「悔しい結果だが充実感も」と杉田。日本がイタリアに善戦

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 2月2日から岩手県盛岡市で行われたデビスカップ・ワールドグループ1回戦で、日本はイタリアに1-3で敗れ、9月に行われるプレーオフに同グループ残留を懸けることになった。

「これまでに出場したデビスカップで最もタフな対戦だった。暑いメルボルンから来てみたら、ここは寒いし、雪は降るし、本当に疲れた。気持ちでプレーしたよ」
 シングルス2試合とダブルスで計3勝を挙げたファビオ・フォニーニは、国際テニス連盟(ITF)の公式ウェブサイトの取材に本音を漏らした。
 イタリアの2勝1敗で迎えた最終日のシングルス。フォニーニは4時間8分の熱戦の末、日本のエース杉田祐一を振り切ってチームの勝利を決めた。単複3試合にフル回転、3日間で計11時間41分もコートにいた彼が最大の功労者であり、この対戦の主役だった。
 感情にまかせてラケットを投げ、天井に向けてボールを打ち上げた。激しい口調で審判に異議を唱え、際どいボールの判定をめぐって5分間も主審とやり合う場面もあった。我慢の限界だったのか、コートを離れてトイレに駆け込み、遅延行為の警告を受ける珍プレーもあった。

 感情を内に閉じ込めず、その都度、解き放ちながら集中していく、それが超一流の勝負師になるために彼が編み出した手法だ。64歳のコラド・バラズッティ監督は、お行儀の悪いエースを--ときおり頭を抱えながらも--黙って見守り、その力を引き出した。
 団体戦でも圧倒的な個の力がすべてを支配してしまうこともある。今回はそんな対戦だった。しかもイタリアは、選手の力が拮抗している上に結束も固く、決して王様を孤立させない。杉田を軸に日本も健闘したが、このチームに勝つには相当な国際舞台での経験と、百戦錬磨のつわ者たちに個人戦で揉まれることが必要だろう。
 大きな手応えを得て、同時に彼我のチームの熟成度の差も頭にあったのか、日本の岩渕聡監督は、すっきりした表情で「4試合すべてが大接戦だった。1勝3敗に終わり、悔しさもあるがネガティブな考えはない。得たものが多い対戦だった」と総括した。
 初日の第1試合でダニエル太郎はフォニーニと5セット、3時間56分の熱戦を演じ、一時はセットカウント2-1と先行した。挑戦者らしく果敢に戦ったダニエルは「僕がいいプレーをしたから2セット取れた」と胸を張った。
 マクラクラン勉と内山靖崇のダブルスは、15年全豪オープン男子ダブルス優勝のシモーネ・ボレッリ/フォニーニの強豪ペアと5-7、7-6、6-7、5-7という大接戦を演じた。ダブルスはここ数年、日本の弱点だったが、岩渕監督は「この(ワールドグループという)レベルで、ダブルスで初めて勝負できた、勝ちにいった試合」と25歳同士のペアを称えた。
 世界ランキング自己最高13位のフォニーニを、杉田は第4セットのタイブレークでマッチポイントまで追い込んだ。このセットには、5-4の「サービング・フォー・マッチ」もあった。対戦を振り返り、「悔しい結果だが充実感がある」と語った表情は晴れ晴れとしていた。
 初日の第2試合で杉田は、先の全豪でベスト16入りしたアンドレアス・セッピから勝利をもぎ取った。最終セット5-6からのサービスゲームでは相手にマッチポイントを握られたが、これをしのぎ、タイブレークは7-1と圧倒した。
 相手のマッチポイントの場面を杉田は「しっかり、淡々、という感じ」と振り返った。開き直ったのでもなければ、もちろんあきらめてもいない。普段と同じように、その1ポイントに集中し、相手から2本のミスを引き出した。ゲームポイントではサービスエースを決めて見せた。
 昨季、ツアー初優勝を果たした杉田の勢いを示した場面だが、勢いだけで片付けるのは早計だ。全豪では2回戦でイボ・カルロビッチ(クロアチア)に第5セット10-12で敗れていた。ツアーやデ杯で何度も修羅場をくぐり、ときには苦汁をなめた彼だからこそ、土壇場で「しっかり、淡々」と戦えるのだろう。
 岩渕監督は「選手たちが向上心を強く持ち、期間中も日々、自分を高めようとしていたのを見ると、今後が楽しみになる」と語ったが、これは決して身びいきから出た褒め言葉ではない。日頃から自分を律し、実戦で強豪に鍛えられる。そうして、日本の選手たちも、フォニーニが見せたような鋼(はがね)の強さを身につけるだろう。

(秋山英宏)

※写真は「デビスカップ」での杉田祐一
(Photo by Kiyoshi Ota/Getty Images)