1位は若年層にはなじみのない病気でした

写真拡大 (全6枚)


日本で最も件数が多い手術について、今回は解説します(写真:den-sen / PIXTA)

日本で最も件数の多い手術は何かご存じでしょうか。それは、盲腸でも骨折でもなく、白内障の手術です。1250以上ある手術分類のうち、2016年は全眼科手術の約4割、全手術の約1割を占めました(入院・外来の合計)。

入院が必要な手術に対象を絞ると、年間件数の多い手術ランキングトップ10は以下のようになっています。


圧倒的1位の白内障とはどんな病気か

白内障とは、眼内にある水晶体が混濁し、視力が低下する病気です。高齢になるとほとんどの人が罹患すると言われています。厚生労働省によると、初期の白内障は早い例では50歳代から発症し、中等度以上のある程度進行した白内障は70歳代で約半数、80歳以上では70〜80%にみられるとされています(「科学的根拠(evidence)に基づく白内障診療ガイドラインの策定に関する研究」)。

白内障の治療には薬物療法もありますが、進行し日常生活に支障がある場合は、水晶体再建術(人工の水晶体(眼内レンズ)を挿入する手術)を受けることがあります。手術を受けた患者の4分の1程度が80歳以上であり、高齢者が多いのが特徴です(厚生労働省「第2回NDBオープンデータ」)。

白内障手術の件数は近年増加傾向にあります。年間実施件数は毎年発表されている訳ではありませんが、日本眼科医療機器協会による眼内レンズ出荷枚数の推移をみると、2016年は前年比5%増の154万枚となっています。


増加の一番の理由として、高齢化があげられます。ほかには、眼内レンズの性能が上がったことや、手術による身体への負担が減ったことで、早期段階で手術を受ける患者が増えていることも影響しているでしょう。

さらに、加齢以外に、糖尿病やアレルギー、外傷によっても水晶体の混濁は起き、最近では、若年での白内障も増加していると言われています。

人工レンズには寿命があるため、若いうちに手術を受けるようになれば、高齢期に2度目の手術を受ける可能性も出てきます。

昨今、手術を受けるケースが増えたことによって、手術による国民全体の医療費も上昇しています。診療報酬の改定の影響で、2014年度はいったん下がりましたが、翌2015年度には2651億円と、再び上昇しており、今後も上昇すると推測できます。

2003年に行われた試算では、手術による医療費は薬物療法など従来技術にかかる医療費の5〜6倍と大きく上回っていました(田倉智之「白内障手術の社会的貢献度に関する考察」)。

手術の効果が大きい

一方で、その効果として、手術の増加にともない、患者の白内障治療にかかる期間が短縮していることがうかがえます。たとえば、厚生労働省の「患者調査」によると、白内障による推計入院患者数は横ばいで推移していますが、推計外来患者数は減少しています。

推計外来患者数の内訳をみると、初診患者数は横ばいで推移していますが、再来患者数が、2014年には1996年の半数近くにまで減少しています。また、入院患者の一人の平均在院日数は、2014年には1996年の3分の1程度にまで短縮しています。入院患者のほとんどが手術を受けていることから、手術前後の在院日数が短縮していると考えられます。

冒頭に述べたとおり、白内障は加齢を要因とするものが多いため、発症を減らすことは難しいと思われます。しかし、手術のための入院の平均在院日数は短縮され、外来による再診の回数が減るなど、白内障治療にかかる期間は短縮していると考えられます。


さらに、手術は根治的な要素が強く、白内障の手術で視力の低下を防ぐことによって、労働生産性の低下の防止や、社会福祉的支援費用の削減が期待できます(田倉智之「白内障手術の社会的貢献度に関する考察」(2003年)より)。

白内障手術を受けることによる社会的な負担の軽減と、視力の低下を防ぐことによる労働生産性の維持の効果は数千億円とも試算されており、特に、65歳未満の就労世代においては、手術療法が薬物療法の医療費を上回る以上の効果が見込めると考えられます。高齢者でも転倒防止等の効果が期待できるでしょう。

また、白内障は、緑内障や糖尿病と並んで中途失明原因の1つとなっています。自分または身近な人で白内障の疑いがある場合は、早めに診察を受けることが必要です。

保険適用外の先進技術による手術も

水晶体再建術には、公的医療保険の対象となる単焦点のレンズを使用するものと、公的医療保険の対象にはならない多焦点のレンズを使用するものがあります。患者にかかる負担は、公的保険が使える単焦点のレンズで、自己負担3割の場合は5万円程度です。生命保険に加入していれば、白内障手術やそれに伴う入院は給付対象であることが多いため、患者の負担はさほど大きくありません。


多焦点レンズの場合は、先進医療で公的保険が使えないため、30万〜50万円と高額です。実施件数は単焦点レンズの1%弱と少ないですが、遠方・近方両方に焦点を当てることができるということで近年増加傾向にあります。

2016年の日本眼科学会の報告によれば、多焦点レンズのほうが、期待が高い分、手術後の不満が多い傾向があるようです。手術がそもそも向かない患者もいます。手術を選択する場合は、主治医としっかり相談することが必要でしょう。