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●「ルヴァン」は良好なスタート

米モンデリーズ社との契約終了に伴い、2016年8月に「リッツ」「オレオ」の製造を終了、同年9月にヤマザキナビスコから商号変更をしたヤマザキビスケット。あれから1年半、ヒット商品を失ったヤマザキビスケットは今どうしているのか。担当者に聞いた。

○ヤマザキビスケット杯にならなかった理由

ヤマザキビスケットの最大の課題。それはリッツ、オレオの空白を埋めることだった。そのために同社が取り組んだのは、リッツに匹敵する商品の育成だった。

同社は商号変更にあわせ、新たなクラッカー「ルヴァン」を発売した。ルヴァンはフランス語で「発酵種」を意味する。ルヴァンではライ麦発酵種を用いて「コクのある旨み、芳醇な香り」を加えた。リッツとは製法、形状も変えた。派生品なども含めると、ルヴァンの名称は同社の商品に多数使われ、それだけ期待のかかった商品だとわかる。

だが、作っただけでは誰にも認知されない。リッツは広く知れ渡ったロングセラー商品であり、それに対抗していくには、テレビCMなどを活用して、時間をかけていくしかない。商品名を覚えてもらうには時間がかかるのだ。

それでも、短期間で結果を得られたという。2016年12月に実施した認知度調査について豊間根洋行マーケティング部広告宣伝課係長は次のように話す。「リッツの認知度は約9割。けれども、(発売後3カ月で)ルヴァンも60%弱くらいまでいった。これは相当高い数値。いいスタートを切れた」。

認知度向上に向けては、テレビCMの活用、スーパーマーケットでのマネキン試食販売など、かつてやってきたことはすべて取り組んだ。

幸運だったのは「YBCルヴァンカップ」として、Jリーグの大会名称に"ルヴァン"の名が入ったことだ。商品名が入るのは異例のことで、Jリーグの村井満チェアマンがヤマザキビスケットの事情を察し、実現したようだ。

しかも、大会名称の公表はルヴァン発売前の2016年6月。ニュースを通じて発売前から多くの人に存在を知ってもらうことができ、大きなアドバンテージとなったはずである。

●「リッツ」と「オレオ」には品質で対抗する

○まだスタートを切ったばかり

それでもなお、リッツとオレオの穴は埋めきれていない。親会社となる山崎製パンの直近の決算短信にも「ビスケットクラッカーの売上逸失が大きく、売上減となりました」と記述されている。リッツとオレオの存在の大きさがわかるコメントだ。

だが、担当者は現状について悲観はしていない。ヤマザキビスケットは昨年12月に本当のスタートを切ったばかりという認識だからだ。

実は昨年11月末までモンデリーズとの契約上、類似品の製造・販売が禁じられていた。呪縛がとけたのは昨年12月。そこに合わせてルヴァンの新作「ルヴァンプライム」とオレオに代わる新商品「ノアール」を出すことができたのだ。

ルヴァンプライムは丸型のクラッカー。丸型にしたことで軽い食感を出せたのが特徴だ。岡田均マーケティング部商品開発課主任によると「製品の質や食感などを考えるとこれが理想の形。ルヴァンプライムを本筋としつつも、ファンの付いた青ルヴァンも同時に売っていきたい」とルヴァンプライムへの期待を話す。

ノアールはオレオに代わる商品だ。ブラックココアのクッキーでバニラクリームをサンドしている。サックリとした食感が特徴的で、バニラクリームの口どけ感も調整した。

これでようやく主要商品が揃ったことになる。須藤敦寛マーケティング部商品開発課課長代理によると「軸となる主要商品があれば、スーパーマーケットや量販店で特売を実施してもらえることもある」とし、販売戦略上、大きな効果があると見込まれるとのことだ。

○ヤマザキビスケットの今

ヤマザキビスケットは今、リッツ、オレオと戦う準備が整ったばかりといえる。自ら育て上げてきたブランドと戦うというのは、何とも皮肉なものだが、これから先、どういったポイントが明暗を分けると見ているのか。

その点について豊間根氏も須藤氏も異口同音に強調するのが、おいしさという"品質"だ。リッツ、オレオともに、ブランド名は以前と同じだが、製造国は海外であり、日本ではない。作り手が変われば味も変わるし、食感も変わる。マーケティング調査からもそれを示すデータがあるとし、何十年もかけて培ってきた味へのこだわりをルヴァン、ノアールに注ぎ込むことで勝てると見ているという。

時間をかけた戦いとなりそうだが、当面はスーパーマーケットや量販店の棚替えとなる春が運命の分かれ目となる。この時期に採用されれば、定番商品として半年もしくは1年陳列されることになるという。採用店舗を増やせれば、戦いはその分有利になっていく。

リッツとルヴァン、オレオとノアール、今年の春は店舗の菓子コーナーに注目したい。小売店の棚から見える無言の戦い。時を経るごとに優劣は決まっていきそうだ。ヤマザキビスケットの見立てどおり品質が突破口となり、無言の戦いを制することができるだろうか。