今年1月、明治大学・和泉キャンパスでは、「1〜2年生限定」のOB・OG交流会が開催された (撮影:今井康一)

大学生の就職活動における「3月広報解禁、6月選考開始」スケジュールは3年目となった。だが実際は、早期化と短縮化が進んでいる。就活生は短期間のうちに自己分析、業界・企業研究、エントリーシート作成などに取り組まなければならない。

ここ数年、3年の夏休み以降にインターンシップを実施する企業が急増しているが、「1day」型が多く、内容は会社説明会とあまり変わらない。

企業研究不足で早期離職者はむしろ高水準

学生は自分自身のキャリア形成や企業内容などについて、認識が不十分なまま就活を進めるので、入社してからミスマッチに悩む。そして早期に退職するケースが多い。厚生労働省の調査では、2016年3月卒の大卒者の1年後離職率はなお高く、11.3%にも達する。


こうした状況を打破するには、3年生になってから就職を意識するのでは遅い。1〜2年時から自分自身のキャリアを考えることが必要だ。そんな中、一部の大学や企業、就職関連企業は、1〜2年生向けのキャリア教育に取り組んでいる。

1月16日、明治大学の和泉キャンパス(東京都杉並区)では、1〜2年生限定のOB・OG交流会が開催されていた。就活中の3〜4年生を対象にしたOB・OG交流会はどの大学でも行われているが、1〜2年生限定というのは珍しい。

この日は64名の学生が集まったが、川崎市にある生田キャンパスや東京都中野区にある中野キャンパスなど、和泉以外のキャンパスからも参加者があった。

「今は就職しやすい状況だけど、君たちのときはどうなっているかわからない」。明治大学職員の藤江森郎氏のオープニングのあいさつを聞いて、学生たちの表情が引き締まる。その後、OBの瀧本和幸氏(コクヨで採用を担当)がワークを交えながら、就活全般の説明を進める。同じ大学とはいえ、初対面の学生が多いが、徐々に会場の雰囲気はほぐれてくる。

その後、3カ所に分かれて、ミニパネルディスカッションがスタート。凸版印刷やオリックス、NTTコミュニケーションズなどから、OBOG14名がパネラーとして参加した。各テーブルを約20名の学生が取り囲み、OB・OGの本音トークに耳を傾ける。

テーマは「学生時代にがんばったことを面接でどのように伝えたか」、「就活当初やりたいと思っていたこととは」、「就活での転機」など。パネルディスカッションではあるが、学生も多数の質問ができるので、会場全体が熱気を帯びてくる。

その後は軽食を取りながらの懇親会。OB・OGが「モノづくり(メーカー)」、「金融」、「コトづくり(サービス)」、「はたらく女性」などのテーブルに分かれて立ち、学生は自由に移動しながら話を聞く。

明大は1〜2年生にベトナムでインターンシップ

当日参加した学生からは、「こんな親切にOB・OGが話してくれるとは思わなかった。就活に前向きな気持ちになった」、「3時間があっという間だった。たくさん話を聞けて視野が広がった」という声が聞かれた。

明治大学では1〜2年生向けのキャリア教育を強化する方針を明確にしており、この2月には、1〜2年生限定でベトナムで行うインターンシップを開催する。昨年9月にもベトナムでインターンシップを行ったが、16名の参加者中、10名が3年生だった。今回は20名全員が1〜2年生の参加となる。

インターンシップでのミッションは、「ベトナムでマーケティング&売上拡大!グローバルビジネスを体感せよ」。現地に進出しているロート製薬の協力を得て、同社が販売するボデイウォッシュなどのマーケティングを行い、プロモーションムービーを作成する。

さらにはホーチミン工科大学と提携し、1チーム4人の明大生に、ベトナムの大学生2人が加わる。8日間のプログラムで、インターンシップのほかに、ロート製薬社員以外のべトナム在住明大OB・OGとの交流会も、設けられている。

明治大学の和泉キャンパスには1〜2年生しか在籍していないが、キャリアセンターを設置して、さまざまなプログラムを提供している。2017年の和泉キャリアセンター主催イベントへの参加人数は、2015年に比べて81%増で、年間相談件数は45%も増加した。昨夏のベトナムインターンシップに参加し意識を高めた1年生が、今回の1〜2年生限定OB・OG交流会にも参加するといったように、積極的に行動しているケースも見られる。

大学単体ではなく、大学と企業が提携し、1〜2年生のキャリア教育に力を入れている事例もある。I・C・S(Internship&Creationship Study)は、毎年夏休み、東京地区の5大学の1〜2年生が5つの企業でインターンシップに参加するプログラムだ。

現在、青山学院大学、亜細亜大学、駒澤大学、東洋大学、明治大学の5大学と、いちよし証券、大正製薬、ツカモトコーポレーション、郄島屋、日東工器の5社が参加している。2014年にスタートしており、今年で5年目を迎える。

2015年には関西でも始まり、今年は大阪経済大学、関西大学、関西外語大学、京都産業大学、京都女子大学、龍谷大学の6大学と、いちよし証券、タニコー、ツカモトコーポレーション、日東工器、日伝が参加することになっている(2015年は3年生も参加)。

I・C・Sの特徴は全く異なる5つの業界のインターンシップを体験できることだ。期間中は日替わりで各企業を訪問してインターンシップを行う。参加人数が1大学8名までと限定されているので、企業担当者の目が行き渡るし、全ての学生が主体的に参加できる。


「1〜2年生でI・C・Sに参加して企業を見る目を養い、3年時に個別企業で長期のインターンシップを行うのが、理想ではないでしょうか」と語る、日東工器の彦工愛子さん (写真:日東工器)

大阪経済大学で在学中にI・C・Sのインターンシップに参加し、現在は日東工器の総務部人事課に勤務する彦工愛子さんは、「なんとなく金融業界に行くつもりだったが、I・C・Sがメーカーに興味を持つきっかけになった」と振り返る。I・C・Sに参加したことで、独自技術を持ったトップシェア企業に入社したい、と思うようになったという。

就活本番では、軸が決まっていたのであわてる必要がなく、エントリーシート(ES)提出は10社程度で済んだとのこと。愛子さんは複数の内定を獲得したが、配管の接続器具、カプラの世界トップメーカーである、日東工器を入社先に決めた。

こうした成功を受けて、2018年からは、女子大学の1〜2年生を対象にしたインターンシップも始める。参加するのは大妻女子大学、共立女子大学、実践女子大学、昭和女子大学、和洋女子大学の5大学と、西武信金、ツカモトコーポレーション、日本航空、三越伊勢丹の4社だ。

「キャリア甲子園」に注がれる視線

就職関連企業も1〜2年生向けのキャリア教育に力を入れ始めている。リクルートキャリアは2017年11月から、学生向けキャリア支援サービス「リクナビC」の提供を開始した。

リクナビCは、1カ月以上の長期有給インターンシップと、ワークショップ型のイベントなどを行うサービス。就活前の学生が自分自身の持ち味ややりたいことを深く知るには、1カ月以上の就業期間が必要と判断したからだ。あえて有給にしたのは、学生と企業の双方に本気になってもらうためである。リクルートキャリアは参加学生数を公表していないが、参加企業は約200社。企業はすぐに採用に結びつけようとするのではなく、若者の意識調査や企業PRに役立てようとしているケースが多い。

一方、マイナビは、2013年から学年不問のキャリア形成プロジェクト「MY FUTURE CAMPUS」を運営している。さまざまな業界のビジネスモデルを学習するプログラムに加えて、官庁や企業と提携したワークショップなどを用意している。

1〜2年生から参加すれば、将来の職業選択に役立つことは間違いないが、意識の高い学生ばかりで、普通の学生の参加は少ない。そこで、キャリアを意識させるには大学生からでは遅いとして、マイナビが力を入れているのが、高校生向けキャリア教育「キャリア甲子園」だ。これは基礎的なビジネススキルが身につくビジネス講座と、企業からの課題に応えるビジネスコンテストをミックスさせたプログラムで構成されている。2017年度は全国から3041名、723チームが参加した(人数は前年度比15%増)。資生堂や自民党、TBSラジオ、日本航空など、7つの企業・団体が出題テーマを提供した。

経団連の採用選考スケジュールに変更はなくても、就活の中身はどんどん変化している。2018年問題に象徴される少子化の進行で、大学も企業も新たな対応が求められている。就職関連企業はこうした状況を新たなビジネスチャンスととらえているに違いない。今後は、1〜2年生向けや高校生向けのキャリア教育で、さまざまな動きが活発になるだろう。