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我々の生活に潤いをもたらしてくれる瞑想。しかしそれを指導する団体は、玉石混交だ。一体どう見分ければいいのか。識者は「カルト宗教を連想しがちですが、瞑想を売りにするのは営利企業が多い。いわば悪徳商法です」と語る。その実態とは――。

■裏で糸を引くのはカルトではない

「仕事で疲れた心を癒やしたい」「落ち着かない気持ちを整えたい」――。さまざまな目的を持って、人はヒーリングサロンや教室など、瞑想できるスポットへと足を運ぶ。しかしそのとき、「もっと精神について深く学んでみませんか?」と当初の意図とは関係ない勧誘を受け、困惑した経験談を誰しも耳にしたことがあるはずだ。

こうした精神修養を窓口にして、勧誘を働きかける団体の正体は何か。カルト宗教事情に詳しいライター・藤倉善郎さんは、「カルト宗教を連想しがちですが、瞑想を売りにするのは営利企業が多い。いわば悪徳商法です」と語る。

「こうした企業は修養の手法に独自の名前をつけて、さまざまな瞑想法や理論を組み合わせたメソッドを作ります。さらにインストラクター認定といった資格制度を作るケースも多い。もともと国家資格ではないので好き勝手に制度を構築でき、ベンチャービジネスとして取り組みやすいんです」

「一度ハマった参加者は『もっと深いところまで学べる』『今度は教える側に行きませんか?』と口説かれた結果、会社のスタッフとして働いたり、ロイヤリティを払って開業したり、のめり込むごとにお金を吸い取られていく。オウム事件以降、『うちは宗教じゃないから』が売り文句になり、利用者が安心してしまうんですよ」

また瞑想は、悪質な自己啓発セミナーで使われることも。企業研修で採用され、身体と精神に負荷のかかるカリキュラムを強制した結果、社員が死亡してしまう事件も起きている。やはり瞑想を体験できる組織と関わる場合、そこが信頼できるかどうか、慎重に見極める必要がありそうだ。

■情報を公開せずに、相手の情報を集めようとする

キャッチセールス評論家の多田文明さんに、疑ってかかるべき団体の特徴を聞いてみた。

「まず怪しい団体は、全体像を明かしません。普通であれば、期間や費用が全部でどれぐらいかかるかをはっきり提示してくれます。しかし隠したいことがあるとトータルでは説明せず、最初は無料だったり格安だったり、入り口のハードルを低くする。そして進んでいくごとに高額になって、最終的にはお金を巻き上げていくんです」

こうした団体は、利用者同士が不利な情報を共有しないよう、横のつながりを断とうとする。集会の帰り際を見張って、1人ずつ帰らせようとすることもあるという。

己の情報は公開したがらないが、相手の情報を集めようとするのも特徴だ。参加者に対して真っ先に働きかけるのが、仕事や家庭のトラブルといった悩みのリサーチ。こうした問題を解決に導けば、一気に信用を獲得して食い物にできるからだ。

■「アドバイスが役に立ったんだ」と信用してしまう

とはいえ、悩みを解決するのは簡単ではない。そこで行われるのが、以下のような手法である。瞑想の後にカウンセリングを行い、「もっと穏やかな気持ちで暮らしたらどうですか」「エネルギーを意識して生活を送りましょう」といった簡素なアドバイスを送る。そして数日後、再び対面して、アドバイスの効果をフィードバック。その際、利用者からいい話をどんどん引き出そうとする。

「人間は少しでも関わった人に対して、『あなたのアドバイスは役立ちませんでした』のような悪いことは言えず、肯定的な話しかできなくなるもの。その性質をわかって、聞いてくるわけです。結果、自分の口を通していい話をしていると、『アドバイスが役に立ったんだ』と信用してしまう」(多田さん)

プラスの効果を強調するのは団体も一緒。そこで「病気が治った」「金に困らなくなった」と極端な成功体験を謳っているのはいかにも怪しいが、精神と事象に関連性がない場合も注意が必要である。

「『このヒーリングを受けると、バスが時間通り来ます』のような説明を受けることがあります。その後、バスが時間通り来ても、それはただの偶然。『精神状態がよかったことで、行動に移した結果、いいことが起きた』という正論の間が抜けて、『あなたの心が澄んでいるから、万事うまくいった』という理屈を押しつけてくる団体は、かなり信用しがたい」(多田さん)

そして退会の意思表示をしているにもかかわらず、エンドレスに勧誘が続く場合、危険と断定してほぼ間違いない。間髪入れずに連絡してきて考えるスキを与えなかったり、「ここまでやってやめるのはもったいない」と次のステップを求めたり、ただただ執拗さをもって、利用者を呑み込もうとする。

「怪しいと思ったらネットで調べるのは有効な手段です。でもそこでいい評判しか見かけない場合も、疑ってかかるべきでしょうね。普通に活動していれば、『気にいらなかった』など、多少の悪評はあるもの。情報操作して広めている可能性は高い」(藤倉さん)

■疑問に感じた瞬間を、素通りしない

はたして、どんな対策をとればいいのか。

「瞑想のように日常と違う体験をすると、新鮮な気づきを得ることがあるかもしれません。ただしそこで『この団体はすごいんだ』と思いすぎないこと。悪い団体は『うちだから気づきを得られた』という特別感を押しつけてきます。そこで一度相手を崇めてしまうと、信じ込むバイアスを自分でかけてしまって、もう抜け出せません。騙される人の特徴は、ひとつの話を聞いたらそれで終わり。その団体だから効果があったとは限らなくて、よそでやっても同じ効果があったかもしれないと考え、他の団体と比べたほうがいいでしょう」(多田さん)

そして悪質な団体に関わっていると、ただのヒーリングが宗教の話になったり、途中で話がすりかわったりして、疑問に感じる瞬間が必ずあるという。そこで疑問から目を逸らし、素通りしないことも大切だ。一瞬でも謎に感じたら、すぐ周囲の人に体験談を話して、客観的な意見を求めたい。

「悩みを含めた個人情報を相手に与えないことも重要です。資産があるとわかったら、すぐに狙われますから。だからわざといい服を着ないで通い、裕福でないことをアピールするのはかなり有効な手段ですね」(多田さん)

藤倉さんも「個人相手の瞑想ビジネスは、良心的にやっているかぎり基本的に儲かりません。資格を取ることでビジネスになると持ちかけてくる団体には警戒すべき」と強調するように、真の精神世界は、金銭と無縁であるはず。そのリトマス試験紙を用いて、瞑想を体験できる団体とうまくつきあおう。

(ライター 鈴木 工 写真=Getty Images)