会見する吉田次期社長(右)と平井社長

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 ソニーは2日、吉田憲一郎副社長兼最高財務責任者(CFO、58)が、4月1日付で社長に昇格する人事を発表した。平井一夫社長兼最高経営責任者(CEO、57)は、代表権のない会長に就任する。ソニーは2018年3月期に営業利益と当期利益が過去最高を更新する見通しで、18年度からは新たな中期経営計画をスタートさせる。12年に社長に就任して以来、構造改革を進めてきた平井社長だが、ソニー復活に道筋がついた「絶好のタイミング」で経営をバトンタッチする。

 14年にCFOに就任した吉田氏は、パソコンやテレビ、スマートフォンなどの事業での大幅な構造改革を平井氏と二人三脚で進めてきた。「人の嫌がる構造改革を先頭に立って推進し現在のソニーを実現した、陰の立役者だ」(ソニーOB)。

 平井氏は吉田氏を後任に選んだ理由を「一言で表すのは難しいが、何をすべきかが見えており、強固なリーダーシップがある。さらにエンタメ、半導体、コンシューマーエレクトロニクスと、ソニーが抱えるさまざまなビジネスの一つ一つをよく勉強し、幅広い知見を持っている」と説明した。

 これを受け吉田氏は「環境が大きく変化しているグローバル市場で、最大の資産である『SONY』のブランドや多様性といった強みで競争力を高めたい」と抱負を述べた。

 ソニーの課題については「時価総額の上位にはテクノロジーの企業が名を連ねており、最高業績とはいえ20年前とはグローバルでの位置づけが大きく変わっている」と危機感を示した。

 また今後の方針について『感動を届ける』というソニーのミッションは変わらない」と断言。「攻めと守りのどちらもバランスを取って経営を進めたい」と力を込めた。

お気に入りはアイボ 
 「ソニーの確固たる番頭」として、陽気なイメージの平井氏に対し堅実で冷静なイメージが強い吉田氏。これも間違いではないが、社員やOBは「情熱があり気さくで人の話をよく聞く人」と口をそろえる。会見では「平井はカメラオタク。ソニー製品は好きだが、あそこまではなれない」と冗談を口にする姿も見せた。現在お気に入りのソニー製品は「アイボ」だ。

 ソニーに対する思いは強く、グローバルでの存在感が低下している現状に最大の問題意識を抱く様子がにじむ。「これまでに基本的なベクトルは平井と合わせてきた」とし、大きな経営方針は変わらないだろう。平井氏が打ち出した『ラスト・ワン・インチ』のコンセプトも「ユーザーに近づくという方向性は変わらない」と踏襲する。ただし「表現の仕方は変えるかもしれない」。トップには企業の顔としての役割も求められる。「吉田カラー」をどう打ち出していくのかに注目だ。
<略歴>
吉田憲一郎氏(よしだ・けんいちろう)58年(昭83)東大経済卒、同年ソニー入社。01年ソニーコミュニケーションネットワーク(現ソネット)執行役員、05年社長。13年ソニー執行役、14年取締役、15年副社長。熊本県出身。58歳。

18年3月期は過去最高益を更新へ
 ソニーは2日、2018年3月期連結業績予想で全ての利益を17年10月公表時から上方修正し、当期利益が07年度以来の過去最高となる見通しを発表した。営業利益は10月予想比900億円増の7200億円、税引前利益は同900億円増の6900億円、当期利益は同1000億円の4800億円の見込み。売上高予想は据え置く。音楽事業や画像センサー事業などが好調に推移する。

 同日発表した17年4-12月期連結決算(米国会計基準)は、ゲームや半導体、テレビなどの事業がけん引し、大幅増益となった。家庭用ゲーム機「プレイステーション4」用ソフトウエアの販売好調や、4Kテレビを中心とした高付加価値モデルシフト、スマートフォン向け画像センサーの販売増などが貢献した。

 当期利益ではこれまで、07年度の3694億円が過去最高だった。今回の上方修正で営業利益と当期利益のどちらも過去最高を更新することとなり、「ソニー復活」の証明ともなりそうだ。ただ、会見した吉田副社長兼CFOは「今回の好業績は為替など外的要因も大きい」と指摘。17年4-12月期時点の株主資本が、07年同期と比べて1兆円超減少している点も踏まえ「慢心せず、引き続き財務改善に取り組む」と気を引き締めた。