大鶴駅(大分県日田市)付近の日田彦山線。復旧工事は、まだ手つかず(筆者撮影)

九州は自然災害にしばしば見舞われている土地だ。台風18号の被害によって約3カ月間運休していた日豊本線の臼杵―佐伯間は、2017年12月18日にようやく運転を再開したが、2016年の熊本地震や、昨年7月5日の九州北部豪雨などによって長期運休に追い込まれている鉄道路線が、ここのところ複数ある。

現在、運転を見合わせている区間は、JR九州の久大本線光岡―日田間(2.4km)と日田彦山線添田―夜明間(29.2km)、および豊肥本線の肥後大津―阿蘇間(27.3km)と第三セクターの南阿蘇鉄道立野―中松間(10.5km)だ。前者2区間は九州北部豪雨、後者2区間は熊本地震による被災、不通区間である。

被災各線の復旧見通しは

このうち、久大本線、豊肥本線は九州を横断する、湯布院や阿蘇山といった著名な観光地へのアクセス路線である。クルーズトレイン「ななつ星in九州」の走行コースでもあり、被災後の同列車はルートを変えて運行しているなど、観光客輸送、観光産業にも大きな影響を与え続けている。

一方、日田彦山線と南阿蘇鉄道は、いずれも輸送量が少ないローカル鉄道であり、復旧費用負担が鉄道会社にのしかかれば、存廃問題も浮上しかねない状況があった。現に日田彦山線に対しては「自社での復旧は困難。地元の議論をうながす」という、無条件の路線維持に消極的な姿勢をJR九州は取っている。

これら各線の現状と、将来の見通しをまとめてみたい。


再建工事中の久大本線花月川橋梁(筆者撮影)

久大本線は光岡―日田間にある花月川を渡る橋梁が洪水により流出し、現在、同区間はバスによる代行輸送で結ばれている。日田彦山線は大行司駅構内の土砂崩れなど、63カ所も被災。もともと夜明から日田まで久大本線へ列車が乗り入れていたこともあって、添田―日田間で代行バスが運転されている。

被災前には博多から久留米・由布院経由、大分・別府まで観光特急「ゆふいんの森」と特急「ゆふ」が運転されていた。インバウンド客にも人気がある路線で、「ゆふいんの森」の車内は外国語で賑やかであった。


被災前は久大本線を走っていた「ななつ星in九州」(豊後森駅にて)(筆者撮影)

しかし花月川橋梁流出後は、「ゆふいんの森」は小倉・大分を大きく迂回する形で博多―由布院間、「ゆふ」は日田―大分・別府間と、それぞれ臨時ダイヤで運行し、由布院方面へのルートを確保している状況である。「ななつ星in九州」は、久大本線経由のルート自体を他の方面へと振り替えた。

前年の熊本地震では被害がなかったにもかかわらず、九州全体が敬遠されて観光客の減少が見られた湯布院エリアは2年続きの災厄であった。JR九州にとっても久大本線は収益上、重要な路線であることから、こちらは被災後すぐ復旧へと動きだし、橋梁の再建が進められている。

2018年1月現在では橋脚・橋台の新設工事が進捗中。4月以降、桁の架設、護岸整備などが行われ、7〜9月頃までにはすべての作業が終わって、運転が再開される見込みである。おそらく、観光客数がピークを迎える夏休み前までの復旧が目指されることであろう。

日田彦山線は費用が足かせに

一方の日田彦山線は、土砂の流入、道床の流出などの被害に対し約70億円と見積もられる費用が足かせとなって、復旧工事が進んでいない。その負担について、JR九州は地元自治体との協議を申し入れているが、地元では「鉄道廃止が前提になるのではないか」という警戒感があって、まだ話し合いは進んでいない。

日田彦山線は、福岡県と大分県にまたがる鉄道。不通区間はちょうど県境部分にあたり、途中の宝珠山駅の構内に福岡県東峰村と大分県日田市の境界線が走っている。朝倉郡東峰村は人口2000人あまりしかない山間部の村で、地理的条件から、隣県にはなるが距離的に近い日田市の経済圏に含まれる。添田方面(田川郡)とのつながりは希薄だ。

2017年7月のJR九州の発表によると、日田彦山線田川後藤寺―添田―夜明間の1日あたりの平均通過人員は、2016年度で299人にすぎなかった。これは利用者1000人未満とされた全13区間のうちでは、5番目に低い数字だった。「(復旧費用を)投資しても回収の見込みなし」と判断されるのも、仕方がないところである。


日田彦山線の列車代行バスは、大型マイクロバスが多く使われている(筆者撮影)

現在、同線の列車代行バスは、一部の便で通常の路線バスタイプが使われているものの、大半は大型マイクロバスでの運行である。つまり、もともとさほどの利用がない区間なのだ。

JR九州の青柳俊彦社長は、日田彦山線などの被災直後に発表されたこの数字について、「鉄道を廃止するために出したものではない。九州の鉄道の状況を正しく認識してもらうためである」とした。だが他方、「(地元自治体などが鉄道施設を取得して)上下分離方式を採用することも、今後、発生するかもしれない」とも述べている。

復旧には三陸の各線が前例に


日田彦山線大行司駅付近の土砂崩落現場。これによって趣のある木造駅舎が破壊された(筆者撮影)

日田彦山線を再生するとすれば、やはり自然災害からの復旧を目指す三陸の各路線や、JR東日本の只見線などが、前例となることであろう。黒字の鉄道会社であっても災害からの復旧費用補助を可能とする、改正鉄道軌道整備法が成立すれば、同法の適用も視野に入ってくる。

解決策としては、復旧費用はJR九州が負担するものの、完成後の線路や駅などの設備は福岡県、大分県など地元自治体へ譲渡し、上下分離方式を導入することがやはり現実的と見られる。その際、JR東日本、山田線宮古―釜石間の運行を担う三陸鉄道のように、列車の運行を第三セクターへ移管することが、復旧費用拠出を受け入れやすくする条件と思われる。

福岡県内の筑豊地区には、廃止対象となった国鉄伊田、田川、糸田線を引き受け、1989年に開業した第三セクター鉄道、平成筑豊鉄道がすでにある。先に1日平均通過人員が発表された区間は、田川後藤寺で糸田線と接続している。

不通区間と合わせ、田川後藤寺―夜明間は一括して地元自治体へ鉄道設備を譲渡。運行は平成筑豊鉄道が行う「JR山田線・三陸鉄道方式」が"落としどころ"としては妥当ではあるまいか。大分県や日田市も、平成筑豊鉄道に出資して株主となればいい。夜明―日田間はJR久大本線への乗り入れという形だ。

熊本地震で斜面崩壊など大きな被害を受けたJR豊肥本線と南阿蘇鉄道は、鉄道での運転再開が計画されている。ただ、被害の程度が大きく、時間がかかるのはやむを得ない。


阿蘇駅に到着した大分からの豊肥本線普通列車。ここから西が不通区間(筆者撮影)

豊肥本線には久大本線と同じような事情があり、JR九州が地域の復興と協同して、工事を進めている。肥後大津―立野間の運転を、まず2019年度前半に再開させる計画だ。

この地域の課題は、今にある。道路網も大きな被害を受けているため、完全な形での列車代行バスが運転できないのだ。

豊肥本線肥後大津―阿蘇―宮地間には、日曜・祝日を除いて、通学の高校生を主な対象とした代行バスが運転されている。けれども輸送力の問題があるのか、積極的なPRは行われていない。一般客の利用も可能だが、高校生の優先利用が要請されている。

不通区間の輸送を担っているのは事実上、一般の路線バスだ。災害前から走っている、九州産交バスの長距離路線が、内外からの観光客も引き受けている。しかし、久大本線と同じく、大分方面から臨時特急(「あそぼーい!」または「九州横断特急」)が運転されており、そちらの方がインバウンド客で賑わっている。

JR乗り入れを目指す南阿蘇鉄道


不通区間の西端にあたる肥後大津駅。停まっているのが高森行きの「ゆるっとバス」(筆者撮影)

南阿蘇鉄道は、運行可能な中松―高森間のみで運転を再開しており、冬季を除いて、看板であるトロッコ列車も走らせている。しかし、立野でのJR豊肥本線との接続が断ち切られている現状では、利用客は少ない。鉄道に代わって肥後大津―立野―中松―高森間を走っているのが、南阿蘇村のコミュニティバス「ゆるっとバス」。村域を大きく超えて地域交通を担っているわけだ。

南阿蘇鉄道は、全線の復旧費用(約70億円)の97.5%を実質的に国が負担する支援策が2017年末に決定し、当面の危機は回避された。立野―中松間の運行再開は2022年度が見込まれている。

復旧に際して、豊肥本線の肥後大津―立野間に乗り入れる案が検討されているとも伝えられた。同線は熊本―肥後大津間が電化されており、輸送量の違いもあって、普通列車の運転系統は肥後大津で電車区間と気動車区間に分断されている。立野での乗り換えを省けるなら大きなメリットがある。これはぜひ実現してほしいアイデアだ。