■「Google Lunar X PRIZE」計画

 「Google Lunar X PRIZE」計画は、非営利団体「X PRIZE Foundation」が企画し、Googleがスポンサーになって2007年にスタートした民間月探査計画だった。しかし、2018年1月23日X PRIZE Foundationは、2018年3月31日の期日までに計画を達成できるチームがいないと判断して、「計画未達成で勝者はいない」と結論付けた。

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 日本からは「HAKUTO」が参画し、インドのロケットで打ち上げることを目指していたが、インドとの交渉が難航し断念していた。国産衛星打ち上げ用小型ロケット「イプシロン」の完成が早ければと惜しまれる。賞金約20億円の獲得は夢と消えたが、これまで11億円の資金を集めてきた計画なので、引き続きGoogleなどの支援を要請しながら、計画の完遂を目指してほしいものだ。その節には是非とも国産ロケット・イプシロンの使用を考えてほしいと願う。

■リンドバーグの大西洋横断飛行は航路を開けなかった

 こうした国際的賞金レースを耳にすると、すぐに思い出されるのが1927年5月21日「リンドバーグの大西洋横断飛行」だ。オルティーグ賞(賞金25,000ドル)を獲得したリンドバーグはその後英雄としてたたえられたが、彼の成功は「単独大西洋横断飛行」であり、「推測航法」であったので、「大西洋横断航路開設」とは言い難い。

 その後、航空機の進歩はすさまじく、現状は皆さんご存知の通り、GPSや慣性航法で位置をリアルタイムにつかんで飛行し、国際航路でもミスはほとんど聞かれない。しかし、航空路線を「実用化」するには、幾度繰り返しても「成功」出来なければならないことは知れたことだ。しかし、リンドバーグの「大西洋単独横断飛行」は、彼自身が同じ装備で再び行っても、成功するとは限らないのだ。

 一方で、大西洋横断飛行はリンドバーグより以前から幾度も成功しており、リンドバーグの成功前後にも、いくつかのチャレンジがあったと記憶している。印象深かったのが、アムンゼンのチャレンジだった。3発機で天測航法、複数人での操縦など、航空路の開設をにらんだチャレンジだったが、パリに着くことはできなかった。しかし、アムンゼンのこれらの失敗は次の成功、つまり「実用化」に結び付くのであり、逆にリンドバーグの成功は「英雄」のなせる業、つまり「冒険」であった。

 その後、リンドバーグは活躍を続けるが、こどもの誘拐事件で大きな打撃を受けた。太平洋戦争中、民間人として日本のゼロ戦と渡り合って撃墜したと言われている。民間人であったので記録は抹殺されたが、「英雄」リンドバーグの伝説として語り継がれてきた。

■イベントではイノベーションは起きない

 月探査計画ではアメリカのアポロ計画が有名だが、民間による探査計画は今回が初めてであろう。賞金を懸けて募集する手法は、リンドバーグの時と同じだ。現在の世界の頭脳を集め、結果を目指すことに価値があるのだが、その成果と言えるのが、日本の計画でも見られる国際協調だった。

 一見、イノベーションを起こさせる機会として良いように見えるかもしれないが、「お遊び」に終わる可能性が高い。それはリンドバーグの時と同じように、成功しても「冒険」という価値しか残せない可能性が高いのだ。

 イノベーションは「文化レベル」ともいうべき社会の下地が必要で、技術だけが吐出していても成り立たないのだ。テスラが陥っているように、企画やファイナンスなどが吐出しても、「製造」は「品質」が必要で、それには社員の「文化レベル」とでもいうべき「心の在り方」まで整わないと達成できない。自動車製造が成立する品質レベルは、1/100%の不良率であり、限りなくゼロに近づける努力ができる人間集団でないと、「安心して乗れる安い車」はできてこないのだ。

 「オリンピック」で経済再建、「スター選手」でゴルフ市場の再振興など、イベントに頼る発想では解決がつかないことを知るべきだろう。

 「ゴルフ市場衰退」の現実、「EV・AI・IoTによる革新」などに対応できるのは、周到な準備である。テスラに欠けているところは数あるが、命のかかった自動車製造は、マネーゲーム・イベントではないのだ。