コインチェックの原告団準備会も開かれた=3日、東京都港区

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 仮想通貨取引所大手コインチェックから、巨額の仮想通貨「NEM(ネム)」(通貨単位はXEM)が流出した問題で、同社は被害者に約460億円を日本円で返済するとした一方、出金停止措置を続けている。早くから仮想通貨の問題点を指摘してきた認知科学者の苫米地(とまべち)英人氏(58)は、「被害者は銀行に実印を預けてしまい、お金を引き出せなくなっているのも同然だ」と同社の手法を厳しく批判する。

 約580億円分の「ネム」の流出が明らかになると、コインチェックは同社を通じてネムを購入していた約26万人全員に対し、日本円で総額約460億円を返金すると発表した。

 「現金で返すなら文句はいえないという利用者がいるかもしれないが、それは違う。銀行が預金者に対し、自分の都合で使う通貨を変えてしまうのと同じ話で、しかも、預金者は100万円を預けていたのに戻ってくるのは80万円にしかならないようなものだ」と苫米地氏は語気を強める。

 オウム真理教信者の脱洗脳で知られる一方、米カーネギーメロン大大学院で計算言語学博士号を取得し、通産省情報処理振興審議会専門委員を歴任。仮想通貨など金融やテクノロジーについても造詣が深い苫米地氏。仮想通貨の取引所を銀行にたとえて説明を続ける。

 「ある銀行の新宿支店からお金が盗まれて営業中止になったら、預金者は別の渋谷支店でお金をおろすことができる。仮想通貨を取り扱う取引所はコインチェック以外に何社もある。コインチェックからXEMがなくなってしまったのなら、本来であれば保有者は別の取引所のところに行っておろせばいいだけの話だ」

 ただ、日本では仮想通貨をそのように扱うのは難しいのだという。

 「仮想通貨を始めるには、利用者が本人であることを証明するデジタル証明書(プライベートキー)が必要だ。これが銀行に口座を作る際に必要な実印にあたる。本来なら第三者の目に触れないよう大事にしまっておくものだが、コインチェックを含め、日本の多くの取引所が『預かりサービス』などと称して利用者のプライベートキーを手に入れたり、実は発行してなかったりで、自由な引き出しを不可能にさせている。価値の暴落や取り付け騒ぎを防ぐため、ホンネをいえばどこの取引所も利用者に仮想通貨をおろしてほしくない」(苫米地氏)

 コインチェックの大塚雄介取締役は返金について「現預金で対応する」としているが、苫米地氏は「利用者から受け取った実際のお金は販売用の仮想通貨購入などのためにすでに使ってしまい、手元にない可能性もある。まず同社がすべきは利用者にプライベートキーを返却することだ」と指摘する。

 被害に遭った約26万人の多くは、仮想通貨事情に明るくないとみられ、「実印を預けてしまった」と苫米地氏。「仮想通貨に興味があったとしても、退職金をすべてつぎ込むようなやり方は厳に慎むべきだ」と念を押した。