98年W杯では怪物ロナウドが初代『マーキュリアル』を着用した。写真:Getty Images

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 1996年にCBF(ブラジル・サッカー連盟)と契約した『ナイキ』は、当時スター街道を突き進んでいたフェノーメノことロナウドともパートナーシップを締結。フットボール界に本格参入すると、98年には陸上スパイクから着想を得た新スパイク『マーキュリアル』(「予測不可能な」の意)を発表し、大きな話題を呼んだ。
 
 まず目を引いたのが、そのデザインだ。まだブラックが支配的で、色付けもほぼ1色に限られていた時代にあって、シルバー、ブルー、イエローという斬新なカラーリングと宇宙を思わせる奇抜な絵柄は、まさに前代未聞だった。
 
 また、まだカンガルー皮など天然皮革が中心だった中で、後のスタンダードとなる合成皮革をいち早く取り入れたうえ、極薄プレートで従来では考えられないレベルでの軽量化にも成功するなど、実用性も革新的だった。
 
 デザインも機能面もとにかくイノベーショナルだったマーキュリアルは、その最初の着用選手であるロナウドが98年W杯で規格外のスピードとテクニックを利してゴールを量産したこともあり、一気に世界的な人気スパイクとなった。
 
 その後も「選手から最大限のスピードを引き出す」というコンセプトの下で様々な研究が進められ、02年にはついに200グラムを切る超軽量モデルが完成。同年の日韓W杯ではその最新作を履いたロナウドが得点王に輝く活躍で、セレソンを世界制覇に導いた。
 
 その後に「マーキュリアルの顔」の座を引き継いだのが、同性でスピードが武器と奇しくもフェノーメノとの共通点が多いクリスチアーノ・ロナウドだ。ポルトガルの偉才が世界最高のプレーヤーへとのし上がっていくのと歩を合わせるかのように、スパイクも年々進化。斬新なカラーリングと奇抜なデザインに加え、さらなる軽量化(いまや180グラムを切った)を実現し、吊り橋の構造をモチーフにした『フライワイヤー』、加速や素早い方向転換を助ける『ナイキ センステクノロジー』、ランニングシューズなどで成功した『ナイキ フライニット』の導入など機能面のイノベーションでも世間を驚かせ続けた。
 
 その間にはC・ロナウド以外にも、「世界一のプレーヤー」の後継者に相応しいネイマールをはじめ、ティエリ・アンリ、ズラタン・イブラヒモビッチ、フランク・リベリ、ディディエ・ドログバ、エデン・アザール、アレクシス・サンチェス、そして最近ではキリアン・エムバペと、コンセプト通りの“予測不可能な”動きを見せる名立たるスタープレーヤーたちがマーキュリアルを愛用。数々のスペクタクルを提供してきた。
 
 98年の衝撃から20年――。デザインと機能性で革命を起こし続け、それを着用する名手たちが違いを作り出してきたナイキのマーキュリアルは、こうして自他ともに認める世界有数のフットボール・スパイクとなったのだ。

【PHOTO】過去20年の『マーキュリアル』&着用したスター選手たち
 長きに渡っていわば「マーキュリアルの顔」に君臨してきたC・ロナウドは、自身の要望や意見をナイキに伝え続けてその進化に貢献しながら、各ラインで「CR」の名を冠した特別スパイクを着用。2015年からはそのキャリアの重要シーンからインスピレーションを受けた「CR7シリーズ」もリリースされ(現在は第5弾まで発売)、昨年末には5度目のバロンドール受賞を祝う特別モデルも制作された。
 一時期は『ハイパーヴェノム』を着用していたネイマールは、昨夏からプロデビュー当初に履いていたマーキュリアルに回帰。17年7月にはそのキャリアで印象に残る6つのゴールを星座で表現した『ナイキ マーキュリアル ヴェイパー XI NJR』が制作された。同年末には、ロナウドとの新旧フェノーメノによるコラボ版もリリース。ロナウドが履いた98年の初代モデル、ネイマールがA代表デビューした10年に着用したスーパーフライを融合している。