男なら誰だって、あらゆる女性を口説いてみたい。

きっと心のどこかで、そう考えたことがある男性は、少なくないはずだ。

早稲田大学理工学部を卒業後、世界最大手の外資系IT企業に勤務する奏太も、その内の一人。

これまで自分のモテレベルは人並みだと思っていた奏太だが、20代で寝食忘れて仕事に没頭し、30代で再び恋愛市場に返り咲いた頃、あることに気づいたのだ。

―あれ…意外に俺ってモテるのか?

1度そのことに気づいた奏太は女性を落とすのが楽しくなり、自分の頭脳を駆使してあらゆる職業の女性達を口説こうとする……。

前回国際線CAに連絡先を渡した奏太だったが、彼女からの反応とその先やいかに!?




―CAの凛を口説くには、どうすればいいのだろうか…。

奏太は、羽田空港到着までの間、機内でぼーっと凛のことを考えていた。

「連絡先を渡すことは、会社の規則で禁止されている」これはCAにとって、断り文句としては常套手段なのだろう。

自身は連絡をするつもりがあるのに、会社の規則上どうすることもできないというニュアンスを匂わせながら、角を立てずに断ることができるのだ。

奏太は、そんな思いを巡らせながら悶々としていた。

昼に羽田へ到着し、そのまま奏太の勤める六本木ヒルズのオフィスで出張報告を行い、目黒の自宅マンションへ着いた時には23時を回ろうとしていた。

スマホを見るが、やはり凛からのメッセージはない。

―沢山の連絡先をもらうだろうし、もう返ってこないかな。

そう諦めかけたその夜、一通のメッセージが届いた。

―遅くなりました。機内でお会いした日向凛です。行ってみたいお店って、どんなところかしら?興味があります。


奏太の予約していた店に、凛の反応とは……?




予約していた店は『テール・ド・トリュフ東京』。以前、会社の先輩から教えてもらった外苑前にあるトリュフ専門レストランだ。

デートの約束を取り付けるにあたって、彼女は通勤に便利な日本橋の箱崎に住んでいると聞いたため、外苑前というエリアが刺さるか不安だった。しかし「普段行かないところに行ってみたい」と言われ、当初の予定通りこの店に決めたのだ。

それに本格的なコース料理を出すこのレストランを提案すれば、声をかけたのは遊びではなく本気だと印象付けられるのではないか、というもくろみもあった。

―今回もきっとうまくいく。

奏太はそう信じて、疑わなかった。



今日の凛は、機内で会った時とは異なり髪を下ろしており、化粧もやや薄めだ。いい意味で初対面と印象が異なって、それがまた奏太には魅力的に映った。

“モンクレールのダウン、ロンシャンのトート、レペットの靴という3種の神器が、CAの第二の制服”だと、以前遊び慣れている先輩から聞いたことがあったが、凛が本当にその通りの恰好で来たことには少し驚いた。

CAである自分を隠すことなく、誇りに思っている証拠でもあるのだろう。そして店の近くまできたとき、凛はこう言った。

「あっ!もしかしてテール・ド・トリュフですか?」

奏太は驚き、一瞬戸惑った。

すでに何度も来たことのあるかのような口ぶりである。少し焦りを感じつつも、それを悟られないよう、心を落ち着かせながらこう訊いた。

「あれ、ひょっとして来たことありましたか?」

凛はほんの少しの微笑みを浮かべながら、答えた。

「フランスのパリ店であれば、ステイのオフ日にキャプテンたちと一緒に行ったことあります。けど、日本で行くのははじめてですね。ニースに本店があるらしいので、今後行ってみたいなと思ってたところです。」

ニースに本店があるとは、初めて知った。

この話題について、これ以上自分から話を広げられそうにない。一瞬話を変えようか迷ったが、奏太はそれが得策ではないと判断した。

凛はCAという職業に誇りを持っているはずだ。ここは変に格好をつけず、素直に彼女の経験の広さを褒めながら、話題を広げる方が良いだろう。

「本店はニースなんですね。恥ずかしながら、知らなかったです。さすがCAさんですね。うらやましい。僕もぜひ行ってみたい。」

「いえいえ。私も詳しいキャプテンに連れられて数人のクルーと一緒に行ったきりなので、全然詳しくないんです。」

口角に僅かに現れた微笑みから、凛のまんざらでもないという心境が読み取れた。


初対面でも効果的な女性の褒め方とは?




店内に入りコートを預け、2人は席に着いた。

奏太は女性とデートをする際、必ず会ってすぐに何かを褒めるよう心掛けている。しかし凛のように、褒められ慣れている女性を闇雲に褒めても結局逆効果だということも知っていた。

この場合、奏太は女性の“変化”に注目し、話題を振るようにしている。

しかし、今回凛とはほぼ初対面。変化などはわかるはずもない。何を褒めるべきなのか、今日会ってからずっと凛のことをじっくり観察していた。

ふと、凛の肌の白さをさらに際立たせるような、淡いピンクのニットの袖部分を見ると、折り目の線がはっきりと残っていることに気づく。

―ひょっとしたらこれは最近買ったばかりの新品かもしれない。




奏太は乾杯をしたあと、凛に伝えた。

「そのニット、かわいいですね。」

「えー!ありがとうございます。」

凛の声のトーンが少し上がり、表情からも喜んでいることが感じ取れる。奏太はもう一歩、踏み込んでみることにした。

「僕、CAの方と食事するって初めてなんですけど…。休日もこうしてきちんとされているんですね。お仕事も大変でしょうに」

「CAと食事するのが初めて」と言ったとき、凛が珍しそうにこちらを見た。

昔ほどではないが、他の職業と比べるとCAの市場価値はまだまだ高い。高スペックな男性はゴマンと知っているはずだ。

そんな彼女を相手に、外見がいかにも「誠実そう」と言われる奏太は、下手に女性に慣れている感じを出すのではなく、しかし堂々と対峙していこうと決めたのである。

すると警戒心が解けたのか、凛がこう言い出した。

「はい…。CAって見た目ほど華やかな仕事ではなくて、体力勝負なんです」

そこから凛は、体力勝負であるCAの仕事を今後続けられるかの不安を吐露しだした。はっきり口には出さないが、彼女はいま“結婚”の二文字を強く意識しているに違いない。

奏太はますます、自分が凛にとって「将来の堅実な選択肢」の一人であることを強く意識させようと心に決めた。

会話を楽しみながらも、凛の表情や仕草を観察しながら、彼女がどういった話題を好むのか、どのようなことをしゃべりたいのかを推察することも怠らなかった。このデートにおいては終始“聞き役”に徹したのである。



ディナーコース〆の黒トリュフの卵かけごはんが出てくる頃、凛はシャンパンとワインで顔を赤らめ、表情も緩んでいた。

会計を済ませ、2人は外へ出た。

奏太は凛の顔をまっすぐ見つめながら、この後のプランを凛に提示する。

「1.近くのバーで飲みなおす 2.(明日も早いだろうから)凛の家の近くで飲みなおす どっちがいい?」

奏太はどちらもYesの2択を与え、どちらかを選んで貰うことを期待した。

「えー。どうしようかなー。うーん。…明日フライトなのよね。お酒飲んだ後、12時間空けないと仕事ができないっていう規定があるの。だからあと1時間くらいしかないわ」

時計の針は、22時半を指している。

これは想定外の返答だった。CAをしている女性を本気で口説くなら、翌日のフライトの時間まで計算しないといけないのである。

―しかし、どうにかして繋ぎとめたい。

奏太は考え、こう言った。

「じゃあ近くのバーで1杯だけ。」

これでダメだったら諦めよう。“誠実枠”の自分がガツガツ誘ってもきっと逆効果だ。奏太は、胸がどきどき張りつめる気持ちを感じながら凛の返答を待った。

「…うーん。じゃあ1杯だけね。」

凛は、押しに負け、 奏太の提案を受け入れたのだった。

奏太は心の中でガッツポーズをし、喜びに膨らむ気持ちを必死に抑えながら、近くのバーへと凛をエスコートした。


CAを口説く心得3カ条


‖亶海垢襪福∩把召頬めろ
知識豊富なCAの話題の広さを凌駕しようというのは、間違いである。素直に相手の経験の広さを褒めると「実は自分もそんなに知っているわけではない」と胸襟を開く。

◆崗来の堅実な選択肢」として認識されろ
日々ハードな仕事をこなし、将来への不安があるため結婚願望は強め。かつハイスペックで遊び人は散々目にしてきたため、“堅実枠”として名乗りをあげろ。

M眛のフライトの予定を確認すること
今回の凛は、フライトの12時間前からの飲酒を禁止されていた。くれぐれも翌日の予定を確認すること。

▶NEXT:2月13日 火曜更新予定
凛とのその後は…?また奏太の前に、新たな美人秘書現る!?




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