郊外新築と都心中古、選ぶならどっち?

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決して年収は高くないのに、お金を貯められる人がいる。どこが違うのか。雑誌「プレジデント」(2017年2月13日号)の特集「金持ち夫婦の全ウラ技」より、人生の3大出費のひとつ「住宅」にまつわる知恵をご紹介しよう。第5回は「マンション選び」について――。(全12回)

■資産価値が下落しない物件選びのポイント

マンションは「郊外の新築」と「都心の中古」のどちらを選べばいいか。とりわけ人口減少など、不可避な経済トレンドをどう踏まえるべきだろうか。

まず、都心の中古だ。都内で「暮らしっく不動産」を運営するラインズマン代表で宅地建物取引士の門伝義文氏は語る。

「都心の中古は、将来的に本格化する人口減少による需要の低下で資産価値が下落しないような物件選びが大事です。特に、立地(駅に近い、など)を重視すべきでしょう」

不動産情報サービスのアットホームが公開しているデータをもとにした門伝氏の解説によれば、昨今の首都圏の中古市場は“沸騰中”で、成約価格の相場は表の通り。特に、東京23区内は平均3520万円(1年前より約16%上昇)。

「国土交通省指定の不動産流通標準情報システムのデータを集計・分析すると、昭和58年以降に建てられた中古物件(駅から徒歩15分以内)の平均価格は中央区勝どきで6822万円、江東区の豊洲は5918万円でした。地方や周辺自治体から都心への転入者数が転出者数を上回る転入超過現象などもあり、相場が高騰中です」(門伝氏)

今後はどうなのか。東京都の人口は1352万人。日本の総人口はすでに減少しているが、都の場合、転入超過などを理由に、人口がピークを迎えて減少に転ずる時期を従来予想の2020年から25年へと修正した。

そうした背景を下に、しばらく都心の中古物件相場は上がる可能性が高いと見る専門家は多い。都心への流入者が多いことに加え、国内外の投資家の不動産購入の動きが活発で、また富裕層や高齢者が相続税対策で不動産購入する傾向も続いている。

都心物件は、もともと資産価値が下落しにくいうえに、そうした要素が下支えしているかたちだ。ただし実際購入するなら都心の中古なら何でもいいわけではない。門伝氏はこう語る。

「各中古マンションは、『重要事項調査報告書』を管理会社や管理組合が作っていて、それを購入前にチェックするべきです。管理費はいくらか。また修繕積み立て費はいくらで、大規模修繕工事のための積み立て額はどれくらいか。さらに、区分所有者に滞納者が何人いるか。そうしたデータを見れば物件の環境や住人の傾向がわかります」

■在宅勤務が可能なら郊外はメリット大

一方、郊外の新築という選択はどうか。門伝氏によれば、「一般に新築物件は購入するとすぐに資産価値が2割下がる」と言われ、さらに郊外の場合はすでに人口減少傾向にある市町村もあるため、駅近物件などを除けば全体に価値の目減りが激しい。都心部より物件相場が低いので、手は届きやすいが、通勤時間が長くなるデメリットもある。

「ただ、最近の企業は在宅勤務を認めるなど社員の働き方をフレキシブルにする傾向にあります。そうなれば、通勤地獄も避けられます。さらに、手狭な都心部に比べ、郊外はゆったりと自然豊か。仮に、専有面積60平方メートル程度の物件でそれなりのスペックの物件を購入するとき、都心の中古なら4000万〜6000万円いってもおかしくありませんが、郊外なら3000万円台で買えます。最大3000万円もお得なのです」(門伝氏)

購入物件に一生住む予定であれば、購入時期は今後、人口減少で空き家物件が増え、相場が下がった頃までずらしてもいいだろう。

Answer:都心も郊外も「駅近」物件がいいが、相場は高騰中!

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門伝義文(もんでん・よりのり)
ラインズマン代表。宅地建物取引士、FP2級。「不動産をわかりやすく伝える」をコンセプトに不動産会社ラインズマン設立。ウェブで「暮らしっく不動産」運営。ユーザー視点のコラムが人気。
 

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(ラインズマン代表 門伝 義文 構成=大塚常好)