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長くPCを使ってきた人が、PCを持たないことには抵抗がある。一昨年の春に9.7インチの「iPad Pro」を発表した際に、AppleがiPad ProをWindows PCからの「究極のアップグレード」とアピールした時にはPCユーザーからの猛烈な反発にあった。しかし、昨年10月〜12月期の決算の内容を見ると、PC市場の盛り返しと共に、ユーザーのPC離れの進行も読み取れる。開発者やクリエイター、ゲーマーが高性能なPCを求める一方で、一般コンシューマ層ではPCを持たないライフスタイルが浸透している。

Microsoftの12月期決算で、Windows/デバイス/ゲーム/検索を含むモア・パーソナル・コンピューティング (MPC)は売上高121億7000万ドルで前年同期比2%増だった。悪くはない。しかし、Windows事業の内訳はOEM Proの売上高が11%増、OEM non-Proが5%減と明暗が分かれた。法人需要は堅調だったが、コンシューマ向けは下落し、全体として力強い回復には至らなかった。コンシューマ向けが低迷した原因として、同社はエントリー価格帯のデバイスの販売台数減を挙げている。

エントリー価格帯のPCが不振だった原因は何か? Appleの12月期決算を見ると、iPadの販売台数が1317万台で前年同期比1%増だった。iPadは2010年の第1世代登場後に大ヒットして急成長を続け、当時はPCの脅威になると見なされた。ところが、2014年に減速し始め、同時にタブレット市場の伸び悩みが始まった。そのため、iPadは衰退しているイメージを持たれるが、iPad Proの投入で減速に歯止めがかかっている。そして、ホリデーシーズンに1300万台という規模で緩やかながらも成長している。

iPadの市場規模がどの程度かというと、2017年通期の販売台数は4800万台である。米IDCは、2017年の世界のパソコン出荷台数を2億5950万台と予測している。ノートPCがそのうちの6割〜7割と考えると1億6000万台〜1億8000万ぐらい。つまり、昨年世界で販売されたノートPCの27%〜30%に相当する台数のiPadが昨年売れた。コンシューマ向けPCに絞り込んで比べたら、その割合はもっと上がる。MicrosoftでWindows 7の開発を率い、現在はAndreessen HorowitzのパートナーであるSteven Sinofsky氏が、iPadの市場規模に関して次のようにツィートしている。

2017年に世界で、おそらく1億台程度のコンシューマ向けラップトップが売れた。iPadの販売台数は半分近くに相当する。iPadの価格、耐久性、ライフスパンがPCと比べられ、その結果の数字である。

機能や性能を必要とするならiPadはPCの代わりにならない。でも、Webブラウジングやメール、ソーシャルネットワークサービスを使い、写真やビデオを簡単に加工・整理するだけならiPadやChromebookでも問題ない。PCユーザーはPC向けのアプリケーションが動作しないと不安になってしまうが、PCを使わずになんでもスマートフォンでこなしてしまうモバイル世代は、PCであることを求めず、モバイルデバイスの長所を求める。

ポストPC時代のコンシューマ向けWindows 10

3日に、米Thurrottが「Windows 10 S is Dead, Long Live S Mode」と報じた。Microsoftが単体エディションとしての「Windows 10 S」をなくし、「S Mode」として全てのWindows 10で提供する。S Modeで動作するWindows 10デバイスでは、ユーザーが無料で「Home」および「Education」にアップグレード可能。「Pro」へのアップグレードは有償になるそうだ。

Windows 10 SではMicrosoft Storeアプリしか使用できない。ブラウザはMicrosoft Edgeのみだ。その代わりにセキュリティや安定性が向上し、OSやアプリの管理が容易になる。スマートフォンやタブレットの利用体験に近いWindows 10デバイスを実現するエディションである。

無料でS ModeからWindows 10 Homeにアップグレードできるなら、ほとんどのユーザーが機能が豊富で自由にソフトウエアをインストールできるHomeにアップグレードしそうだ。Thurrottが「Windows 10 S is Dead」としているように、S Modeへの切り換えはWindows 10 Sを終わらせることになりそうに思える。

ところが、Thurrottの記事を書いたBrad Sams氏によると、Windows 10 Sは同氏が予想していた以上に使われているという。Windows 10 Sは最初、昨年春に「Surface Laptop」のOSとして提供され、期間限定 (今年3月末まで)で通常のWindows 10に無料で移行できるオプションが用意された。無料アップグレードなら、ほとんどのユーザーがより自由な通常版にアップグレードしそうだが、移行率は40%にとどまっているという。移行する人の大部分は購入後24時間に実行しており、Windows 10 Sのまま1週間以上使い続けたユーザーは83%がそのまま使用し続けている。

PC世代には信じがたいことだが、モバイル世代が主流になろうとする今、わざわざ通常のWindows 10にアップグレードしなくてもWindows 10 Sで十分と使い続けるユーザーが少なくない。Microsoftとしては、ユーザーも、開発者も、Microsoft Storeの環境に移行させたい。Homeより10 Sである。それなら全てのWindows 10にS Modeを組み込み、より多くのデバイスがS Modeで出荷させられるようにした方が、Windows 10 Sというエディションで提供するよりも、"S"環境のユーザーを増やせる。

S Modeが本当に登場するのかどうか現時点では分からない。が、Windows PCのエントリー価格帯にiPadやChromebookが浸透する昨今の動向を考えると、ポストPC対策として理に適った変更になる。