1月30日、新しい中期計画を発表する新野隆社長。自ら「チャレンジング」という計画を達成できるか(記者撮影)

NECの苦戦が長引いている。売り上げを半減させるほど不採算事業の切り離しを続けても、利益水準は落ちこむいっぽう。1月30日に発表した2020年度までの中期計画でも、成長戦略より人員削減などの構造改革に重点が置かれており、厳しい内情が鮮明だった。

「既存事業の下がるスピードがものすごく速かった」。これまでを振り返って、新野隆社長はそう唇をかんだ。既存事業の中で特に落ち込みが大きいのが、通信インフラなどを担うテレコム事業だ。2014年度までは利益率8%を超え、600億円以上の利益をもたらす収益事業だったが、国内通信基地局向けの需要が一服。2016年度の営業利益は195億円まで縮小した。

結局、2016年4月に発表した中期計画は見直しを余儀なくされ、新たに発表されたのが今回の計画だった。2020年度の目標として掲げた売上高3兆円、営業利益1500億円は、実は前回と同じ。結局、達成目標を2年後ろ倒しにしただけになった。しかも収益改善の中身は、600億円を人件費削減などの構造改革で達成し、事業成長は300億円にすぎない。リストラ頼みの中期計画なのだ。

縮小に次ぐ縮小の歴史

今世紀に入ってからのNECは、縮小に次ぐ縮小の歴史だった。2001年3月期に売上高5.4兆円、営業利益1851億円あった企業規模は、主要事業を次々切り離すことで、2016年度末には売上高2.6兆円とほぼ半減、利益も500億円を下回ってしまった。

この間に失ったものを整理すれば、かつて世界一を誇った半導体は2010年に旧ルネサステクノロジと統合し持分化し、2013年に非持分化、2017年には保有株のほとんどを売却してしまった。

また、PC98シリーズで国内首位を走ったパソコンも2011年に中国のレノボに持分の大半を売却。NTTドコモ向けに強く2004年までこちらも国内首位だった携帯電話も、2010年にカシオと日立の合弁であるNECカシオモバイルコミュニケーションズに移行、2016年に解散させている。インターネットの黎明期からプロバイダー事業で成長を図った「ビッグローブ」は2014年に売却、現在はKDDIの傘下となっている。

売るものは売り切ったと思われたが、今期も撤退の決定を下している。一連の電池事業だ。今年3月、日産自動車との合弁リチウム電池事業とその電極を製造する子会社の持ち株を中国系ファンド・GSRキャピタルにすべて譲渡する。さらに今回、家庭用小型蓄電池事業の終了も決めた。

また、国内9工場ある生産拠点の統廃合も進める。対象となる製造子会社では、携帯電話基地局装置や各種コンピュータなど多様な製品を製造するが、どの工場を閉め、どう再編していくかは今後決めていくという。

そして、今回もっとも踏み込んだといえるのが、国内で間接部門とハードウエア事業を対象とした3000人の人員削減だ。

「いま成長に向けた投資をやる体力をつけないと取り残される危機感があった。苦渋の決断だが、構造改革を断行することで次のNECの成長をつくりたい」(新野社長)

NECが人員削減に踏み切るのは、2001年から4度目となる。2001年に4000人、2002年に2000人削り、2012年には「1万人削減」も実施した。このときは、派遣社員が約5000人と半分を占め、本体で2400人弱、子会社で250人。タイ工場を閉鎖して2700人を削減した。

前回の1万人削減では、「社内のモチベーションが低下した」と新野社長は吐露する。ハードウエアの技術者をソフトウエアに配置転換するなど、リソースシフトで乗り切ろうとしたが、「社員のスキルがなかなか合わず、スピードも遅れていた」(新野社長)。

今回、削減数を3000人とした根拠は、販売管理費を20%以下にするためだ。現在販管費は22%だが、それを20%以下にしないとグローバルで生き残れないと判断した。

成長戦略を不安視する声も

NECが今後の成長事業と位置付けるのが、顔認証技術を中心としたセーフティ事業だ。現在、売り上げは国内外とも500億円規模だが、この海外分を2020年度に2000億円規模に育てる計画だ。1月末に完了した英ノースゲート・パブリック・サービス社の買収は、この事業を増やすための布石だった。


英ノースゲート社はセキュリティに強いソフトウエア会社。近年は赤字が続き、2017年4月期末で債務超過に陥っていた。その同社をNECは約700億円で買収しており、「高値づかみ」との評価もある。

海外のセーフティ事業について、新野社長は「買収なしでも昨年から30%以上成長している。(NECの技術は)大勢の中から一人を特定するのに優れていて、動いているものでもきちっと認識できる」と強気の姿勢を崩さなかった。

仮に海外セーフティ事業がうまくいったとしても、NEC全体を成長路線に戻すことは容易ではない。かつて「電電ファミリー」の一員であり、事業構造が近い富士通は、SI(システム・インテグレーター)事業が牽引し最終利益は過去最高を更新する見通し。一方でNECは今回の計画でも、SI事業をどう成長させるのかが見えなかった。

新野社長自らチャレンジングな目標というNECの計画。これを実現させて、かつての輝きを取り戻すことはできるだろうか。