東大・京大生が選んだ「就活人気100社」

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2018年3月の本格解禁まで駆け足で進む新卒採用市場。日本を代表する精鋭たちは今、どこの会社を目指しているのか。最新事情をランキングとともに解説する。

18年卒の全国の一般大学生を対象にしたマイナビ・日本経済新聞の調査では、文系では全日本空輸、JTBグループ、日本航空、三菱東京UFJ銀行、東京海上日動火災保険が、理系ではソニー、味の素、資生堂、明治グループ、サントリーグループが上位に並んだ。しかし、今回東京大学京都大学就活生のみを対象にしたランキングでは、上位にまったく異なる顔ぶれが並んだ。彼らは今、どこの会社を目指しているのか――。

■2018年就活 東大・京大生に人気の企業100社全部見せます

19年春卒業予定の学生を対象にした今回の調査で、東大・京大の就活生に最も人気が高かったのはマッキンゼー・アンド・カンパニー。世界を代表するコンサルティングファームだ。

近年、東大や京大の学生の間では外資系コンサルタントへの就職人気が高まっている。今回のランキングでも上位には、マッキンゼーのほかにもボストン コンサルティング グループ(BCG)やアクセンチュア、ベイン・アンド・カンパニー、A.T.カーニーなどが名を連ねる。

ワンキャリアの執行役員兼メディア責任者の北野唯我氏は、就活生やインターン生へのヒアリングなどから就活生の動向を次のように解説する。

「近年、かつては安泰とされた日本の大手企業の不祥事が続々と発覚しています。会社や世の中がどう変化していくかわからない不安から、いずれは転職することを考える学生も増えている。そのため、就職先にスキルアップや企業のネームバリューを求める傾向も強くなっています」

さらに外資系コンサルティング企業が人気の理由をこう話す。「日系の大手企業に比べて、短期間でスキルアップできる外資系のコンサルティング企業に注目する学生が増えています。また、コンサルタントは、仕事を通じて幅広い業種の人と接することができ、他業界の仕事を覗き見することができる。仕事をしながら多くの業界・業種の情報を集め、転職する際の参考にしようという側面もあるようです」。

外資系コンサルタントは、東大、京大のみならず早稲田、慶應、GMARCH層(学習院、明治、青山学院、立教、中央、法政)からも幅広く人気を集める。「ただし、学生の間ではマッキンゼーやBCGは『東大・京大など最上位大学』の学生が選考を受けるレベルの高い企業、と認識されている。一方で、アクセンチュアや野村総合研究所は、幅広い大学の学生が志望します。コンサル業界自体がインターンも含めて採用時期が早いことから商社や金融、メーカー志望層も受けるうえ、マッキンゼーやBCGに比べて採用の枠が多いことも人気の理由の1つになっています」(北野氏)。

■日系では商社が人気だが「いずれ転職」

ランキングでは外資系コンサルティング企業に加え、P&Gジャパンが9位、ユニリーバ・ジャパンが27位と外資系メーカーの人気の高さも目をひく。マーケティングやロジカルシンキング文化で有名なP&Gは、企業方針に「リーダーシップ」「オーナーシップ」「勝利への情熱」を掲げ、若手にも裁量権を持たせるなどして自己成長の機会を与えている。こうした社風も東大・京大生には魅力に映っているのだろう。

日系企業のなかで人気が高いのは商社だ。特に五大商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)への人気は今も健在。「商社人気の背景には『学生のグローバル思考』『高い給料水準』があります」(北野氏)。近年、三菱商事は採用ランキングで圧倒的な人気を誇り、五大商社のなかでは常に1位をキープしている。ここ2〜3年で変化があったのは、伊藤忠商事が三井物産を大きく引き離し、業界2番手として認識されるようになってきたことだ。「好調な業績と、それにともなう高いボーナスが、学生には魅力に映っています」(北野氏)。

ただし、その序列は関東と関西とでは異なることもあるという。住友商事のある若手社員は、こう明かす。「住友商事はもともと大阪で創業した会社のため、関西では五大商社のなかでも特に信頼感がある。住友商事に入社すると、家族や親戚に伝えたときには大変喜ばれました」。

注目すべきは、学生が日系の大手企業を志望する理由が、一昔前とは変化していることだ。親世代なら、大手企業に入れば老後まで安心と考えていたはず。しかし、近年は定年まで働くつもりで入社する学生と、2〜3年で転職や独立することを前提にしている学生とに二極化しているのである。しかも後者のほうが増えてきており「大手企業に入るのは、次にステップを踏むためのファーストキャリアとして捉えているか、あるいは、特にやりたいことが現時点では見つかっていないので、可能性を最大化するため、と考えているようです」(北野氏)という。

■面接質問「日本にサッカーボールは何個あるか?」

もう1つの変化が、16年から17年にかけての、“働きやすさ”や“ホワイト企業”への意識の高まりだ。その端緒になったのは15年に起きた電通の若手社員過労死事件。ランキングでも広告業界の人気は急落。16年のランキングでは電通が14位、博報堂DYグループが22位に位置したが、17年は電通が39位、博報堂が38位へと転落している。ある大学院生は「政府による“働き方改革”の動きもあり、世の中の動きがわかっている学生は、一昔前に流行したコピーの『24時間戦えますか』なんていうマインドはもう持っていない。男性も、付き合っている彼女や婚約相手に頼まれてワーク・ライフ・バランスの取り方を考えるようになってきている」と話している。

加えて、北野氏はベンチャー企業の今後の可能性についても言及する。「成長途中のベンチャー企業に身を置くことが、後々大きな価値となることもあります。たとえば、かつてヤフーが企業として飛躍を遂げた1997〜99年当時に働いていた人というのは、ベンチャーの成長と成功のノウハウを知っている人間として、現在の転職市場でも引く手あまたです」。終身雇用神話が崩壊しつつある今、学生に人気の企業も、親世代とは大きく変化してきているのだ。

学生が志望する企業が変遷してきているのと同時に、選考方法にも新しい手法が取り入れられつつある。大手商社や日系の大手企業から複数内定をもらった男子学生によれば、エントリーシートでふるいにかけられることはほとんどないという。その背景には、ノウハウ本が増えてエントリーシートの書き方が画一化し、差がつかなくなってきていることが挙げられる。その代わりに、面接の比重が高まっている。そこで、面接手法に、2つの新しい方法が登場した。

1つが外資系コンサルタントや外資系金融で用いられる「フェルミ推定」だ。これは、「日本にサッカーボールは何個あるか?」「東京で消費されるペットボトルは1日何本か?」など、限られた知識から、いかに論理立てて結論を導き出せるかが問われる。

もう1つが「ケース面接」。ベンチャー企業やコンサルティング業界・投資銀行で用いられる場合が多く、「日本への観光客を10年で2倍にするには?」など、こちらも明確な答えのない問いが出される。フェルミ推定と同様に論理的思考力と、自分の思考の過程を説明するプレゼン能力が問われる内容だ。

人気企業も、その選考方法も日に日に変わる就活市場。「自分の頃はこうだった」とトレンドを押さえずに子どもの就活に口を出してしまうと、見当違いなアドバイスをすることになりかねない。対等な目線で、最新状況を見極める姿勢が求められている。

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▼親世代には理解不能な最新就活事情

・トヨタよりもマッキンゼー
日系の大手企業よりもコンサルティング会社をはじめとした外資系企業に人気が集中。入社後3〜4年で転職や独立を考えている学生が増えてきているため、日系企業に比べて短期で集中的にスキルアップできる外資系企業が注目されている。

・トップ企業内定者は3年春から就活開始
外資系企業は大学3年生の春から、日系企業でも夏や秋にはインターンを開始するケースが多い。本選考も外資系企業、ベンチャー企業は大学3年の9〜12月に選考のピークを迎えるため、早い段階から動きだすことで就職活動を有利に進められる。

・リクナビよりもSNSで情報収集
学生がリクナビ、マイナビを中心に活動していたのは一昔前の話。最近ではこれらのサイトよりもツイッターや、みんなの就職活動日記(みん就)といった生の声が拾えるSNSや口コミサイトから情報収集する手法が主流になっている。

・「選考会」化するインターン
インターンは、選考直結型と本選考に影響しないものとに分類される。選考直結型はもちろんだが、直接採用につながらない場合でも社員に好印象を与えられると選考過程が免除されるなど、優遇措置がとられるものがあるので万全の準備をして臨みたい。

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■東大・京大生 就活人気ランキング1〜50

■東大・京大生 就活人気ランキング51〜100

(ライター 吉田 彩乃 写真=PIXTA)