画像提供:マイナビニュース

写真拡大

●ソフトウェア・ディファインド・コンセプトで家電を変える

日立アプライアンス 取締役社長 徳永 俊昭氏

日立製作所は2月から、家電の新コンセプト「ひとりひとりに寄り添い、暮らしをデザインする」を打ち出し、新宣伝キャンペーン「ハロー!ハピネス」を開始する。

日立アプライアンス 取締役社長の徳永 俊昭氏は、「グローバル社会の構造が大きく変化し、生活が多様化するなかで、『家電はそのままでいいのか』、『ひとつ先に進まなくてはいけないのでないか』と考えていた。その答えに、気づかせてくれたのがお客様の声だった」と切り出す。

その声とは「家事の時間は夜しか取れない」や「毎日の弁当は週末に作り置きしている」といった生活実態のものから、「何年たっても愛着を感じられる家電がほしい」や「まとめ買いに対応した家電がほしい」といった日立への要望までさまざまだ。このことから日立として「こうした生活課題の声にもっと耳を傾け、真摯に向き合い、ひとりひとりに寄り添ったうれしい暮らしを実現したいと考えた」と徳永氏は語る。

こうした課題の解決には、単なる製品を提供するだけでなく、仕組みやサービスを含めて提供していくことが必要であるという結論にたどり着いた。これが、新たな家電のコンセプトにつながったという。具体的な取り組みとして、「顧客視点での商品開発強化」と「毎日の暮らしを彩るデザイン価値の創造」「デジタル技術の活用により新たな価値を提供」の3点をあげる。

○2018年度にも2,3製品の"コネクテッド"家電を投入

「お客様の視点での商品開発をさらに強化」では、国内にある生活ソフト開発センターと、2017年4月にタイに開設したグローバル商品開発センター、2017年10月に設立したVoCセンターに加え、2月からは外部機関との協同研究を行う生活マーケティング機能の強化を進め、顧客の声を吸い上げる活動を加速。商品やサービスに反映させる。

「毎日の暮らしを彩るデザイン価値の創造」では、高品質デザインの採用することにこだわる。「これまで当社が取り組んできたプレミアム商品は評価されているが、デザインがいいから日立を購入するという声はなかった。今後は、外部デザイナーとのコラボレーションを実施し、『シンプルだけど、思わず触りたくなる(Less but seductive)』というデザインを採用していく」(徳永氏)とした。

「デジタル技術の活用により新たな価値を提供」では、コネクテッド家電を順次販売。最新のソフトウェアをダウンロードすることで使い勝手や機能性を向上させる「ソフトウェア・デファインド・コンセプト」を採用するほか、コネクテッド家電をタッチポイントに新たなサービス事業の立ち上げに取り組む。

徳永氏はそれぞれの商品カテゴリーで必ずコネクテッド家電を用意し、「基本的にはコネクテッドでいくことを考えたい」と強調する。それを前提に、スマホ連携やAIスピーカーへの対応強化のほか、社外パートナーとの連携による新サービスの提供も視野に入れるという。

「今の洗濯機は節水に振り切った機能となっているが、水はもう少し使ってもいいし、時間が少しかかってもいいが、子供の泥汚れをしっかり落としたいというニーズに対して、泥汚れ専用モードを用意して、これを専用で使えるようにするといった機能を考えたい」(徳永氏)

同様に、冷蔵庫でも冷蔵室を冷凍室として使うソフトウェアを提供するといった新しい冷蔵庫のあり方も考えているという。「もちろん、実現のためには商品企画を詰めたり、技術的なハードルを超える必要もある。技術の日立に恥じない形で詰めていきたい」(徳永氏)。

新コンセプト製品の第1弾では、2月下旬に大容量冷蔵庫「真空チルド R-HW60J」とコネクテッド家電のロボットクリーナー「minimaru RV-EX20」、IHクッキングヒーター「火加減マイスター HT-L350KTWF」を投入する。また、来年度中にも2、3商品のコネクテッド家電を追加する計画だ。

宣伝キャンペーンのキーワード「ハロー!ハピネス」は、テレビCMなどのマス広告に加えて、デジタル広告を強化。WebやSNSを通じて、どのようなハピネスが一人ひとりの生活にもたらされるのか、それを生み出す日立の技術はなにかを、多様な生活シーンにあわせて提案するという。

イメージキャラクターには引き続き嵐を起用し、8年に渡って「エコにたし算」で行ってきた機能軸を中心とした訴求から、「生活シーンを軸にした新たな価値の訴求」へと転換することになる。家庭内だけでなく、人や家、街、社会がデータで結ばれ、生活の全方位に製品、仕組み、サービスを提供することで、家電を進化させるという狙いが伝わるのか。

●製品・宣伝・組織のすべてを刷新

製品作りと宣伝イメージの刷新だけでなく、ラストワンピースが、これを実現するための組織づくりだ。

日立製作所は2017年4月に、生活・エコシステム事業統括本部を設置。家電および空調を担当する日立アプライアンスと、家電製品の販売およびサービスを担当する日立コンシューマ・マーケティングを傘下に置いた。この組織で目指すのは、製販一体体制の実現だ。

日立の家電事業は、歴史的にモノづくり側が主導権を握る傾向が強い。だが新体制では、統括本部のトップに日立コンシューマ・マーケティングの社長を務めていた中村晃一郎氏が就任し、製販一体体制の推進を裏付けた。中村氏は「お客様の声を聞くためには、製販一体の体制が不可欠。この体制でなければ、360°ハピネスは成し得ない」と語る。

日立製作所全体の方向性は、社会イノベーション事業を主軸におき、これによって「社会の課題を解決する企業」になることを目指している。では、家電で取り組む社会ノベーションとはなにか。

「家電を使用する生活者の課題を解決することである。日立の家電事業は、『ヒューマンセントリック ソーシャルイノベーションビジネス』に取り組み、生活課題を解決する企業になる。これは、IT、OT、プロダクトを持つ日立だからこそ実現できるものだ」(徳永氏)

「日立の新しい家電がはじまる」というのが、新コンセプトによって目指す姿。日立の家電がどう変わるのか、それは現時点でぼんやりとしたものだが、今後の数年に渡る日立の家電の変化に注目しておきたい。