大手印刷2社はこれから何の会社になるの?

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大日本印刷・北島義俊社長
 ―2018年の印刷業界の景気をどのようにみていますか。
 「紙の印刷が減少しており、出版も厳しい状況だ。今後は印刷とテクノロジーをどのように活用していくかが求められる。当社としては、業務受託(BPO)やエレクトロニクスなどの事業をさらに成長させていきたい」

 ―人工知能(AI)をどう活用しますか。
 「通販関連企業向けの業務支援システムでは、アクセス履歴や購買履歴などを基にした商品紹介機能などにAIを活用している。また電気通信大学と共同で、人間のジェスチャーを学習するAIの研究も始めた。コミュニケーション機能が進化したロボットや、デジタルサイネージ(電子看板)などに活用できる。店舗運営の効率化をはじめ、新商品開発、新規事業発掘などにつなげていく」

 「そのほかにも画像認識技術とAIを組み合わせて、手書き文字を認識できるようにするなど、さまざまな活用方法が考えられる。既存のサービスとAIをうまく組み合わせて活用していきたい」

 ―国内の製造拠点の統廃合や活用方法は。
 「稼働率を総合的に考えながら、最適な体制を考えている。既存の設備を使って、違うサービスを行うこともできる。生産拠点だった場所をBPO事業の拠点として活用している例もある。今後は全国で13カ所あるBPO拠点で、AIを使っていかに自動化・効率化していくかがポイントになる」

 ―半導体製造に使う部材「フォトマスク」の製造にも力を入れていますね。
 「国内では東芝との共同出資で製造拠点を立ち上げるなど、半導体メモリーの需要増に備えて先手を打ってきた。海外ではイタリアにも生産拠点があるが、特に中国の半導体市場の伸びが大きい。需要に対応するため、フォトマスクメーカーの米フォトロニクス(コネティカット州)と合弁で中国にも拠点を構えている。またフォトマスクの描画時間を大幅に短縮できる装置を導入するなど、生産体制を強化している」

 ―半導体製造工程で、型を材料に押し当てて回路を転写し、半導体を製造する「ナノインプリント」の技術開発にも積極的ですね。
 「技術開発には以前から取り組んでいるほか、型のテンプレートを生産する体制も整えている。そのため、需要の伸びに期待している。当社の強みは印刷技術を生かした微細加工だ。高付加価値製品に強みを発揮し、価格よりも品質で勝負したい」

凸版印刷・金子眞吾社長
 ―2018年の事業見通しは。
 「日本経済が好況なように、当社も(食品や医療・医薬などの包材を扱う)『パッケージ事業』や(半導体・ディスプレー関連の)『エレクトロニクス事業』が好調だ。だが(マーケティングやプロモーションを担う)『情報コミュニケーション事業』は、今までのビジネスモデルが通用しなくなっている。デジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)の波が来ており、我々も変化しないといけないタイミングだ」

 ―デジタル変革の波をどう活用すべきですか。
 「IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)が普及し、ビッグデータ(大量データ)が取得しやすくなっている。今後は取得したデータを生産や販促にどのように生かすかが重要になる。印刷産業にとって、情報を伝達するメーンの媒体は紙だ。それがデジタルに変わっていく中で、印刷産業もデジタル化に対応してきた。18年は、顧客の変化に印刷産業がどのように対応していくかという転換点になる」

 ―中国で、半導体製造に使う部材「フォトマスク」の量産を決めました。
 「中国は産業政策として半導体の内製率向上を掲げている。そのためフォトマスクを自社で生産しようとしている企業もあるが、内製する力がない企業も少なくない。そうした企業に対し、我々の製品を販売していきたい。韓国や台湾をはじめ中国市場が立ち上がれば、アジアのフォトマスク事業は400億―500億円のビジネスになると思う」

 ―自治体の地方創生戦略の策定などを行う「地方創生事業」にも力を注いでいますね。
 「各地域で当社ブランドの認知やファンの増加につながるため、ビジネスの基礎になっていく事業だと考えている。こうした取り組みを継続することで、新しいビジネスにつながる可能性も高まるはずだ。これまでは自治体の業務が多かったが、今後は政府や中央官庁の業務も増やしていきたい」

 ―文化財などをデジタルアーカイブ(電子記録・保存)したり、仮想現実(VR)を使って再現したりする取り組みもファンの増加につながりそうですね。
 「基本的には受注産業の当社にとって、まずは顧客の信頼をいただくことが重要になる。その上で単に受注するだけではなく、顧客のマーケット拡大に向けて顧客と一緒に取り組んでいく」

(聞き手=福沢尚季)