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自宅のネットワーク環境といえば、無線LAN(Wi-Fi)が多数派でしょう。その使い勝手がこれから大きく変わるとしたら? スマホ・パソコン向けのSoCやネットワーク機器用ICで知られるクアルコムが開催した「クアルコム コネクティビティ事業戦略説明会」の説明会で、技術の概要と今後の見通しを聞いてきました。

クアルコムといえば、スマートフォンなどモバイル機器で高いシェアを誇る「Snapdragon」など、システムオンチップ(SoC)と呼ばれる高集積回路で知られていますが、3Gや4G/LTE、次世代規格5Gなど通信技術の分野にも強みを持ちます。

通信技術では、国・地域ごとの免許が必要な周波数帯域(ライセンスバンド)のほかに、Wi-FiやBluetoothなど免許不要な周波数帯域(アンライセンスドバンド)の分野でも高い技術力を持ちます。特にWi-Fi関連では、チップセットの出荷台数と販売金額は業界トップの座にあります。私たちの身近にある通信機器の中身を調べてみれば、その多くにクアルコム製チップを確認できることでしょう。

○メッシュネットワークって?

現在、クアルコムが力を入れている技術のひとつが「メッシュネットワーク」です。メッシュネットワークとは、機器同士が1対1だけでなく多対多の関係でも接続できるネットワークを意味します。Wi-Fiでいえば、(電波の届く範囲内であれば)どこでも快適に通信できるメリットがあります。

クアルコムのパテル氏は、「メッシュ技術を採用した家庭向けWi-Fiルータが米国で発売された1年半前の時点では、メッシュ技術の採用比率は5%程度でしたが、現在では40%にまで成長しています」と、メッシュネットワーク対応のWi-Fi(以下、メッシュWi-Fi)が急成長していると説明しました。メッシュネットワークに対応した製品のOEMは、90%がクアルコム製で占められるそうです。

そのメッシュWi-Fiの分野においてクアルコムは、「SON(Self Organizing Network)」と呼ばれる独自技術を持ちます。SONは広い通信カバーエリアを確保できるため、広い家屋でも均一の接続性を求められる米国の住宅事情に適しますが、周囲のWi-Fi電波との干渉を回避する機能もあります。

日本市場については、「日本は住宅が密集しておりWi-Fiの帯域も混雑しがちですが、そのような環境でも信頼性の高いWi-Fiネットワークを提供できます」(パテル氏)とのことで、クアルコムは日本でもメッシュWi-Fiの需要はあるとの見方を示しています。日本企業ではバッファローが同社のメッシュ技術を用いた製品開発を進めているとのことですから、日本市場向けに最適化されたメッシュWi-Fi製品が登場する日は遠くなさそうです。

クアルコムは、ほかにも「IEEE 802.11ax」と「IEEE 802.11ad」関連の技術開発も進めているそうです。802.11axは無線LANのシリーズ規格IEEE 802.11の次世代規格で、既存技術(IEEE 802.11a/b/g/n/ac)と下位互換性を持ちつつ、最大通信速度は9607.8Mbps(理論値)と高速です。一方の802.11adは、60GHzという高周波帯(ミリ波帯)を利用し、近距離で最大8Gbpsというデータ転送速度を実現します。

802.11adは2017年からWi-Fiルータのほかに、スマートフォンやパソコンでの採用が開始されており、近距離で超高速という特性を生かした活用が見込まれています。「机の上にケーブルがない環境、たとえばHDMIケーブルを使わずにテレビへ映像出力できる環境を実現します」(パテル氏)とのことですから、仮想現実(VR)対応ヘッドマウントディスプレイにワイヤレスで映像出力するようなユースケースも実現されそうです。

パテル氏は、メッシュWi-Fiが「IoTやスマートホームのインフラになる」との見通しも示しました。クアルコムでは、BluetoothやZigBeeといった通信仕様の異なるメッシュ技術を統合した「クアルコム メッシュ・ネットワーキングプラットフォーム」の開発も進めているとのことです。

このように、メッシュWi-Fiという切り口で家庭内ネットワークの刷新を狙うクアルコムですが、前述したとおり「Snapdragon」などプロセッサベンダーとしての顔もあります。Snapdragonはアプリケーションプロセッサ(映像/音声の再生処理なども担える多機能なプロセッサ)として、スマートフォン/タブレットで豊富な採用実績があり、2017年にはパソコンでの採用も始まりました。

加えてスマートスピーカーに活用できる技術とチップもそろえています。そのようなオールラウンダーが家庭向けメッシュネットワークをどのように展開していくのか、家庭内ネットワークがこれからどう変わるのか、今後に注目です。