1月末に開催されたスノーボード・冬季Xゲームズ大会(米国コロラド州アスペン)から帰国し、取材に応じた岩渕選手(撮影:尾形文繁)

冬の「小さな巨人」がここにいる――。
名前は岩渕麗楽(いわぶち・れいら)。あどけない笑顔を見せる16歳の女子高校生でありながらも、大胆かつ豪快なスタイルとジャンプを披露する。ワールドカップ(W杯)への参戦は2017年9月からで、平昌(ピョンチャン)五輪スノーボード女子スロープスタイル・ビッグエア代表の座を射止めた。
初めて会った印象は、控えめでおとなしく礼儀正しい、ごく普通の女子高校生。
昨年12月に女子ビッグエアでW杯(米国・コロラド州)初優勝。1月12日に同じくW杯のスロープスタイルで2位表彰台。1月27日には、世界のごく限られた選手しか出場できない冬季Xゲームズの女子ビッグエアで初出場2位を獲得。日本女子スノボ界では最年少出場で、初の銀メダルももたらした。9日に開幕が迫る直前、オリンピック日本代表の鼓動が聴こえる。

4歳の頃からスノーボードを始める

――平昌五輪出場おめでとうございます。出場が決まった時の気持ちを教えていただけますか。

実はネット(のニュース)で知った感じなので。実感がわかなくて……。発表の時、ちょうどフライトで。1月22日まではコーチも選手には言っちゃいけないという決まりがあったので(笑)、ニュースで知りました。

――誰の支えが大きかったですか。

いちばんは、おばあちゃんです。メダルを取った時は私より喜んでいました。もちろんほかの人もたくさん応援してくれますが、直接「頑張れ!」っていちばん言ってくれるのがおばあちゃんです。感情をいちばん表に出してくれるので、(Xゲームズの銀)メダルはおばあちゃんが大事に持っていてくれています。

――スノーボードを始めたきっかけは?

両親がもともとやっていた影響です。4歳の時から雪山に連れていかれ、気がついたらやっていたという感じですかね。年に2〜3回滑るだけだったのが、小学校に上がる頃にはだんだん1人で滑れるようになって、毎週末通うようになりました。

最初は1人で滑れなくて、結構やりたくないという気持ちがありましたが、1人で滑れるようになってからは、すごい楽しくなってきて。自分から「始めよう!」と思いました。今も昔も滑るのが楽しくてやっているから、昔の楽しい感覚は今でも残っています。


スノボW杯女子ビッグエアで優勝した岩渕麗楽選手=米国コロラド州コッパーマウンテン(写真:共同通信社)

――1月27日(現地時間)の冬季Xゲームズ銀メダルも快挙でした。この時の滑りを振り返ってみていかがですか。初出場で緊張はありましたか。

ビッグエアは、時間制限がある中で本数を飛ぶルールでした。飛べる本数は決まっていない分、緊張することなく、いいモチベーションのまま滑れました。1番手のスタートでしたし、公開練習が終わってから、自分のスタートまでに時間が空いていたわけではなかったので。私の場合、頑張ってと言われると結構、気張っちゃう気がするので、「楽しんでこい」って言われるのがいちばん好きなフレーズで、楽しめました。


岩渕麗楽(いわぶち れいら)/2001年12月14日生まれ。岩手県一関市出身。身長149僉0豐愕惘々眦学校在学中。キララクエストスノーボードクラブ所属。得意料理はミートドリア(撮影:尾形文繁)

W杯とXゲームズは、本気度が違いますね。W杯はもう本当に大会って感じ。Xゲームズはイベントみたいな感じかなと。あまりガツガツしてなくて、楽しく滑れたと思います。得点もやっぱり気にはなりますが、自分のスタイルを出してくる選手が多いです。

たぶん、サッカーでいうとW杯、野球でいうとワールドシリーズ。これが、世界でいちばん大きな大会ですが、スノーボードではオリンピックとXゲームズが同じくらい頂点にあります。

世界選手権は2年に1回ですよね。日本ではすごい大会だと思いがちですが、外国では出場しない選手が意外と多いです。

それに、オリンピックを辞退する選手もいます。そういう選手でもXゲームズには出場してきます。W杯などで活躍して、大会側から呼ばれないと出場できません。今回、世界から選ばれたのは8人の選手でした。

快挙で、世界に衝撃を

――Xゲームズの女子ビッグエアに日本人で初出場、初メダルの快挙を成し遂げました。世界で数人しかできない「バックサイド・ダブルコーク1080(縦に2回転しながら横に3回転する大技)」をW杯に続いて決めました。W杯で初優勝した昨年12月とXゲームズの2位はどちらがうれしいですか。

Xゲームズのほうがちょっとうれしかったですね(笑)。W杯で優勝した時は、ダブルコーク決められてうれしい!という思いが強かったので。結果に対してうれしいなと思うのは、Xゲームズでした。

――出場するスロープスタイル・ビッグエア、それぞれの競技のどのようなところに魅力を感じていますか。

スロープスタイルは、その人のスノーボードスタイルが出やすいかと思います。ジャンプが3回あるし、全部やる技が違います。その前の(アイテムが設置された)ジブセクションには、障害物があり3レーンから選んで滑ります。人によってはアイテムの使い方が違うし、いろいろな滑り方が見られます。

ビッグエアは、ジャンプ1回勝負。スロープスタイルより、大きなジャンプ台を使うのでより迫力が出るし、インパクトが大きいです。

――自身のターニングポイント、大舞台が見えてきたのはどのあたりですか。そこからどのようにモチベーションを高めてきましたか。

昨年9月のニュージーランドで開催されたW杯に出ましたが、その時からです。自分が思っているより決勝進出できて、ある程度のところまではいけるのかなと思いました。3カ月後の12月のW杯までは、モチベーションがどんどん上がっていった感じでした。

ほかのナショナルチームのメンバーが大会に出ている時に私が出られない試合もあって。ほかの人の結果とか見ると、入賞や表彰台に乗っていたので。自分も早く大会に出て、やりたいなと思っていてモチベーションはずっと高いところにありました。

ジャンプする時は、怖いという気持ちを、振り切ってやるようにしていて。怖いからと後回しにしていると、どんどん気持ちが弱くなって出来なくなるから。やるって決めた時にはやるようにしていました。気持ちは自分で高めていく時もあるし、本当にムリだと思ったら周りの人から背中を押してもらう時もあります。

(身長149センチという)体格差は気にしていません。自分がやりたいことをやるという感じです。大会前は、表彰台にいるイメージをする時は時々あります。でも、技のイメージトレーニングは、全然しないですよ。結構感覚で、いつも覚えているタイプなので。イメージするよりは、直接やって覚えるみたいな(笑)。

雪上では、まるで「小さな巨人」のよう

――豪快かつ魅力的な技で、まるで「小さな巨人」のようです。体のケアや大技を繰り出すための体作りや秘訣は?

小さな巨人……(笑)。秘訣はないのですが、2017年の夏からジムに通って、結構筋肉をつけようと学校終わりに毎日行っていました。土日は宮城のほうにスノーボードの練習に行っています。


体のケアにも細心の注意を払って取り組んでいると話した岩渕選手(撮影:尾形文繁)

脂肪だけじゃ、ちょっと良くないじゃないですか(笑)。筋肉で体重を増やさないといけないと言われて、筋トレを始めました。スロープスタイルとビッグエアは体重をのせるために必要で、体重があるとスピードに乗って高く飛べるんです。筋トレは、大体1時間30分〜2時間を休みながら行います。筋トレ中は、ここの筋肉を使っているというのを意識してトレーニングをしています。

ビッグエアはそこまで息はあがらないですけど、スロープスタイルは、滑り終わった後は、結構息があがります。家が岩手で、夏場練習しているところが宮城だから、土日だけスノーボードの練習をします。

スノーボードを知らない人たちには「土日だけでスノーボードの感覚とか鈍らないの?」と驚かれますが、始めた時からずっとこの環境なので、感覚が鈍ることはなく、これが私にとっては普通です。スノボの練習は、1日5時間やります。夏場行っているところでは、2時間30分で1つのセッションで、その間ずっと流している感じです。ジャンプして、(リフトで)登って、ジャンプして、登っての繰り返しですね(苦笑)。

技術的なトレーニングで言えば、反復練習はあまり得意じゃないです。1回で決めないと結構疲れてきて、どんどん崩れちゃうから、反復練習するよりかは、短期集中トレーニングのほうが調子良かったりします。


平昌五輪に向けた意気込みも語ってもらった(撮影:尾形文繁)

スノーボードを知らない人にも見てほしい

――外国での大会を転戦する中で、時差との戦いやコンディション維持、環境に慣れることが重要なポイントとなります。

時差はあるままで出ますが、すごい早起きするので大会が始まる頃には、体がよく動く状態になっています。雪質でいえば日本の雪は結構柔らかめで、いままで韓国では滑ったことはないですけど、平昌は寒いですし、雪もあまり降らないので硬いかなと思います。

スロープスタイルでは、2月11日が予選。予選突破すると12日に決勝と連戦になりますが、翌日の筋肉痛など、体への影響はあまりありません。もちろん、公開練習や予選で変な転び方をすると、痛みは残りますが、うまくこなしていれば、2〜3日はいけます!

スノーボードは、多少痛いところがあっても公開練習なしで、本番だけ合わせるとか、結構リスクはあるけど、そういうやり方もあるので、体に負担をかけないでやる方法はあります。

――今回のオリンピックでどんな方に見てもらいたいですか? また岩渕選手のここを見てほしいというのがあればぜひ教えてください。

スノーボードを知らない人も、オリンピックという特別な大会だから、見てほしいですし、できるだけたくさんの人に見てもらいたいです。私は、ビッグエアのほうができる技が多いので、特に(2月19日から予選が始まる)ビッグエアを楽しみに見てもらえたらいいなと思っています。