ショートフォーム(短編)動画コンテンツの細々とした市場では、デジタル動画制作者が、TVネットワークという新しい「古くからの友人」を迎えているかもしれない。

ディスカバリー・コミュニケーションズ(Discovery Communications)は8月以降、ディスカバリーチャンネル(Discovery Channel)やTLC、インベスティゲーション・ディスカバリー(Investigation Discovery)などのTVネットワーク用の「TV Everywhere」サービス向けアプリ9本で、独自のデジタルシリーズ9作品を放送した。これらの番組には、ディスカバリー Go(Discovery Go)向けの「The Ballad of Parker and Todd」、TLC Go向けの「90 Day Fiancé: What Now?」と「The Spouse House」、インベスティゲーション・ディスカバリーGo(Investigation Discovery Go)向けの「Village of the Damned: Welcome to Dryden」と「Still A Mystery」が含まれている(TV Everywhereは、コンテンツの完全なライブラリにアクセスするのに有料TVの認証情報でのログインが必要な動画ストリーミングアプリを表す業界用語)。

ディスカバリーが「Goオリジナル(Go Originals)」と呼んでいるこれらのデジタル番組は、専門チームが制作している。チームを率いるのは、Twitterの元TV担当責任者で、現在はディスカバリー・デジタル(Discovery Digital)のデジタルコンテンツおよびソーシャル担当シニアバイスプレジデントであるフレッド・グレイバー氏だ。ディスカバリーは、2018年にもっと多くのオリジナルデジタルシリーズを制作する計画で、一部は外部の制作パートナーからの委託だ、とディスカバリーのシニアバイスプレジデント兼OTTおよびデジタルシンジケーション担当ゼネラルマネージャーであるマイケル・ビシャーラ氏は言う。「両方の選択肢を検討している。最良の番組を可能にすることが大事だ」。

アプリ誘導が目的



ディスカバリー以外にも多くのTVネットワークが、外部の制作パートナーが作ったオリジナルデジタルコンテンツの宣伝を行っている。いずれも、アプリの利用頻度を高めることが目的だ。ロサンゼルス拠点のあるデジタルスタジオの幹部は、この数カ月間に、ディスカバリーやNBCユニバーサル(NBCUniversal)、ターナー(Turner)と、TV Everywhere用アプリ向けのオリジナル番組制作について宣伝会議を行ってきたという。

「将来は古いTV用コンテンツを再利用するのではない、と誰もが知っている。新しいコンテンツを得る必要がある。そうした者たちは、1時間ものの番組を必要とはしていないので、ミッドフォーム(中編)やショートフォームのコンテンツの買い手になりつつある。人々をアプリに誘導するショートフォームシリーズならうまくいく」と、スタジオの幹部は語る。

ディスカバリーのショートフォーム番組は通常、5〜10話編成で、各エピソードが10分以下となっている。こうした番組の多くは、既存のTV番組に関連したものだ。たとえば、「90 Day Fiancé: What Now?」は、オンラインで知り合ったカップル(米国人と外国人の国際カップル)が、フィアンセビザの有効期間内の90日で 結婚までたどり着くかがテーマの、TLCのかつてのリアリティ番組「90 Day Fiancé」に登場したカップルを再訪問している。とはいえ、ディスカバリーは、リニアTVの番組と無関係なデジタル番組を2018年はもっと制作することを検討している、とビシャーラ氏は言う。

TVレベルの作品も



Everywhere用アプリを超えて、ショートフォームドラマやコメディ番組に力を注ぐABCデジタル(ABC Digital)や、WebシリーズをTV番組向けの新しい人材やアイデアを育むシステムと見なし続けているコメディ・セントラル・デジタル(Comedy Central Digital)など、ほかにもTVバイヤーがいると、デジタルスタジオで働く情報筋は述べている。

サブスクリプションストリーミングチャンネルの「ライフタイムムービークラブ(Lifetime Movie Club)」と「ヒストリーボールト(History Vault)」を運営するA+Eネットワークス(A+E Networks)は、そうしたサービス向けのオリジナルコンテンツを委託する可能性について話している、と同社のグローバルデジタル製品&プラットフォーム担当エグゼクティブバイスプレジデントであるエバン・シルバーマン氏は語る。

もちろん、サブスクリプションストリーミングチャンネルについては、TVネットワークがすでに、そうしたプラットフォーム向けにTV並みの規模のオリジナルシリーズを制作しようとしている。たとえば、CBSはすでに、月額5.99ドル(約670円)のサブスクリプションストリーミングチャンネルであるCBSオールアクセス(CBS All-Access)で、「スタートレック」シリーズの新番組と「グッド・ワイフ」のスピンオフ番組を提供。もっと最近では、ジョーダン・ピール監督起用での「トワイライト・ゾーン」の再制作を発表している。

これらはTVレベルの制作だ、とCBSインタラクティブ・エンタテインメント(CBS Interactive Entertainment)のシニアバイスプレジデント兼デジタルプラットフォーム担当ゼネラルマネージャーであるロブ・ゲリック氏は、以前のインタビューで語っている。そのために、ほとんどのデジタルスタジオやパブリッシャーがCBSオールアクセスに進出するのが難しくなるかもしれない。だが、ほかのニッチなサブスクリプションストリーミングチャンネルは、オリジナルコンテンツの委託を厭わない。たとえば、AMCのサンダンス・ナウ(Sundance Now)は、ターナー傘下のデジタルメディア企業スーパー・デラックス(Super Deluxe)が制作したオリジナルシリーズ「This Close」を、来年2月に初公開する。

ショートフォームの価値



その一方、一部のTVネットワークは、デジタルコンテンツを利用してリニアTVの番組表を埋めることも検討している。ヒューズ(Fuse)とコンプレックス・ネットワーク(Complex Network)は2017年、「Hot Ones」や「Sneaker Shopping」のような番組など、コンプレックス・ネットワークのショートフォーム動画とシリーズで、週1の90分枠を埋める提携関係を結んだ。

ターナーが所有するケーブルネットワークのトゥルーTV(TruTV)には、「Rachel Dratch’s Late Night Snack」という毎週放送の30分間の番組がある。各エピソードは、アボブ・アベレージ(Above Average)やスーパー・デラックス(Super Deluxe)のようなデジタル動画制作企業が制作した、コメディタッチのショートドラマやミニドキュメンタリー、アニメなど、複数の短いコーナーで構成されている。こうしたショートフォーム動画を委託しているトゥルーTVには、「Rachel Dratch’s Late Night Snack」のエピソード全体の一部として放送するか、それぞれをほかの放送予定番組の合間に差し込むか、選択肢がある。

トゥルーTVは、「Rachel Dratch’s Late Night Snack」に参画したり、独自のTV番組に発展させたりすることも検討している。たとえば、近日放送予定の「Laff Mobb’s Laff Tracks」は、「Rachel Dratch’s Late Night Snack」の第1シーズン中に放送されたショートドラマに基づく番組だ。

「『Rachel Dratch’s Late Night Snack』は、我々が一緒にもっと多くのことをしたいと考えているクリエイターやプロデューサーにとって、格好の実験場だ。ショートフォームコンテンツの価値は、人材開発の主発点であることと、もっと広範な番組戦略とコンテンツミックスの一部として利用すれば役立つことにある」と、トゥルーTVのエグゼクティブバイスプレジデント兼オリジナル番組担当責任者であるマリッサ・ロンカ氏は言う。

移ろいやすい市場



一方、デジタル動画制作者は、特にショートフォーム動画シリーズの制作者に厳しい環境で、ほかの宣伝場所があるので満足している。

「市場は急速に変化するが、そこに加わり、現状に追いつかなければならない」と、ロサンゼルス拠点のデジタルスタジオの幹部は語った。

Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)