(写真提供=SPORTS KOREA)セラ・マリー監督

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(写真提供=SPORTS KOREA)セラ・マリー監督


平昌五輪のアイスホッケー種目に、韓国と北朝鮮が南北合同チームを結成して出場する。

南北合同チームが五輪に参加するのは史上初めてのことだけに、韓国のみならず日本でも関心が集まっているが、最近は、チームを率いる外国人指揮官の名を耳にすることも増えたのではないだろうか。

チームの総指揮を務めるのは、セラ・マリー監督。

1988年4月28日生まれの29歳。米国とカナダの二重国籍を持っている。

2014年9月から韓国代表の監督を務めてきた彼女は、南北合同チーム結成によって一躍、脚光を浴びているが、その人物像はあまり知られてない。

歴史的な南北合同チームを指導する外国人監督は、いったい何者なのか。

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“親の七光り”で監督に?

そもそもマリー監督は、韓国代表の指揮官の座に就いた当時、監督経験がほとんどなかった。

また、アイスホッケーの名門であるミネソタ大学出身ではあるが、選手として名を轟かせたわけでもなかった。

まして、当時まだ25歳。韓国代表の中には、マリー監督より3つも歳上の選手もいた。

経験も乏しい若い指導者に代表チームを任せることは、韓国にとってはかなりの冒険だった。

韓国メディア『中央日報』も、「監督経験もない20代中盤の外国人女性監督を招聘したのは、破格のことだった」と当時を振り返っている。

それでも韓国がマリー監督にチームを託したことには、彼女の出自が関係していた。

韓国アイスホッケー協会のヤン・スンジュン専務は、こう話している。

「マリー監督の父であるアンディ・マリー氏は、かつてカナダ代表の監督を務めた世界的な名将です。兄弟も、プロアイスホッケー選手として活躍しています。マリー選手は、幼い頃からアイスホッケーに接してきたので、自身だけの哲学を持っています」

つまり、韓国は、マリー監督の経験や実績ではなく、幼少期から培ってきた感性やセンスを信じて監督を任せたということだろう。

また、マリー監督が韓国に渡ったのも、父の指名がきっかけだった。

男子代表チームを率いるペク・ジソン監督が、もともと親交のあったアンディ・マリーに女子代表の監督の推薦を依頼したところ、娘のマリー監督を推したのだという。

指導に自信が持てず父と毎日電話

極端な言い方をすれば、“親の七光り”のように思えなくもない経緯だが、マリー監督は実際に韓国代表で実績を残している。

例えば、昨年2月に札幌で開かれた冬季アジア大会では、韓国女子代表に、1999年の初出場以来、初となる勝利をもたらした。この大会、韓国は3勝を挙げている。

さらに、同年4月の国際アイスホッケー連盟(IIHF)世界選手権ディビジョン2グループA(4部リーグ)では、5戦全勝して見事優勝を遂げた。

これは、国内に実業団チームもなく、“アイスホッケー不毛の地”といわれてきた韓国にとっては、快挙といってもいい成績だ。

就任初期は指導に自信が持てずに毎日、父に電話をかけて1時間以上もアドバイスをもらっていたというが、マリー監督が体系的なトレーニングを新たに導入してチームに変化をもたらしたからこそ、韓国女子代表が強化されたことは間違いないだろう。

北朝鮮選手も信頼を寄せる

だからこそ気になるのは、今回の南北合同チームのことだ。

マリー監督は、合同チームの結成をどう受け止めているのか。外国人監督であるだけに、南北政府の政治的な決定は、なおさら受け入れがたかったのではないか。

合同チーム結成が決まった直後の記者会見で、マリー監督はこう話していた。

「五輪が目の前に迫っている状況でこのような話が出たことは衝撃でした。最初に合同チームの話を聞いたときは、韓国の選手に大きな被害が及ばないかと心配でしたが、各試合に出場させる北朝鮮選手が12人から3人に制限されたと聞き、少し落ち着きました。

政治にチームが使われることはつらいですが、私たちが決めることではない。選手たちには、無駄なことにエネルギーを使わず練習に集中しようと伝えました」

合同チーム結成には少なからずマリー監督も動揺したということだが、それでも現在は、覚悟を決めてチームを指導している。

すでに1月25日から北朝鮮選手が合流し、合同チームで練習が進められているが、マリー監督の指揮について、韓国アイスホッケー協会関係者はこう評価している。

「マリー監督は、自身の確固たる哲学を貫いています。合同チームが招集された初日から、確実に主導権を握って、計画した通りにチームを指導しています」

北朝鮮選手も、マリー監督には信頼を寄せているという。現地記者はこう話している。

「指導者としての経験が多くないので、権威を振りかざすこともなく、あくまで合理的。女子選手たちはカリスマ的な監督よりも、一から十まで細かく準備する監督を好みますから、北朝鮮選手たちもマリー監督のそうした指導法を受け入れているように見えます」

つまり、マリー監督経験の少なさは、チームにとってむしろプラスになっているわけだ。

はたして、マリー監督率いる南北合同チームは、平昌五輪でどのような活躍を見せるだろうか。

大会本番では、若き指揮官の采配にも注目したい。

(文=S-KOREA編集部)