供する。これが創業当時からの変わらないこだわりです」と金裕喜さん。数多くの老舗店が立ち並ぶ門前町のなかでも、まさに第一級のコストパフォーマンスと言っていいだろう。千代保稲荷を訪れる時は、ぜひとも「稲金本店」に立ち寄ってもらいたい。(東海ウォーカー・エディマート)