大規模緩和の金融仲介機能への影響、注視=鈴木日銀委員

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[和歌山市 8日 ロイター] - 日銀の鈴木人司審議委員は8日、就任後初の対外講演を和歌山県和歌山市で行った。米株式市場が「リーマン・ショックを超える下落幅を記録した」点に触れたが、大規模金融緩和が金融仲介機能に与える影響を「丁寧にみていく」と述べ、政策運営では副作用にも配慮する姿勢を明示した。

<物価目標途半ば、強力な金融緩和息長く継続>

鈴木委員は物価の現状について「2%の物価目標に向けたモメンタム(勢い)は維持されている」としつつも「2%の目標までなお途半ば」と述べ、「強力な金融緩和を息長く継続していくことが重要」との方針を強調した。

日銀が大規模緩和を継続している中で、足元の物価が上昇すれば、家計や企業の物価観である「中長期的な予想物価上昇率も引き上げられることが考えられる」と述べ、現状の政策が十分な効果をもたらすとの考えを示した。

一方、「市場は生き物で、足元の大規模緩和が経済・物価・金融情勢の中で及ぼしている影響について注視していくことが重要」とし、「特に着目しているのは企業と投資家の間の資金フロー、保険・年金の資産運用などへの影響」と語った。

貸出金利と有価証券の利回り低下が「金融機関の収益を圧迫している面もある」と指摘。「少なくとも現状は、金融システムの安定性は維持されている」としつつも、「金融政策が金融システムや仲介機能にどのような影響を与えるかについては、大規模緩和が続くことの累積的な影響も含め、丁寧にみていく必要がある」と強調した。

<米ハイイールド債スプレッド、リーマン・ショック前水準まで低下>

先週末からの世界的な株価急落を踏まえ、「米欧の金融政策正常化に向けた動きの中での米国長期金利や新興国・資源国のマネーの動向といった点も注視していくことが重要」としたほか、「米ハイイールド債のスプレッドがリーマン・ショック直前の水準まで低下した」ことに言及し、市場急変の可能性を警戒。資源価格動向についても「行き過ぎた上昇は原材料コスト高を招く一方、急激な下落は市場の混乱を招く恐れがあり、先行きのリスク要因」と見方を示した。

日銀ウオッチャーの間では、メガバンク出身の鈴木委員は大規模緩和が長期化することによる金融機関への弊害に詳しいため、金利引き上げ方向の調整に積極的との思惑があったが、講演では「イールドカーブの適切な形成を促すにあたっては、経済・物価・金融情勢を踏まえて判断していく」と述べるにとどめた。

*内容を追加しました。

(竹本能文)