今回は「マスク」にまつわる蘊蓄100章です(写真:tomos / PIXTA)

モノ情報誌のパイオニア『モノ・マガジン』(ワールドフォトプレス社)と東洋経済オンラインのコラボ企画。ちょいと一杯に役立つアレコレソレ。「蘊蓄の箪笥」をお届けしよう。
蘊蓄の箪笥とはひとつのモノとコトのストーリーを100個の引き出しに斬った知識の宝庫。モノ・マガジンで長年続く人気連載だ。今回のテーマは「マスク」。風邪の流行する冬から花粉症に悩まされる春先にかけての必需品を徹底解剖。あっという間に身に付く、これぞ究極の知的な暇つぶし。引き出しを覗いたキミはすっかり教養人だ。

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1. マスク「Mask」の定義は広く、大きく分けて実用的なマスクと意匠的なマスクに二分される

2. 伝統的には「面」「仮面」を表わし、世界最古のマスクといわれるのはイスラエルで発見された新石器時代の石製のお面のようなもので宗教行事に使われたと考えられる

3. 英語で「Мask」は動詞として「隠す」「偽る」「ごまかす」といった意味を表わすこともある

4. ウイルスなどの感染予防、花粉やほこりの吸引防護を目的とする家庭用の衛生用品としてのマスクは日本で誕生し、独自の進化を遂げている。

5. 「マスク」は冬の季語

6. 家庭用・医療用のマスクは薬事法に該当しない衛生用品(雑貨品)に分類される

7. 「Mask」は「覆う」という意味のイタリア語「maschera」に由来し、化粧品の「マスカラ」と同源といわれる

8. 「Mask」の語源は、一説にはラテン語で幽霊を意味する「mascus」ともいわれる

9. 17世紀に欧州で黒死病が流行したときには専門の医師が鳥の嘴のような「ペストマスク」を使用していた

10. 第二次世界大戦中には米国で4歳以下の子どもを対象にミッキーマウス型のガスマスクも製造された

日本のマスクは工場用から始まった

11. 日本のマスクの歴史は粉塵よけを目的とする工場用マスクから始まったとされる。当時のマスクは真ちゅうの金網を芯に布地をフィルターとして取り付けたもの


12. 江戸時代、石見銀山では鉱山病の予防対策として「福面」が考案された。鉄の枠に梅肉を挟んで薄絹を張ったマスクで、クエン酸の効果で鉱塵を防いだという

13. 明治時代にも一般用のマスクは存在し、1879年から国産化されたという記録がある

14. 当時のマスクは布製でしっかりした立体型、金属系のフィルターが付いたもので「呼吸器」と呼ばれた

15. 1919(大正8)年のインフルエンザ(スペイン風邪)大流行を機に予防品として「マスク」の名称とともに定着

16. 関東大震災後、内山武商店の「壽(ことぶき)マスク」が、マスクの商標登録品第1号に認定された

17. 以降、金網をセルロイドに変えた「オービシマスク」やフィルター部分に別珍、革などを使用したマスクが登場

18. 1948年頃、ガーゼを使用した平型マスクが登場

19. 不織布マスクが家庭用に一気に普及したのは2002年頃。新型肺炎SARSがアジアを中心に流行し、空気感染への予防意識が高まったのがきっかけ

20. 2009年、新型インフルエンザが発生しWHOがパンデミック宣言すると、マスク不足になるほど売上が激増

21. また、中国の大気汚染の影響によるPM2.5濃度上昇の影響もあり、国内でマスクの普及と着用習慣が一般化

22. PM2.5とは直径2.5μm以下の微小粒子状物質。PMとは「ParticulateMatter(粒子状物質)」の頭文字

23. 花粉の粒子の大きさは20~40μm(マイクロメートル)

24. インフルエンザウイルスの大きさは0.08~0.12μm

25. ノロウイルスはさらに小さく0.03μm

26. 一般的なマスクの穴の大きさは約5μm。ただしウイルスの感染経路は飛沫によるものがほとんど

27. 一般的に咳は2m、くしゃみは3m先まで飛沫が飛ぶ

28. 咳は1回で10万株のウイルスが飛散するといわれる

29. さらにくしゃみは100万株のウイルスが飛び散る

30. 日本衛生材料工業連合会の構成団体「全国マスク工業会」の会員法人は約90社。うち約半数が自社生産メーカー

マスク着用で子どものインフルエンザ発症率は5分の1に

31. 全国マスク工業会会員法人によるマスクの年間生産量は2015年に約36億枚を超えた

32. 全国マスク工業会ではマスク着用で子供のインフルエンザ発症率が5分の1になるという研究データを発表

33. マスクは呼気の温度と湿度を保ち、鼻腔内の繊毛運動を活発にする効果がある

34. マスクはその用途によって「医療用マスク」「産業用マスク」「家庭用マスク」に分類される

35. 「家庭用マスク」はカゼや花粉対策、防寒、保湿などの目的で日常使われるマスクとして市販されているもの

36. 「医療用マスク」は医療現場で外科手術などの際に使われる感染防止用マスク。サージカルマスクとも呼ばれる

37. サージカルマスクは米国の医療用マスクの規格に基づき作られた3層構造(中間層にメルト不織布)のもの

38. 「産業用マスク」は主に工場などの作業時の防塵対策に使用されるマスク。工業用マスクや防塵マスクとも呼ぶ

39. 家庭用マスクには不織布タイプとガーゼタイプがある

40. ガーゼマスクは主に綿織物を重ね合わせて作られるもので、古くからマスクとして普及

41. 不織布とは、熱的、機械的、化学的作用により繊維を接着または絡み合わせた薄いシート状の布のこと

42. 不織布は粒子捕集性や通気性に優れることからマスクのほか、紙おむつや生理用品などにも使われる

43. 「N95マスク」は米国労働安全衛生研究所(NIOSH)の「N95規格」に適合した高機能マスク

44. 「N95」とは0.3μm以上の微粒子を95%以上捕集する性能を備えていることを示す

45. 「N99」とは、0.3μm以上の微粒子を99%以上捕集する性能を備えていることを示す

46. 「N99」は呼気抵抗が強く、日常使用には向いていないといわれる

47. マスクのパッケージには「PFE」「VFE」「BFE」などフィルタリング効果が記載され、マスクを選ぶ規格基準となる

48. VFE(ウイルス濾過効率)はウイルスなど飛沫を捕集する割合。数値が高いほど遮断効率が高いことを表す

49. PFE(微粒子ろ過効率)は、試験粒子(0.1μm)が除去された割合(%)を示す

50. BFE(細菌ろ過効率)は、細菌を含む粒子(約3μm)が除去された割合(%)を示す

花粉症対策に適しているのはBFE

51. VFEとPFEが高いマスクはインフルエンザ予防や風邪予防に効果的。BFEが高ければ花粉症対策に適している

52. マスクの効果を高めるうえで重要なのは鼻などの凸凹に隙間ができないようフィットさせて装着すること

53. サイズの選び方の目安として、耳の付け根の一番高いところと鼻の付け根の1cm下の間の長さが10.5~12.5cmでSサイズ、12~14.5cmでMサイズ、14cm~でLサイズ

54. マスクは正しく着けてもウイルスの除去効果は40%程度ともいわれる

55. マスク着用による防御を過信することなく、手洗いの励行、人混みを避けるなど他の感染対策も必要

56. 厚労省はインフルエンザ予防対策のひとつとして「咳エチケット」を提唱。「症状のある人からの感染防止用としてのマスク使用の効果は認められている」とするもの

57. 不織紙マスクの交換目安は1日に1回。同じものを繰り返し使うことは厳禁

58. マスクは裏表を正しく着用することも重要。プリーツタイプの場合はひだが下に向いているほうが表

59. ほとんどのマスクは、耳にかけるゴムが外側(表側)に取り着けられている

60. マスクフィルターで捕集されたウイルス飛抹などの危険因子は数時間マスク上で活性しているといわれている

61. マスクは外し方にも注意が必要。まず、マスクはヒモ部分を持って外す(フィルター面には極力触れない)こと

62. マスクは外したら袋に入れて密封して捨てる、もしくは蓋つきのゴミ箱へ捨てること。その後、手を洗うこと

63. 製薬会社のエーザイの調査では、マスクを取り替える頻度として69%が「1日1回」と回答する一方6人に1人が「同じマスクを2日以上使用する」と回答

64. ガーゼタイプのマスクの場合は洗濯して再利用可能だが、手洗いが原則、漂白剤の使用はNG

65. マスクメロンの「マスク」は英語の「mask(面)」ではなく、その芳香から「musk(麝香)」

66. 一般的に結婚式のマナーではマスクはNGとされる

67. 接客用などの用途に、透明なマスクも販売されている

68. 中国では睡眠中の顔認証防止用マスクが発売

69. 中国のビーチでは「フェイスキニ」と呼ばれる日焼け防止用のマスクが流行、夏の風物詩となっている

70. 口腔内の乾燥は口臭悪化の原因となるため、マスクをすることは口臭対策としても効果があるとされている

就寝時のマスク着用は口臭対策にも

71. 睡眠時の口呼吸で口腔内が乾燥し口臭菌が増えるケースも多いため、就寝時のマスク着用がすすめられている

72. 小林製薬の「のどぬ~るぬれマスク立体タイプ」は付属のぬれフィルターを本体にセットすることでスチーム効果をもたらし鼻やのどに潤いを保つ。通気性が高く、10時間加湿が持続する「就寝用」も発売

73. 白十字では睡眠中ののどを保湿する「夜用のどケアる~ずフィットマスク」を展開

74. ピップでは「悪臭退散マスク」を発売。4層構造(従来は3層)で不快なニオイをシャットアウトする

75. 「フィッティ」を発売している玉川衛材は、家庭用プリーツ型不織布マスクを1980年代から販売

76. 2000年初頭にユニ・チャームは不織布製で立体型のマスクを発売しヒット

77. ユニ・チャームは福山大学、北海道大学と共同で見た目の評価を検証し「マスク着用で顔が小さく知覚される」ことを実証

78. ユニ・チャームの「小顔に見えマスク」は角のないラウンドフォルムを採用し、頬にフィットするマスク。発売1年半で売上数200万個を突破

79. 「小顔に見えマスク」は2016年度グッドデザイン賞受賞

80. アイリスオーヤマでも顔の輪郭を美しくみせる新形状の「美フィットマスク」を発売

81. 興和の「三次元マスク」は、空気中の微分子を99%カットする5層構造で純日本製

82. 白元アースの「快適ガードプロ」は、肉厚ノーズクッションを採用して隙間を防ぎ、メガネのくもり問題を解消

83. パブロンの「パブロンマスク365」は光触媒のV-CATがウイルス、花粉、ニオイを分解する

84. ビー・エヌでは頬に貼って装着する「ひもなしマスク」を開発。耳へのストレスゼロで顔との隙間も解消

85. ピップの「しっとり美容保湿マスク」はウイルス飛沫、花粉をカットしつつ肌の潤いをキープできるマスク

86. 興和「メイクがおちにくいマスク」はマスクの内側に撥油撥水性のある加工を施し女性のニーズに応えている

87. メッシュ加工品を手がけるくればぁが開発した高性能マスク「ピッタリッチ」はPM2.5対策、抗菌・抗ウイルスのための9層のフィルター採用。価格は1枚で1万円を超えるが、洗濯して100回程度まで使用できる

88. 「ピッタリッチ」は2015年にフィギュアスケートの羽生結弦選手が使用して注目された

89. 「ピッタリッチ」は密閉性が高いため装着時は腹式呼吸が必要となり基礎代謝が上がりダイエットにも効果があるとして話題になった

90. くればぁでは、マスク内蔵マフラー「bo-biプロテクトスカーフ」も発売

夏場をターゲットにした大胆なマスクも

91. くればぁではギニア政府などからの要請を受けてエボラ出血熱対策用のマスクを提供している

92. マスク需要が低迷する夏場をターゲットにした大胆なマスクも登場。白元アースの「be-styleUVカットマスク」は紫外線をカットする酸化チタンを練り込んだ素材を使用し、側面はメッシュ加工で通気性を高めている

93. 「フリスク」とコラボしたスズランの「フリスクマスク」は清涼感が眠気防止につながると高速道路SAなどで人気

94. 近年は鼻腔内に入れ使用する「ノーズマスク」も登場

95. ドクター中松の発明品のひとつに「鼻フィルター」という名称の鼻マスクがある

96. 欧米では街中でマスクをつける習慣がなく、「マスクをしている人は重病人」という見方が一般的

97. 日本では花粉症や風邪の症状がなくても常にマスクを装着する「マスク依存症」が増加

98. オシャレやノーメーク隠しが目的の伊逹マスクも流行

99. 家庭用マスクの市場規模は2005年から2015年の10年間で2.5倍に増大

100. 2016年の国内の家庭用マスク市場は280億円に達した

(文:森谷美香/モノ・マガジン2018年2月16日号より転載)