パートやアルバイトというような非正規雇用が増え続けている現代。いわゆるフリーターと呼ばれているアルバイトやパート以外に、女性に多いのが派遣社員という働き方。「派遣社員」とは、派遣会社が雇用主となり、派遣先に就業に行く契約となり派遣先となる職種や業種もバラバラです。そのため、思ってもいないトラブルも起きがち。

自ら望んで正社員ではなく、非正規雇用を選んでいる場合もありますが、だいたいは正社員の職に就けなかったため仕方なくというケース。しかし、派遣社員のままずるずると30代、40代を迎えている女性も少なくありません。

出られるようで、出られない派遣スパイラル。派遣から正社員へとステップアップできずに、ずるずると職場を渡り歩いている「Tightrope walking(綱渡り)」ならぬ「Tightrope working」と言える派遣女子たち。「どうして正社員になれないのか」「なぜ派遣を選んでいるのか」を、彼女たちの証言から検証していこうと思います。

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今回は、都内で派遣社員として働いている川辺真紀さん(仮名・28歳)にお話を伺いました。少し明るめのブラウンのロングウェーブを後ろでひとつにまとめ、えんじ色のVネックセーターに細身のグレーのパンツを合わせていました。ぱっちりとした目元が印象的な、ナチュラルメイクに、口角が上がった表情からは親しみやすさがにじみ出ています。

「実は4月から派遣ではなく、派遣先と直接雇用になる予定なんです」と語る真紀さん。現在は、町田市にある実家で公務員の父と専業主婦の母と住んでいます。

「元々は、母は自宅のスペースを使って近所の子供たちにピアノを教えていたんです。そういう環境で育ったので、私も4歳からピアノを習いに行っていました」

彼女は、音楽科のある大学を卒業しています。

「ピアノ専攻で音楽技術や、講師になれる資格も取得したのですが就職には役立たなかったです」

子供の頃からピアノを習い、漠然と「音楽に関係する仕事がしたい」と思っていました。

「中高では、手をケガしたくなくて運動部には入らなかったんです。合唱部に所属して、伴奏を担当していました」

中高と家から近い公立校に通いながら、ピアノのレッスンに通うのは続けていました。

「音大はお金がかかるからと親から言われていたので、高校まで公立に通いました。大学は私立の音楽科がある学部に進学しました。卒業の時に、優秀な生徒が貰える賞に選ばれて表彰されました」

大学では、勉強熱心で真面目な姿が評価されましたが、就職活動はうまくいかなかったそう。

「ピアノの発表会には定期的に出ていたのですが、先生から“表現力が足りない”とか、“練習の方が上手かった”と言われていました。私はプロには向いていないんだなって思い、ピアノの講師職で就職先を探しました」

ストレス発散のため、ピアノを弾きながら歌うことも。

母親の影響もありピアノ講師を志しますが、募集数が少なく仕事が見つかりません。

「期間限定の時給制のバイトでならピアノ講師の仕事も見つかったのですが、フリーターになるのは不安だったので、音楽教室に事務職で就職しました」

パソコンのスキルは、キーボードを両手で打てないレベル

音楽教室の事務職は、正社員ではなく有期雇用の契約社員でした。

「最長3年という契約でした。最初は3年って長いなって感じていたのですが、働いていたらあっという間でした」

音楽の知識はありましたが、業務に必要なパソコンのスキルが足りずに苦労します。

「事務として働くつもりはなかったので、エクセルやワードが使いこなせずに苦労しました。業務内容は、生徒さんや受講希望者の対応もあり、半分接客業みたいなところがありましたね」

仕事に不満は感じていなかったですが、大学の同級生たちと卒業後に会う機会があったのが、転職のきっかけになります。

「大学のOBやOGたちが定期的に演奏会をやっているのを観に行ったんです。そうしたら、みんなプロの演奏家を目指して頑張っていたり、裏方でも音楽の仕事をやっているのを見て、自分はどうしようか悩んだんです」

周りが夢に向かって努力する姿を見て、将来を考えるようになります。

「私の場合は、きっぱりと音楽の仕事を諦めて次の仕事を見つけないと、就職ができないって危機感を持ったんです」

音楽教室の仕事は、生徒の親から「ありがとう」と言われるとやりがいがありましたが、他の仕事ができなくなる不安を抱えていました。

「私は、ピアノや音楽の知識以外はスキルがないので、教室で働いている間になにか他のスキルを身に付けようと思いました」

パソコンに苦手意識があったため、勉強を始めます。

「教則本を買ってみて自分でやろうとしたのですが、うまくできなかったんです。最初は、両手でかな変換で文字を打つのもできないレベルでした」

その後独学をやめ、パソコン教室に通い始めます。

「休みの日にパソコン教室に通いました。どうも入力業務が苦手で遅いみたいですが、その分、入力の正確性が高いみたいだったので、ミスが少ないようにするのを目指しました」

通っていたパソコン教室に、派遣会社の案内が置いてあり登録をしてみます。

「スキルチェックがそのまま教室の結果を使えたので、登録をしてみました。ちょうど仕事の契約が2年を超えていたので、新しく仕事を探そうと思っていたのでタイミングが良かったんです」

音大卒から正規雇用を目指して、奮闘!派遣から契約社員へ。〜その2〜に続きます。