田村淳と春日俊彰

写真拡大

島田紳助は受験放棄、内村光良と岡村隆史は不合格

 お笑い芸人は今年も大学受験に挑む。ロンドンブーツ1号2号の田村淳(44)は青山学院大学、オードリーの春日俊彰(38)は東大が志望校だ。

 ***

 共にテレビ企画で受験勉強に励む。田村は「偏差値32の田村淳が100日で青学一直線〜学歴リベンジ〜」(AbemaTV)で、春日は「得する人損する人」(日テレ系列)という番組だ。

 ご記憶の方も多いだろうが、お笑い芸人が大学を受験するのは、定番とまでは言えないにしても、「忘れた頃に繰り返される」トピックスだ。その一部を振り返ってみよう。

 トップバッターは、芸能界を引退した島田紳助(61)。漫才コンビ「紳助・竜介」の人気絶頂期に「東大を目指す」と宣言した。そして1982年1月16日、共通一次の受験会場で“トラブル”を起こしてしまう。

田村淳と春日俊彰

 会場周辺で受験阻止を訴えるグループや取材陣と対峙。芸能レポーターが「他の受験生に迷惑だと考えないのか?」と質問すると、紳助が「しばいたるぞ!」と激昂。受験票を放り投げて帰ってしまった。

 90年代に入ると、ウッチャンナンチャンの内村光良(53)とナインティナインの岡村隆史(47)が大学受験に挑戦する。テレビ企画型の嚆矢と言えるかもしれない。

 内村は95年に「ウンナン世界征服宣言」(日テレ系列/92〜95年)で日本大学芸術学部を、岡村は99年に「めちゃ×2イケてるッ!」(フジテレビ系列)で筑波大学と早稲田大学を、それぞれ目指した。

 結果だが、内村は1次の筆記試験を通過するも、2次の面接試験で芸能界引退を求められ断念。岡村は2校とも完全に不合格だった。

人気者になった坂本ちゃんとケイコ先生

「めちゃ×2イケてるッ!」の場合は98年11月に広末涼子(37)が早大教育学部を自己推薦入試で合格したことも意識したようだ。他にも水道橋博士(55)と玉袋筋太郎(50)のコンビ、浅草キッドも99年に教育学部を受験して不合格となっている。こちらは受験当日の朝にラジオ番組が生中継などを行った。

 ちなみに浅草キッドは00年に慶応大学の通信教育課程に合格。入学式前にマスコミを笑わせていたところ、鳥居泰彦塾長(当時)から挨拶で「テレビカメラが来ていましたが、あくまでここは学問の場です」とお灸を据えられている。

 さらに水道橋博士は17年3月にも、なべやかん(47)と共に明治大学を受験すると宣言した。なべやかんと言えば、同大の替え玉受験問題で一躍有名になった。相当数の人々が“ネタ”と考えているようだが、果たして今年の受験会場に出現するのだろうか。

 ヒット企画として一世を風靡したのは「進ぬ!電波少年」(98〜02年/日テレ系列)の「電波少年的東大一直線」だ。お笑い芸人の坂本ちゃん(51)と、東大出身で家庭教師のケイコ先生(44/現・春野恵子)のコンビは大きな注目を集めた。

 結果はセンター試験の成績が振るわず、東大2次試験を断念。私立大学への受験に切り替えるが、慶応、早稲田、立教、法政などは不合格となる。それでも8大学に合格し、最終的には日大文理学部に進学する。だが芸能活動との両立が困難だったようで、中退という結果に終わっている。

東国原英夫と萩本欽一は合格組

 執念を感じるのはラサール石井(62)だ。15年に東大を受験するが不合格。これもテレビとの連動企画で3月に「独占密着!ラサール石井 本気の東大受験!〜運命の合格発表SP〜」(日本テレビ・関東ローカル)が放送された。それからも受験を続け、昨年17年3月には何と東大4度目の受験に失敗したという芸能ニュースが報じられた。

 逆に合格組は、テレビ局の企画と無縁なケースが目立つ。図抜けて有名なのは東国原英夫(60)と、萩本欽一(76)だろう。東国原は00年に早大第二文学部に入学して卒業すると、さらに03年に同大政経学部に入学を果たす。そして06年に中退し、07年に宮崎県知事に当選したのはご記憶の通り。一方の萩本は、15年に駒澤大学仏教学部に73歳で入学し、こちらも大ニュースとなった。2人とも一般入試ではなく、社会人入試を受験している。

 なぜ、これほどかように芸人が大学受験に挑戦し、場合によってはテレビ局が“密着”するのだろうか。芸能評論家の肥留間正明氏に訊いた。

「テレビ局の企画ですが、本質的には受験生や大学に失礼な話なんです。本当に大学へ通うつもりなら、受験勉強の1年間と合わせ、最低でも5年は芸能活動を中止すべきでしょう。しかし、それをやっている芸人は誰もいません。むしろテレビカメラの前で勉強をしているわけですから、仕事の延長線上です」

 お笑い芸人ではないが、吉永小百合(72)と広末涼子が大学進学で好対照な結果となったことに肥留間氏は注目する。吉永は65年に早大第二文学部に一般入試で入学、正規の4年間、しかも次席で卒業しイメージアップに成功。広末は99年に早大教育学部に自己推薦入試で入学するも世論は応援と批判で真っ二つとなる。おまけに03年に自主退学してしまった。

使い古された企画という現実

「広末涼子さんに対して世論が厳しかったのは、『芸能活動との両立が可能なのか?』と疑問視していたからです。その懸念は現実のものとなりました。一方の小百合さんは第二文学部、つまり夜間です。両立を考えていることは明白でした。そもそも文系の学問は、自宅で本を読んでも勉強できます。芸能界で名を成した芸人がキャンパスに通う必要があるとすれば、学びたい専門分野を明確に持ち、ゼミなどで教授から直接に指導を受けることだけと言っていいでしょう。テレビ主導の一般入試組には“ネタ”の要素が見え隠れするのに対し、社会人入学や大学院に進むお笑い芸人の“本気度”が高いのは、そういう背景があるからです」(同・肥留間氏)

 それにしても、“ネタ”なのだから「受験生に失礼だ」と批判が起こってもおかしくないはずだ。だが、こうした大学受験企画は不思議に炎上しない。極論すれば、世論の反発を招いたのは80年代の島田紳助だけだ。

「視聴者も“ネタ”と理解して、全てを分かって楽しんでいますからね。制作者サイドに立てば、こんなに便利な企画はありません。合格すれば『凄い芸人だ』と話題になるし、不合格でも視聴者は『だよな』と納得する。女優や男優、フリーのアナウンサーなどなら落第の不名誉はリスクですが、芸人は文字通り笑ってもらえます。スポンサーも目くじらを立てない。まさしくいいことだらけです」(同・肥留間氏)

 とはいえ、さすがに使い古された企画になってきているのも事実だという。肥留間氏は「受験挑戦番組は、地上波の番組企画が貧困だという象徴です」と指摘する。AbemaTVはネットTVだが、田村の番組には地上波と同じ欠点を持っているようだ。

「それこそ同じテレビでも、知性派の視聴者はBSやCSなら喜んで見ます。優れた番組を制作する力は、まだ残っているんです。ところが地上波はご存じの通り、極端にリスクを恐れる。そのため、いつかどこかで見た番組ばかりになっています。受験挑戦番組は、その代表例の1つでしょう」

 本当に凄いのは大学を受験することでも合格することでもなく、人生で学びを継続し、それを次世代に伝えることだ、と肥留間氏は言う。

「お笑い芸人なら筆頭は東京芸大で特別教授を務めた北野武=ビートたけしさん(71)でしょう。田村淳さんも青山学院大学の合格を目指すより、東大教授を目指す番組のほうがよかったんじゃないでしょうか。視聴率のことは分かりませんが、少なくともそっちの方が、よほどカッコ良かったはずです」(同・肥留間氏)

 青山学院大学の合格発表は2月10日から27日まで、東京大学は3月10日の予定だ。

 ***

週刊新潮WEB取材班

2018年2月4日 掲載