なかなか止まらない咳と息苦しさ。そんな症状の喘息は、子供の病気と思いがちだが、近年では大人にも急増している。それも、「ゼーゼー」「ヒーヒー」といった症状はなく、アレルギー反応もない非アトピー型が多いのだという。
 実はこれ、高齢者の場合は真っ先に心不全が疑われる怖い病で、風邪をきっかけに発症するケースが多いのだが、東京都立多摩医療総合センター総合内科(呼吸器系)の外来担当医はこう説明する。
 「もちろん風邪が主な原因となる場合も多いのですが、中国から流れ込む汚染された空気やインフルエンザが蔓延するこの季節が、最も注意すべきなのです。手当てが遅れると狭心症や脳梗塞にもつながる可能性があるため、軽く考えないようにしてください」

 世界保健機構(WHO)と世界気象機関(WMO)が共同で2012年に作成した、公衆衛生と気象に関する最新の発表報告によれば、世界で喘息の患者は2億人を超え、増加の一途をたどっているという。
 「地球の温暖化の一因とされる、フロンガスや化学物質などの影響を示しています。日本も当然、地球温暖化の影響をさまざまな形で受けているが、喘息患者の増加との因果関係も無関係ではないはずです。また、大気汚染物質やタバコの他に、花粉や家ダニなど、我々の生活圏で発症する原因なども多く指摘されています」(同)

 東京・目黒にある内科・呼吸器科のクリニックにも、中高年の患者がよく訪れている。その1人で56歳の男性患者について、担当医師はこう話す。
 「ご本人は咳が止まらず、息切れがすると言って訪れたのですが、生活環境を聞いてみれば、ご自宅の目の前に交通量の多い国道が走っていた。調べると、1秒間に吐ける空気の量は通常の40%にも満たない状態でした。高齢者の患者さんは、よく咳とともに息切れを訴えて受診しに来ます。そこで肺活量や肺機能の検査をすると、肺の奥の細い気管がやられて炎症を起こしていることが多い。その患者さんはまだ50代ですが、同じ状況にありました」

 こうした喘息症状は、適切な治療をせずに発作を繰り返すと、気管支の炎症部分が厚くなり、回復しづらくなるという。
 「統計によれば、日本の喘息による死亡者はステロイドなどの普及により、1995年の約7000人のピークから徐々に減ってはいますが、それでも、今も年間1000〜2000人が死亡している。決して安心できない病であることと、放置は厳禁であることを肝に銘じておかなければなりません」(健康ライター)

 呼吸は自律神経がコントロールしており、気道の動きもまた、自律神経が制御している。自律神経は昼間の活動期には交感神経が優位になり、積極的に気道をコントロールしていて、気道も広く、痰などの排出を促しもする。
 「しかし、夜間や就寝中などは副交感神経が優位になり、身体をリラックスさせるのですが、この状態が逆に気道を過敏にしてしまい、喘息を起こしやすい環境を作る原因となるのです。発作が夜間に多い理由は、そのためだと考えられています」(専門医)

 ただし、冒頭でも触れたように、子供の喘息患者と比較すると、大人の喘息は「ゼーゼー」といった症状はなく、ハウスダストやダニなどが引き起こすアトピー型でもないため、見すごされてしまうケースもあるといわれる。
 「大人の喘息も小児喘息と同様に、アレルギー性はあるものの、わずか3分の1程度と少なく、これは幼児期についたアレルギーに対する免疫力が高いことを意味していると言える。とはいえ、大人の喘息はさまざまで、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などの合併が、発症の元になっている場合もあります。高齢者が“息苦しい”と訴えた場合、危険な状況にあるにもかかわらず、症状がなかったり、アレルギー反応がないと、医師も見逃すケースは少なくない。この辺りが、喘息対策の大きな問題なのです」(同)