昭和後期に開発された、うどんやトースト、ハンバーガーなどの食品を自動調理する「レトロ自販機」だけの店舗が、2014年にオープンしました。メーカーも消滅した2018年のいま、運営できるのは、関係者同士の交流にあるといいます。

修理担当は初期からのお客さん

 数少なくなりつつある「レトロ自販機」。ここで言うレトロ自販機とは、うどんやトースト、ハンバーガーなどの食品を自動で調理する販売機をさします。古くからあるオートレストランなどに置かれており、その多くは昭和後期に製造されたものです。

 こうした古い自動販売機は、製造メーカーがすでに廃業している場合、機械の修理や維持が困難なため、年々数を減らしています。そうしたなか2014年、レトロ自販機だけを集めた「自販機食堂」(群馬県伊勢崎市)がオープンしました。


自販機食堂の様子(画像:オレンジフード)。

 自販機食堂を運営するオレンジフード(群馬県伊勢崎市)は「自販機になにかあった場合の修理は、自販機食堂の初期のころからのお客さんだった方が電気関係に詳しいため、お願いしています」と話します。

「その方だけでは難しい場合には、レトロ自販機界隈で『西の神』と呼ばれている島根県の技術者の方に教えてもらいながら修理をします」(オレンジフード)

 自販機を購入した中古自販機業者へ修理を依頼する選択肢もなくはないのだそうです。ですが、今後自販機の修理をできる若手(上述の修理担当)を育てていくため、現在の方針をとっているといいます。

自販機食堂、オープンのきっかけは?

 オレンジフードが自販機食堂を開店させたきっかけは、2013年夏の全国高等学校野球選手権大会で、地元高校が優勝した時にさかのぼります。他店のレトロ自販機用にうどんやハンバーガーの製造と補充も行っているオレンジフードは当時、特別メニューのハンバーガーをつくり、その旨をツイッターで伝えたところ、非常に大きな反響があったとのこと。フォロワーも増加しました。


自販機食堂の外観(画像:オレンジフード)。

 オレンジフードの担当者は当時をふりかえり、「ツイッターの威力を知りました。それまでは、この産業は衰退していくものなのかと思う部分もあったのですが、もう少し盛り上げることができるのではないかと考えました。自分のお店があれば、試験的にいろいろ試す場もつくれます。現在、自販機食堂の入っている場所が社長の持ち物で空き物件だったというのも、きっかけになりました」と話します。

訪れた海外観光客の感想は?

 2018年1月現在、自販機食堂の利用客は全国各地から集まり、海外からの来客もあるそうです。きっかけはインターネット。ファンの人たちの手によって、自販機食堂の存在はYouTubeなどで取り上げられ、海の向こうにも伝わっているといいます。

「お店には自由に書き込めるノートが置いてあるのですが、そこには外国語の書き込みもあります」(オレンジフード)

 なかには「2年くらい行きたいと思っていた場所にやっと来られた。日本を訪れる目的のひとつだった」というような記載もあったそうです。

 ちなみに自販機食堂の最寄駅は、東武伊勢崎線 剛志駅になりますが、同駅からは3キロ以上離れた場所です。周囲に停車する路線バスや長距離バスはあるものの、クルマでなければ、なかなか容易に行ける場所ではありません。


自販機食堂の店内ではゲーム機も稼働中(画像:オレンジフード)。

 オレンジフードの担当者に今後の展望を聞いたところ、店舗の規模を拡大させることも視野にあるといい、「まずは、閉店した他店から引き取ったうどんの機械を直したい」のことです。

【写真】オレンジ色の数字は「ニキシー管」


レトロ自販機によく見られるニキシー管を用いた待ち時間表示(2014年7月、乗りものニュース編集部撮影)。