ハンドルを回すと、レーザーポインターの光が素早く動き、星やバットマンのシンボルを描くデバイス「laser show」の解説ムービーを作者のEvanさんが自身のYouTubeチャンネルで公開しています。作者の設計と3Dプリンターによって作られた歯車とカムが噛み合って動く様子と緻密な作成方法は思わず見入ってしまう完成度です。

Mechanical Laser Show - YouTube

ムービーの最初は、暗闇の中にレーザーポインターの緑色の光と歯車が組み合わさった緑色のデバイスが映し出されています。



ハンドルを回すと同時に、光の点が素早く動き出し……



星の形が描かれました。



ハンドルを回すのを止め、セットされていた歯車を別の歯車に付け替えます。



別の歯車をセット。



そして、レーザーポインターを元どおりにセット。



ハンドルを回すと、今度は別の模様が現れます。現れたのは、アメリカンコミックヒーロー、「バットマン」の模様、「バットシグナル」です。



別の歯車に換えると、今度はトランプマークの「クラブ」が現れました。



このデバイスは、「laser show」という名前で、ムービーを公開したEvanさんが設計し、3Dプリンターで出力して作成されたもの。ムービーでは、このデバイスの作動方法と設計、そして3Dプリント方法が語られています。



このデバイスの基本的な仕組みは、レーザーが繰り返し同じ軌跡を描くことで模様を残像として映し出すというもの。



この現象を発生させるには、1秒間に5回以上同じ模様を描かなければならないとのこと。



laser showの機構は全て機械式で、複雑な動きはすべて歯車とカムの組み合わせによるもの。2個のカムにのったレーザーポインターがカムの回転に合わせて動かされることで、壁に当てられたレーザー光が模様を描くようになっています。



パーツはすべて3Dプリンターで出力したものとなっています。元となった3Dデータは公開ページからダウンロード可能なので、自分で3Dプリンターを使ってlaser showの作成が可能とのこと。



作者であるEvanさんの説明によると、レーザーポインターは「カム」と「フォロワー」の機構を応用して動かされているとのこと。



カムの円周にある凹凸に合わせて、レーザーポインターが動くようになっています。実際のカムには、描きたい模様に応じて複雑な凹凸が作られています。



実際の機械では、このカムを二つ組み合わせることで複雑なレーザーの動きを作り出しているというわけです。



残像を生み出すためにはレーザー光が動くサイクルを1秒間に5回繰り返す必要があるので、laser showではクランクのハンドルからの入力ギアとカムの歯車のギア比を5:1に設定しています。



ムービーでは、ハンドルを回すと、レーザーポインターの先が星形の軌跡を描きます。



次は、カム自体の設計方法についての説明。Evanさんによると、この部分がlaser showを作る上で一番複雑でおもしろい部分とのこと。以下の画像の星はレーザーが星の形を描く時に通る軌跡を示したもので、星を描くために必要なポイント数が「35個」と設定されています。



レーザーの動きは、画像で表されている模様の矢印の部分、つまり頂上から始まります。



回転を始めると次に画像で表されている矢印の部分、つまり、頂点から右辺上にある次のポイント行くと仮定します。



この動きを繰り返して、座標を変換していくと、カムを作図できます。カムを作図するには、軌跡を2つのカムにそれぞれに出力して、作図しなければなりません。



Evanさんは、「数学」を用いることでこの軌跡をはじき出しています。ムービーでは数式を使って非常に細かく解説されていますが、簡単にまとめると「レーザーの動きは、2個のカムと光軸の3点を結ぶ三角形で表すことができる」ということになります。



以下の画像のように三角形の左の斜辺の長さは「レーザーペンの半径=rp」、「カムの半径=rx」とでき、直角三角形の方程式により、以下の画像の式が得られます。



次に、カムの回転角を青い矢印で仮定し、カムが回転する角度を角「Kx」とし、「∠B」は逆三角関数であるアークタンジェント(arctan)を用いることで算出できるとのこと。



カムが回転前のゼロ度の時を下に作図し、カムの回転する角度の角「Kx」は「Kx=2π+2π/n*i」。ゼロ度の時の「Θx」は「Θx=2π-Kx+∠B」と表せます。



最終的には以下のように不明な角度と座標を未知数とし、直交座標の式などを使うことにより、模様上のポイントの座標がすべてわかり、それらをカムの形状として出力することが可能。なお、もう片方のカム上のポイントを算出するには、いくつかの小さな変更と同じ数式を用いることで、Evanさんは2つ目のカムの形を算出可能と説明しています。



次は、laser showの完成度を上げる方法の解説がされます。



ここで取り上げるのは、「描きたい模様が大きくなったときに発生する問題の回避方法」です。



投影する形状が大きくなるにつれて、カムの半径と形は大きくゆがみ、このままでは大きな「くぼみ」や「ゆがみ」が生まれてしまいます。このゆがみは、レーザーとカムの間の摩擦を増加させ、動きを悪くするので、無視できません。



そのため、レーザーで映し出したい形状を大きくする時は、カムの形状は以下の画像のようにくぼみを持たない凸多角形に近い形にしたほうが良いとのこと。



最後は、3Dプリントの方法について少し触れていきます。



以下の表は、各パーツをどのように3Dプリントするかについての大まかな目安です。



Evanさんよると、パーツを3Dプリントした後、それらが完璧にな形で出力できていない場合は、ナイフで削って整えるのがオススメとのこと。



もちろん、laser showの作成は、3Dプリンターでの出力の他に、輪ゴムとレーザーポインターを購入しなければいけません。Evanさんは、両方を10ドル(約1000円)以下で購入できたとのこと。



Evanさん自身については、商取引関連のソフトウェア開発者で、機械工学に興味を持っている人物とのこと。なお、作成した3Dモデルのいくつかは、自分のThingiverseのアカウント上で公開しており、laser showの3Dモデルもそこからダウンロード可能です。