既存店は3年ぶりの前年超え、百貨店は“停滞”から脱したの?

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 訪日外国人(インバウンド)による免税売上高の伸びなどを背景に、2017年は百貨店の売上高が既存店ベースで3年ぶりに前年を超えた。電子商取引(EC)が存在感を増すなど、事業環境は変化している。三越伊勢丹ホールディングスの杉江俊彦社長と、大丸松坂屋百貨店の好本達也社長に話を聞いた。

三越伊勢丹HD杉江俊彦社長
 ―休業日や営業時間をどう見直しますか。
 「店舗がある地域ごとに状況を考慮しなければいけない。休業日を設けることでお客さまに不便をかけることもある。訪日客含め顧客の利便性を考えれば、営業時間はむしろ長い方が良いかもしれないが、従業員の意欲や働きがいに影響する。柔軟に検討していく」

 ―百貨店市場は縮小傾向です。
 「都心の大型店の売り上げは20年間落ちていない。課題は地方。必要とされる店舗になるため、医療やフィットネスを取り入れた店舗にモデルチェンジする方法もある」

 ―デジタル戦略の再構築については。
 「我々には他の企業にはない“リアル基盤”がある。例えば、当社が発行しているクレジットカードを持つ人の購買履歴に、店舗で買った服のサイズをひも付けることで、情報がさらに生きてくる」

 ―人工知能(AI)の活用について、どう見ますか。
 「電話でよくある問い合わせについて、AIを使い、(対話アプリケーションの)LINEなどで回答する、といった方法は考えられる。食品売り場でAIを用いて、個客に合う日本酒を勧めるといった取り組みはしている。ただ、AIを使うことが目的になってはいけない」

 ―欧米に加え、中国や東南アジアで事業展開しています。
 「百貨店が文化に根付いている日本以上に、既存モデルでは難しい。商業施設と住宅を組み合わせる不動産開発などを進めていく」

大丸松坂屋百貨店・好本達也社長
 ―“5年後の定番生活を提案する”ため、「未来定番研究所」を社内に設けました。
 「今から5年前、免税売上高がこれほど伸びるとは思っていなかった。日々の業務は“来年”について考えるのに追われてしまう。同研究所には9人が在籍している。社外の人も入ってもらった」

 ―SDGs(持続可能な開発目標)への関心が高まっています。
  「店頭で、お客さまが不要な衣料品や雑貨を買い物券と引き替えるプロジェクト『エコフ』はその一つ。地域貢献の一環として京都・祇園の町屋を再生し、大丸京都店のブティックとして活用している。本業を通じ、取り組んでいく」

 ―外国人顧客の獲得については。
「ここ1年、銀聯カードより(中国のモバイル決済サービスの)アリペイなどの支払いが増えている。海外の富裕層にアプローチする仕組みを作りたい。金融機関と連携し、日本にセカンドハウスを持つような富裕層への提案をするといったことも考えている」

 ―シェアリングエコノミーへの対応は。
 「百貨店が乗り出すのは難しい。ただ脅威であり、アライアンスなどを視野に、研究テーマとしていく」

 ―働き方改革も求められます。
 「当社は、全社員に対する短縮勤務者の割合が8%。女性活用にも早くから積極的だ。ただ、昔と比べ営業時間が延びるなど、バランスを欠いているとの思いはある。外商部門でのペーパーレス化や、AI導入による生産性向上も図る考えだ」