今後しばらく、インフルエンサーマーケティングがなくなることはないと、マーケターたちは気付いたようだ。彼らが広告費を増やしているのを見ればわかるように、多くのブランドが、独自のインフルエンサーマーケティングチームを社内に立ち上げはじめている。インフルエンサーとの関係や、キャンペーンのパフォーマンスをいま以上に管理するためだ。

インフルエンサー分析プラットフォームであるハイパー(Hypr)のCEO、ギル・エヤル氏は「インフルエンサーマーケティングチームのインハウス化はおそらく、いま業界でもっとも注目すべきトレンドだ」と述べている。「昨年あたりからこういった動きが出始め、今年になって本格化している。特にファッションや美容業界に多く、インフルエンサーと長期的な関係を育てたい、と考えるブランドが増えていることが背景にある」。

アドテクと同じように、インフルエンサーマーケティングのインハウスにはふたつのモデルがある。ひとつは、ブランドがインフルエンサーのアウトリーチから企画や実施、測定に至るキャンペーン全般を独自に管理するチームを招集するというもの。そしてもうひとつが、インフルエンサーマーケティングの戦略を練るため社内にインフルエンサー専門家を据え、インフルエンサーとの関係管理のためのツールを使用するというものだ。

ただし、インフルエンサーマーケティング事業部の幹部によると、後者の場合、ブランドはキャンペーン実施については引き続きエージェンシーに頼ることになるという。そして多くのブランドが、キャンペーン全般とはいわないまでも、少なくともインフルエンサーとの関係性を管理したいと考えているといい、「インフルエンサー関係管理プラットフォーム(Influencer relationship-management platforms)」を自称するインフルエンサーマーケティングプラットフォームも増えていると、エヤル氏は語る。

実践的で繊細なアプローチ



いずれにしても、ブランドはインフルエンサーマーケティングの担当者採用に積極的な姿勢を見せている。たとえば、調理キット配達会社のハローフレッシュ(HelloFresh)は、自身の「急成長するインフルエンサーマーケティング事業」をサポートするインフルエンサーマーケティングのシニアアソシエートを探している。また、化粧品メーカーのロクシタン(L' Occitane)は、「インフルエンサーマーケティングの分野に詳しく」、すでにコンテンツクリエイターの人脈があり、キャンペーンを実施してその結果を分析する能力のあるインフルエンサーマーケティングマネージャーを求めている。ナイキ(Nike)は、インフルエンサー選定に権限と責任を持つ、ブランドマネージャーを募集している。

化粧品サンプル提供会社のバーチボックス(Birchbox)では、同社のソーシャルコンテンツやPRチームによる支援のもと、ブランドマーケティングのシニアマネージャーがインフルエンサー事業を管理。同社の広報担当ディレクター、ジェンナ・ヒルゼンラス氏によると、バーチボックスのビジネスモデルが複雑なことが原因であるという。

実際、同社にSNSで共感するのは、美容意識がそれほど高くない女性たちであり、「本質的にバーチボックスを求めていないグループ」をターゲットにするのは難しいのだ。「インフルエンサーマーケティングを社内で管理することで、我々は素早く、実践的で繊細なアプローチを取ることができる」と、彼女はいう。「つまり、我々もときにはエージェンシーやほかのプラットフォームとプロジェクト単位で一緒に仕事をすることがあるということだ」。

規模の経済が当てはまる



エヤル氏は、クライアントの約半数がインフルエンサーマーケティングを社内化していると話す。小さな企業では通常スタッフ1名、大手ブランドでは6名から10名のチームが組まれるという。「あるブランドの広告予算を大きく占めるインフルエンサーマーケティング事業の責任者が25歳だったとしても、驚くことはない」と、述べた。

インフルエンサーマーケティングプラットフォームの#ペイド(#Paid)で共同設立者として活躍するアダム・リビエツ氏もまた、ブランド各社がインフルエンサーマーケティングをインハウス化する動きが活発化していることに気がついた。彼は、カナダではクライアントの80%がエージェンシーで、20%がブランドだと話す。アメリカだとその割合が半々になるという。「アメリカのブランドのほうが、予算が多い」と、彼は述べた。「彼らの方が、インフルエンサーマーケティングを自分たちで試したいという気持ちが強く、よりインフルエンサーをコントロールしたいと考えている」。

リビエツ氏によると、ナイキ(Nike)やマーズ(Mars)といったブランドはこのところ、自社内でインフルエンサーマーケティングを手掛けているという。ブランドにとって大きなメリットひとつは、自分たちでトップパフォーマーのリストをまとめ、そして彼ら個人と長期的な関係を維持できるようになることだ。

彼は「インフルエンサーは単発の取引よりも、従来のスポンサーシップのような、長期的なパートナーシップの方に興味を持つ。そして彼らのフォロワーにとっても、そのほうが真実味が増す」と語った。「一方のブランドも、毎週あるいは毎月のようにインフルエンサーを探し回る必要がなくなる。彼らもまた長期契約することで、価格面で得をすることができる。つまり、規模の経済がここに当てはまるのだ」。

エージェンシーのメリット



エヤル氏とリビエツ氏はいずれも、広告エージェンシーが介入すると広告キャンペーンの費用が跳ね上がると考えている。リビエツ氏は「ブランドに対して提案を行う際、あいだにエージェンシーが入ることで、その意味合いがクライアントにきちんと伝わらないことがたまにある」と述べている。「もちろん、我々にとっては、多くのクライアントを紹介してもらえることは、エージェンシーと仕事をする大きな利点だが」。

デジタルマーケティングショップ、リシフトメディア(Reshift Media)の共同設立者兼CEOであるスティーブ・ボース氏は、ブランドはさまざまなセルフサービスのインフルエンサーマーケティングツールを使用できるものの、エージェンシーほどは測定の詳しい知識がないため、インフルエンサーマーケティングの投資収益率を計算するのは難しいと考える。

「適切なエージェンシーと仕事をすれば、別のレベルの洗練がもたらされる」と、ボース氏は述べている。「インフルエンサーマーケティングは、メッセージと売り上げに明確な線引きや相関性が見いだせるFacebook広告とは異なるものだ。しかし、マーケターは常に、これをすると何が得られるのか? という投資対効果を知りたがる」。

Yuyu Chen(原文 / 訳:Conyac)