東京駅(「Thinkstock」より)

写真拡大

 4年ぶりに東京23区内で大雪警報が出た1月22日。当然のように首都圏の交通は大混乱に陥った。午後から雪が本降りとなり、退社時間を繰り上げた企業も多かったが、それがさらに混乱に拍車をかけた。新宿駅、渋谷駅、品川駅、蒲田駅、武蔵小杉駅などの主要な乗換駅では、駅構内への入場制限が行われたため、雪の降る寒空の下、大勢の乗客が“帰宅困難者”となり駅の外で大行列を余儀なくされた。

 2014年2月の大豪雪から4年ぶりの大雪とはいえ、なぜ雪が降るたびにダイヤが乱れるのか、納得いかない苛立ちを覚えた乗客も多かったはずだ。そこで、雪が降ると鉄道はなぜ乱れるのか? なぜ、ノロノロ運転しかできないのか? そんな素朴な疑問を鉄道ジャーナリストの梅原淳氏にぶつけてみた。

●間引き運転の理由

「まず、雪が降ると視界が悪くなるので、列車はスピードを出せなくなります。視界が悪くなれば、前方の確認ができなくなり、スピードを出せなくなって、通常の時刻より遅れて運転せざるを得なくなるのです。もうひとつは、雪が線路上に積もることで、ブレーキの利きが悪くなる。この2つにより、列車は最初から遅れざるを得ないのです。これは首都圏に限らず、雪国でも同じです」(梅原氏)

 だが、首都圏特有の理由も当然ある。

「なぜ、雪で列車が遅れるのか。首都圏の場合は、とにかく列車の本数が多い。利用者も東京駅から半径50キロ圏内で1日の利用者が4000万人くらいいるんですね。日本の鉄道利用者の5分の3くらいが首都圏にまとまっているので、少し徐行をするだけでもダイヤの乱れが大きくなるし、混乱も大きくなるわけです。

 あとは、やっぱりブレーキが利かなくなることです。雨でもそうなんですが、雪だとさらに利かなくなる。鉄道は金属の車輪が金属のレールの上を走るので摩擦が少ない。走行するエネルギーが少なくてすむのが利点ですが、摩擦が少ないのでもともとブレーキの利きが悪いうえ、雪でそれがさらに悪くなるわけです。雨や雪が降って摩擦が少なくなって止まれなくなるのは、世界中どこの鉄道でも同じです」(同)

 14年2月15日の大雪では、東急東横線の元住吉駅構内で列車衝突事故が発生した。原因は、降雪時にもかかわらず、通常時と同じ時速70〜80キロで走行していたため、ブレーキが利かず衝突したのだ。この事故以降、国土交通省は積雪時の運行について鉄道会社に通達を出したという。

「元住吉駅の衝突事故は、雪でブレーキの利きが悪かったのに加え、車輪とブレーキをかけるブレーキシューの間に雪以外の何かがはさまったため、ブレーキの利きがさらに悪くなり、通常より強めにブレーキをかけても利かずに追突してしまったという事故です。この事故で、東急電鉄は1時間に3センチ以上とか、積雪の深さ11センチ以上の大雪の場合、スピードを時速40キロ以下まで落とすことにしました。スピードを落とせば、駅と駅の間を3分で結んでいたのが、5分とか6分とかになっていくので、電車がどんどん遅れていくわけです。
 
 あと、駅と駅の間に列車を止めることは非常に危険なことなので、雪が降ったら列車の本数を少なくして運行しなさいというのが国交省の通達です。駅と駅の間に列車が止まって閉じ込められると、先日の新潟のケースでも乗客は一晩閉じ込められたし、首都圏でも1998年に東海道線で一晩閉じ込められたケースもありました。駅と駅の間に止まっている列車に追突してしまったり、踏切が開かなくなったりして、街中に混乱を引き起こす可能性があるので、列車の本数を減らしなさいということです」(同)

●混乱中は移動しない

 今回は多くの企業が退社時間を早めたが、そのせいで乗客がターミナル駅に殺到したため、駅構内への入場制限をせざるを得なくなった。

「駅の入場規制は、人が線路に転落するのを防ぐためです。これは安全上仕方ありません。今回は企業が一斉退社を促したが、時間が遅すぎた。もっと早く退社させるべきです。実は大雪も大地震などの自然災害と同じなのです。帰宅困難者が出る可能性があるからです。場合によっては、会社なり学校なりにしばらく留まったほうがいい。すでに混乱が始まっているのであれば、自分がそこに加わることで、さらに混乱を広めかねませんので」(同)

 今は鉄道会社も情報を早く出す。入場規制や運行状況もネットで確認できる。その上で、今すぐ帰るべきか、天候の回復を待つべきか判断する。それが梅原氏のアドバイスだ。

「首都圏の場合、何日も雪が降り続くことはない。雪がやめば電車は動きだすので、どうしても早く帰らないといけない人は別ですが、遠距離の人などは天候の回復を待つことも重要です。また大雪が降るかもしれません。もし朝から降っていたら、通学、通勤は控えるべきです。今回のように途中から降った場合は、交通機関はどんどん乱れていくので、そうなる前に移動して、混乱中は移動しないことです」(同)

 大雪の際には、外出は控えたほうがよさそうだ。
(文=兜森衛)