”本牧ピッツァ”発起人の「IG(アイジー)」店主、八木さんがほかの飲食店に声をかけて広まった/(C)KADOKAWA 撮影=宮川朋久

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本牧といえば、四角いピザが有名である。それを「本牧ピッツァ」とし、食文化として残そうという計画が拡大中だ。四角いピザの発祥「イタリアンガーデン」を受け継いだ「IG(アイジー)」の八木弘之さんが発起人となり、メニューに加える店舗も増えている。名付けて「本牧って、どのお店に入ってもメニューに四角いピザがあるんだよね! 計画」だ。

【写真を見る】「スペシャルピザ」(1,300円)は、その日の気まぐれで具が変わる/(C)KADOKAWA 撮影=宮川朋久

定義は四角いピザであることのみ。専用の生地も開発しているが、それぞれオリジナルで作ってもOKというもの。本場・本牧で食べられる店を紹介しよう。

■ フグも出す和食割烹「みなと」の和風ピッツァ

三溪園通り商店街にある「みなと」は、本牧でも古くからある和食割烹だ。

入り口は、本牧通りと商店街の両方にある。

食べられるのは、店の特徴である和風に仕上げたピザ。取材時は、ピザソースにベーコンやブロッコリーという洋風な素材に、ネギや刻み海苔のトッピング。和のテイストにするのがみなと流だという。和酒にも合いそうだ。

この店の名物は、免許を持つこの道40年の大将がさばくフグ料理。種類問わず、フグは1kg以上の丸々したものを使うのがモットー。フグ料理は、「ふぐ一匹コース」で15,000円(要予約)。値が張るように見えるが、1kg以上のフグなので数名で分けることができる。3人以上で食べれば、一人5,000円程度なので非常にお値打ちである。フグの旬は12〜3月なので、食べるなら今のうちだ。

フグ料理が名物なのに、ピザがあるの?と聞きたくなるが、実はこの店、海鮮を中心にメニューの種類がとっても豊富。お客さんのリクエストに応えているうちに、こんなに増えてしまった、という。

高級なイメージのフグ料理だが、この店の敷居は高くない。サクッと飲むにも利用しやすい店だ。

■ 家庭料理が味わえる地元に根付いた店「ゆめや」

和食の家庭料理が味わえる、創業27年の「ゆめや」。実は、本牧の名物店「アロハカフェ」の経営に関わっていた店主が営む。本牧通りの中程に位置し、地元常連さんが集う店だ。

こちらで食べられるのが、「自家製ピザ」(500円)。オーソドックスなピザは、少し小さめでお手軽。お酒を飲みながらメニューを頼む人が多いので、このサイズなのだとか。ソースもマイルドで食べやすいが、生地はもっちりで食べ応えもある。

刺身1人前700円〜など魚介メニューが主で、客が釣ってきたという魚をさばくこともあるという、地元客に人気のこの店。実はおひとり様の客にも優しい。居酒屋として利用もできるが、定食や丼メニューも用意しているので、女性やサラリーマンなど一人でも来店する客も多いと、マスターは語る。

店内は創業27年とは思えないほどモダン。コンクリート打ちっぱなしの壁や、イタリアの高級家具メーカー「カッシーナ」の椅子など、随所にセンスを感じる。そんなところも、一人客が入りやすいポイントなのかもしれない。

■ 本牧移住組の夫婦が営む「クラフトバル KOKOPELLI(ココペリ)」

麦田町に2016年11月にオープンした「クラフトバル KOKOPELLI」。クラフトビールやワインなど、国産の酒にこだわる家庭的なバルだ。イタリアンやフレンチベースの創作料理も味わえる。

こちらのピザは、パイ生地が特徴。生地は軽く、サクサクとした歯応えだ。トマトやバジルのさっぱり感と、アンチョビとオリーブの塩気がいいアクセントで、おつまみとしてもぴったり。

店主夫婦は、本牧に遊びに来ていた十数年前から、四角いピザに馴染みがあった。本牧に店を出すことになり、このピザをメニューにしたいと試作を重ねたが、なかなか納得のいくものにならずに苦労したそう。「もうやめよう」と思ったこともあったが、その苦労が実り、ビールと最高に合う一品に。ビールだけではなく、ワインにも合いそうだ。

オリジナリティあふれるメニューはほかにもある。「ビスクヌードル」(1,200円)は、甲殻類からとったダシのボタージュスープに、中華麺を合わせたオリジナルの創作麺。エビをローストした時に出る油を使用しているので、濃厚なエビの風味が広がる。

店主の出身である石川県・能登産の塩や食材、旬の横浜野菜など、素材も厳選。1か月単位で季節メニューが変わるので、来るたびに旬が味わえるようになっているという。

現在では、本牧はもちろん、横浜市内や都内にまで広がりを見せている「本牧ピッツァ」。寿司店や中華料理店など、一見ピザを出さなそうな店でも食べられるというのが面白い。この地に訪れたら、四角いピザの文化を楽しんでみよう!

【取材・文/濱口真由美 撮影/宮川朋久、後藤利江】(横浜ウォーカー)