米国側から見た国境フェンス。海の中まで続く

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米国とメキシコの国境に新たな「壁」をつくり、違法移民を追い出すと公言して選挙に当選したトランプ大統領。いま移民政策を巡って大揺れの米国で、何が起きているのか。国境の最前線で、分断された人々の素顔を取材した。(取材・文・撮影/ジャーナリスト 長野美穂、文中敬称略)

「10年ぶりに抱きしめたい」
母と姉弟を分断する無情の国境

 国境の街、米国カリフォルニア州のサンディエゴ。ここに、その名も「国境州立公園」という場所がある。

 足を踏み入れると、海と砂浜が広がる巨大な荒野だった。陸から海岸にかけて、国境フェンスが一面に張り巡らされている。鉄製の国境フェンスの先端は、なんと海の中まで伸びている。柵の向こうはメキシコ、ティファナの街だ。

 普段は厳重に閉ざされているこの鉄柵のドアの扉が、昨年11月18日の正午、米国境警備隊員らの手によって1時間だけ開けられた。錆びて茶色くなったドアのかんぬきがギギギと音を立てて引き抜かれる瞬間を撮影するのは、全米とメキシコから集まった報道陣だ。日頃、米国とメキシコに分かれて暮らしている12家族に、それぞれ3分間だけ直接会える時間が与えられるというイベントなのだ。

「僕たち、メキシコに住む母と、この10年間会っていないんです。母を抱きしめて元気な顔が見たい」

 そう語るのはサンディエゴ在住のヴィセンテ・サルダナ(23)と姉のデニース・パットン(24)だ。

 2人は5歳と6歳のとき、母親に連れられてメキシコから米国へ不法入国した。数年後、母親は米移民局に強制送還される前に、自らメキシコへ帰ることを決意。そして、カレキシコという国境の街に住むメキシコ系アメリカ人の友人夫妻に、当時12歳と11歳だった姉弟を託して、ひとりでメキシコへ帰国した。

「僕たちDACAキッズなんです」

 ヴィセンテはそうつぶやいた。

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