「ライフ・シフト」の著者で100歳人生時代を説くリンダ・グラットン氏(写真はイメージ)

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 人生100年時代が迫る中、長寿社会に合わせた資産管理の重要性が増している。現役時とほぼ変わらぬ長さの時間を退職後の老後として過ごす場合、資産の管理に失敗すれば生活費が枯渇し、生活レベルが低下するリスクを抱える。適切な資産形成、資産管理を支援しようと一部の金融機関ではサービス開発の動きが始まっている。

 厚生労働省によると2016年時点の平均寿命は女性が87・14歳、男性80・98歳となり、いずれも過去最高となった。特に女性の場合は特定年齢までの生存者の割合でみると2人に1人が90歳まで生きる推計だ。今後、医療技術の進展で寿命が延びれば、現在の「人生90年時代」から「100年時代」への転換は現実味を帯びている。

 長寿社会を見据え、老後に向けた生活資金の確保は大きな課題となる。現役時の内から適切な資産形成を進め、退職後には上手に取り崩す。こうした資産寿命を延ばすための、資産メンテナンスの重要性がますます高まっている。

 長寿社会の到来をみすえ、金融機関では新たな商品・サービスの開発が進む。証券業界では野村証券が60歳前後の退職世代に焦点を当てた投資信託「マイ・ロングライフ」を発売した。年率約3%の利回りを目指して運用しつつ、成果の一部を分配することで資産保全を図る。

 通常の投信は運用成果に応じて分配金が増減することが多い。同社の場合、目標分配金を隔月50円程度(1万口当たり)と事前に提示しているため、顧客は資金計画を立てやすくなる。

 業界全体では20年間にわたる長期積み立て型の少額投資非課税制度「つみたてNISA」が始まった。貯蓄から資産形成を促す制度として、主に投資経験が少ない若年層に焦点を当てた取り組みだが、「長寿化を考えると、退職前後の世代が加入してもおかしくはない」(証券会社幹部)という意見もある。

 保険業界ではトンチン年金と呼ばれる新たな個人年金保険に力を入れる。トンチンとは年金受け取り前に死亡した場合の返戻金を抑え、その分を年金の原資に回す仕組み。

 原則、契約者は生存している限り年金を受け取れる。太陽生命保険など中堅生保が扱いを始めるなど販売の動きが徐々に広がっている。

(文=杉浦武士)