Photo by 金壮龍

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社員7人の町工場ながら「完全残業ゼロ」を続けている「吉原精工」。最終回は「頭の99%を占めている」営業のことについてうかがった。現在同社に営業担当の社員はおらず、営業の重要なツールとしてホームページを活用している。そこから年間約10〜30件ほどの新規依頼があり、リピートオーダーにつながっている。このホームページには吉原精工の考え方が詰まっている。『町工場の全社員が残業ゼロで年収600万円以上もらえる理由』(ポプラ社)も上梓した吉原会長の儲けの秘密とは。(吉原精工会長、吉原博)

ホームページで「わがままな条件」を明示するのはなぜか

現在吉原精工には「営業担当」の社員はいません。
それでもコンスタントに新規の問い合わせがあり、年間約10〜30件ほどの新規依頼があり、そこからリピートオーダーにつながっています。

吉原精工の営業面を支えているのが「ホームページ」です。ホームページは吉原精工にとって重要な新規営業ツールとなっています。
ホームページはただ公開していればよいというものではありません。このホームページを見て、お客様が「吉原精工に連絡してみよう」「仕事を頼んでみたい」と思ってくださるものでなければ、意味はありません。

実は最初にホームページを作るとき、私はいろいろな会社のホームページを見て「いいとこ取り」をしようと考えていました。そこで研究のためにたくさんのホームページを見る中で気づいたのは、多くのホームページが「威張っている」ということです。
「ウチの設備は最新のものをそろえています」
「盤石の組織体制で仕事にあたっています」
「広大な敷地に建つ工場をご紹介します」
正確には記憶していませんが、こうした「ウチはすごいですよ」と訴えるような記述が非常に多かったように思います。

しかし、こうした「設備自慢」「工場自慢」「会社自慢」を並べても、どこの会社でも「自慢」は載せていますから、結局はホームページの印象が似たり寄ったりになりがちです。
それに、いままさに困っているお客様が「威張っている」ホームページを見て「ここなら相談に乗ってくれそうだ、相談してみよう」と思うだろうか、とも感じました。

そこで、私はそれまで考えていたホームページの中身をいったんチャラにして、吉原精工ならではのホームページを作ることにしたのです。

ホームページは、トップページから、「はじめまして」「ないよう(会社概要&設備)」「うまい」「やすい」「はやい」「さーびす」「ごめんなさい」「さんぷる」「おといあわせ」「高校・大学」のページに飛ぶことができるようにしています。

<吉原精工ホームページ>
http://www.w-cut.com/

このうち「うまい」「やすい」「はやい」は、吉原精工が提供できるサービスの特徴を端的に表しています。

「うまい」とは、製造業にとっては「高品質」という意味です。「やすい」は納入価格が安いことを表しています。そして「はやい」は短納期であること、私はこの3つがお客様に満足していただくための三原則だと考えています。これらは私がお客様の立場で吉原精工について、何を知りたいのだろうかを抜き出して並べてみたものです。

品質が高いこと、できるだけスピーディーに対応し納期を守ることは製造業として当然といえます。「安かろう、悪かろう」は論外で、ほかの会社より品質面で劣るということはあってはならないのです。
ですから、より努力する余地があるのは「やすい」というセールスポイントです。そして、安さを追求することとは、すなわち効率化を図りコストを下げることであり、これまでにご説明してきたとおり、それこそ吉原精工が得意とするポイントなのです。

吉原精工のホームページで特徴的なのは、「ごめんなさい」のページです。
掲載しているのは次の9項目です。

【ごめんなさい その1】切削加工設備がないため原則として前加工・後加工ができません。
【ごめんなさい その2】加工素材のお手配は原則として行っておりません。(SUS関係のみ一部在庫あり)
【ごめんなさい その3】加工品の集配は行っておりません。宅配便でのお取り引きとなります。
【ごめんなさい その4】集金もお伺いすることができません。指定口座へのお振り込みとなります。
【ごめんなさい その5】金型関係の加工は当社方針により受注しておりません。
【ごめんなさい その6】微細加工(ワイヤ径0・2以下使用のミクロン交差加工)はくやしいができません。
【ごめんなさい その7】大物加工はできません。(X550・Y370・Z300)以内の加工となります。
【ごめんなさい その8】バックマージン等を含む接待は行っておりません。
【ごめんなさい その9】年賀状・暑中見舞い・お中元・お歳暮などは取引先多数(約400社)のため廃止しております。

おそらく、ホームページでこんなふうにわがままを言う会社はめずらしいのではないかと思います。
しかし、これら9つの「ごめんなさい」は、吉原精工が「うまい」「やすい」「はやい」サービスを提供するために必要なポイントであり、このわがままに対して「それでもいい」と言ってくださるお客様だけとお付き合いさせていただくことが、吉原精工ならではのサービスを維持することにつながると考えています。

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