デンソーは昨年の東京モーターショーでモックカーを展示。通常見ることができない自社製品75点を実物大の製品スケールで配置した。同社は単独で車を造れるほどの広範な技術を有する(撮影:鈴木紳平)

デンソーは自動車部品メーカー国内首位、世界でもトップ3に入る。単独で車を造れるほどの広範な技術を有するが、走行性能からサービス競争に移る次世代カーでは、これまでの積み上げがリセットされた非連続な世界での戦いになっていく。同業のメガサプライヤーだけではなく、グーグルやアップルなど異業種のIT巨人とはどのように向き合っていくのか。デンソーの有馬浩二社長を直撃した。

外の力も借りていく

――電動化や自動運転の波に、どう対応していきますか。

これまでは完成車メーカーとすり合わせをして作り込むことで成長してきた歴史がある。そうした中から生まれた製品は多く、自信を持っている。半導体やモーター、センサーなどハード系がその一例だ。

一方、最近はソフトウエア系が注目され、人工知能や自動運転などでほかに強いプレーヤーが出ている。ソフトでできないものがあれば、自前だけでなく外の力も借りていく。

その結果、いいハードができるかもしれない。振り子はハードとソフトの間で振れており、ソフトに行けば、ハードにもまた多少戻る。100年に1度の変革では、リスクと思われることがチャンスに変わることもある。

──具体的な戦略はありますか。

電動化や自動運転の時代は車全体をどう電子制御するかが重要だ。当社はその技術やノウハウを持っており、リードしている自負がある。完成車メーカーと一緒にやれるプレーヤーはそう多くない。そこで電子プラットフォームをきちっと作り上げていく。

完成車メーカーがいい車をたくさん造ろうとしたとき、車を造りやすくしておくのがプラットフォームだ。標準化したものがないと自動車業界は大変になる。一品一様の車では工数や時間がかかり、価格も高くなり、結果的に購入者の負担になる。そうならないようにすることが要求されている。

真っ当なEVを造っていく

──2017年9月には、トヨタ自動車とマツダとEV(電気自動車)モジュールの合弁会社を設立しました。今の話とも関係しますか?

関係する。「こういうふうにすればいいEVができるよね」というのが標準モジュールだ。そこにデンソーが参画しているのは、単に部品供給をするという側面だけではない。EVでは熱エネルギーマネジメントが必要不可欠であり、当社にはその知見がある。標準プラットフォームにしたいという要請もあり、新会社に入った。


有馬浩二(ありま こうじ)/1958年生まれ。京都大学工学部卒。1981年日本電装(現デンソー)入社。海外駐在後、2008年常務役員、2014年専務役員に就任。2015年6月から現職(撮影:今井康一)

──トヨタ色が強くなると、海外メーカーとの取引で不利にならないですか。

そう思う人はそう思えばいい。本当にいいものを造ることで、「それをちょっと教えてよ」とか「使いたい」とかなるように仕立て上げたい。EVの要素技術の基盤開発会社とはそういうことだ。

EVを造るのにそうとうな開発工数がかかったり、変なEVが乱立しても仕方がない。真っ当なEVをしっかりと効率よく造っていくことが重要だ。

──完成車メーカーに対して、部品メーカーの存在感が増しています。

電動化や自動運転などの領域が増えれば増えるほど、本当に上流段階で一緒に車メーカーと話をして開発する体制でないと、できるものの質やスピードを上げられない。昔のように「このスペックでこう造ってくれ」という時代より、関係が深まっているのは確かだ。

(『週刊東洋経済』1月27日号「トップに直撃」を転載)