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●インディゲームのすすめ

「Minecraft」と「ねこあつめ」「Brain Wars」。これらのゲームの名前を一度は聞いたことがあるかもしれない。実はこれらのゲーム、いずれも非常に小規模なチームによって作られた。Brain Warsのトランスリミットは昨年10月にも取り上げたが、この会社の従業員数にいたってはわずか20名だ。

トランスリミットや、ねこあつめのヒットポイントなどを支援する、グーグル Google Play Apps & Games コンテンツ開拓担当 ゲーム部門 日本統括部長を務める金 清司氏は、「スモールチームの可能性を信じて推すのが私たちの仕事だ」と話す。

○インストール率が数十%向上する「ABテスト」のすすめ

アプリ調査会社のApp Annieが1月25日に公開したレポートでは、2017年第4四半期におけるGoogle Playのアプリダウンロード数はグローバルで190億回以上と過去最大を記録した。この数は、iOSのApp Store比で145%以上の差だという。こうした好調なアプリマーケットも背景に、Googleは2月1日から「INDIE GAMES FESTIVAL 2018」を開催する。

3月25日の受付締め切りまでに応募された、2017年1月1日以降に公開されたゲームアプリ(あるいは2018年配信予定のもの)を一般参加のゲームファンと審査員の投票で優秀なゲームトップ10、トップ3を決める。参加資格者は、個人からグループまでさまざまだが、上場企業や31名以上の正社員がいる企業は参加できない。

審査ポイントは4項目で、

Innovation / 革新性

Fun / 楽しさ

Design / デザイン

Technical & production quality / 技術力と品質

だという。金氏は、「とにかく、いいものを作っていただければ(笑)。フェスティバルで最終選考に残ったものは、ストアの特集コーナーなどで応援するようにする」と語る。Googleは欧州や韓国ですでにフェスティバルを開催済みで、日本では今回が始めて。金氏はこれまでも、さまざまな開発者をサポートしてきたが、日本のベンダーには「プラットフォームをうまく使いこなしてほしい」と話す。

Android端末は全世界で20億台以上がアクティベーションされており、アプリの決済手段もクレジットカード以外に携帯キャリアの収納代行決済、ギフトカードなど多岐に渡り、新興市場でも収益化の環境が整いつつある。「例えば日本ではキャリア課金やギフトカードが人気であり、欧州はPayPal決済が多い一方で、ドイツは日本と同じ現金文化のためギフトカードが人気。そういった多様な決済環境が利用を後押ししている」(金氏)。

また、収益化だけではないビジネス面のサポートもある。Google PlayではWebで当たり前の「ABテスト」を実装した。同じアプリでも見せ方を簡単に変えられることで、コンテンツ訴求の最適解を見いだせる機能だ。

「国内向けはもちろん、特によく効くのが海外。ストア上のすべてのアセットがABテストに対応しており、掲載するスクリーンショットや説明文などを逐一変えられる。国内の感覚でビジュアルや文章を掲載しても、海外ではその好みがガラッと変わる。コンバージョン率が数十%上がる、といった例もざらにある。私たちのプラットフォームでテストを行い、その他のプラットフォームにも適用していく、という使い方も開発者の方々はされている」(金氏)

また、もう一つ海外を狙う便利なツールが「User Acquisition Performance Report」だ。国別に、何人がアプリ詳細ページを訪れてインストールしたのか、購入したのか、2度目の課金をしたのかなどが、ファネル形式で確認できる。さらに、同ジャンルのアプリの平均コンバージョン率などとの比較も可能で、「その成績をもとに、開発コスト・人的リソースをどこに配分するのかといった判断も可能になる」(金氏)という。

○「低コスト」ではなく「多くの人に届ける」すすめ

かつては低コストでゲーム開発が可能になるとして人気を博したスマートフォンゲームだったが、「現在のモバイルゲームの予算規模は、決して小さいとは言えない」と金氏は認識を示す。最新デバイスでは、かつての携帯ゲームの枠を超えたクオリティの3D CGが動作し、5年以上に渡るスマートフォン時代がユーザーの見る目も変えたという。

「ここのところスモールチームの方と話していてよく聞くのは、『より多くの人に自分たちの作品を届けられる』ということ。いちばん身近なデバイスであるスマホ、だからユーザーに届けやすい。低コストでという理由ではなく、プラットフォームが持つ価値を認識していただいている」(金氏)

そのため、冒頭に触れたトランスリミットやヒットポイントのように、スモールチームであっても海外ユーザーに親しまれる、あるいは最初から海外ユーザーを狙ったゲーム作りが増えているという。日本でも、中国や韓国のゲームメーカーが参入しているが、まさに「ボーダーレスのグローバル経済」を体現しているプラットフォームの最たる例と言ってもいいだろう。

「韓国のネットマーブルなど、確かに海外ベンダーが日本に上陸するケースはある。(日本企業は海外進出が遅れているのか?という筆者の問に)私の感触では、日本のゲーム会社が特に遅れているということはない。インディゲームではないが、バンダイナムコエンターテインメントのドラゴンボール ドッカンバトルは、フランスやアメリカなどでストア1位を取り、ほかにも任天堂のファイアーエムブレム、コナミの遊戯王など、日本のコンテンツが世界でも強さを見せつけている。IPタイトルメインだが、好調だと思う」(金氏)

既存IP以外でも、ねこあつめのヒットポイントが新たなゲーム「旅かえる」を昨秋にリリースしたが、日本語版のみながらプロモーションなしで、香港や台湾のGoogle Playで1位、5位を獲得。口コミでじわじわ勢力を拡大したねこあつめの勢いそのままに開発者にファンが根付いた格好だ。

●ローカライズのすすめ

ただし旅かえるのヒットは稀有な例。「まずはその国の文化や自分たちのアプリの親和性をしっかり考えた方がいい」と金氏は語る。ねこあつめも、英語版では猫の名前を直訳するのではなく、現地のニュアンスを取り入れるカスタマイズを行っている。

「グローバルを狙う場合は、言語性の排除やコンテンツが自動生成されるものが工数を考える上でも重要。先ほど話したネットマーブルは、日本のためにセブンナイツのホームUIをシンプルにした。韓国や中国はPCゲーム文化が定着しているためコマンドが並んでいる方が好まれるが、日本はキャラクターにフォーカスした方がいい。そういうカスタマイズは大切だ」(金氏)

プラットフォーマーとして開発者たちに望むことは何かと言えば、やはり日本が長年培ってきたゲーム産業のポテンシャルだと金氏。

「ゲーム産業の歴史、そして人材が多く日本にはある。例えばVRでは才能豊かな方々が我先にと取り組んでいるし、私たちもDaydreamを日本でもリリースした。新しいプラットフォームには新しいIPが生まれるし、エコシステムが動くと考えている。ARとあわせて新しい領域へ挑戦される方をサポートしていきたい」(金氏)

ただ、Google Playにも弱点はある。冒頭のApp Annieのレポートによれば、2017年第4四半期におけるアプリ内消費額が、iOSのApp Storeはグローバルで115億ドル(約1.26兆円)と、Google Playの2倍近くに及んでいた。

購買力の格差について金氏に尋ねると「デバイス数のリーチは圧倒的に多く、エマージング・マーケットではかなりのシェア差があるし、成長率も力強いものがある。また、ユニークなところではユーザーの傾向の違いがあり、あるジャンルのゲームではGoogle Playの方が相性がいいといったケースもある。先ほどのストアのテスト環境など含め、私たちはきめ細かにサポートできるし、成功事例の共有も常に行っている」と話した。

金氏は最後に、インディゲームを作るスモールチームに対して「ゲームに答えはないし、トレンドを追うのではなく、ぜひ作り上げてほしい」とエールを送った。

「スモールチームは、『これが作りたい』という独創性やクリエイティブ性の高い、作り手の人柄が強く出ている。そういうゲームには熱狂的なファンが付きやすい一方で、スマホゲームというライト層も取り込みやすい下地がある。シンプルで、グローバルに飛び出していける可能性があるプラットフォームをどんどん使ってほしい。そのために私たちもサポートしたいし、それが結果として、ユーザーの喜びにつながりますから」(金氏)