女同士の闘いなんて、くだらない?

美貌・財力・センスのすべてを手に入れた女たちが繰り広げる、ヒエラルキー争い。

男からは求められ、女からは妬まれ、そして羨望の的となるカリスマ読者モデルの世界。

己の自己顕示欲を隠すことなく曝け出す彼女たちは、時に結託し、時に競い合う。

くだらない、と思うならどうか覗かないで欲しい。

優雅で美しくも、水面下で死にもの狂いで闘う、女たちの醜い生き様をー。

読者モデルに応募し、女性ファッション誌『GLORY』の紙面に登場し始めるあおい。

公認会計士として働き、外見も洗練されたあおいは、カリスマ読者モデルの景子に声をかけられる。




GLORY GIRLSのトップ3『G3』


美しい女というのは、視線だけで人を緊張させる力を持っていると思う。

急に話しかけられ戸惑うあおいを上から下まで見つめていた景子が、ふと口元に笑みを浮かべた。

「あなたのこと、先月の『GLORY GIRLSのカバンの中身、大公開』で見かけたの。確か会計士さんなのよね、すごいわ。」

こちらの緊張をほぐすような笑顔にホッとしたと同時に、すぐ側にいた女性2人の視線にも気がついた。

グラマラスな体が強調されるニットワンピースを着た、ハーフ風の美人が口を開く。

「初めまして。私達もGLORYで読者モデルをしているの。私が佐々木リナで、こちらが野田珠緒さん。景子のことは、知っているわよね。」

珠緒は、驚くほど大きな黒目がちの目をしている。ニコニコしていて、3人の中では1番話しやすそうだ。

名前を聞いて思い出したが、この3人は『G3』と呼ばれるGLORYを代表する読者モデルグループのメンバーのはずだ。景子と3人で一緒に誌面で特集されているのを見たことがある。

「初めまして、木下あおいです。こちらは親友の、松本優ちゃん。他の読者モデルの方ときちんと話す機会なんてないので、緊張して…」

終わらないうちに、景子があおいを制す。

「え?じゃあおいさん、他に読モの友達いないってこと?」

その通りである。

月に1回程度の撮影では、他の読者モデルとは必要最低限の会話をするだけで、撮影が終わっても1人で帰ってしまうことも多かった。

「へぇー、珍しいのね…。」

そう言うと、景子はリナや珠緒と何やらコソコソと話し始めた。


3人は、一体何を話していたのか?


G3メンバーからの、突然の誘い


こちらに向き直った3人が、意味深な目配せをしながら仰々しく姿勢を正す。

「ねぇ、あおいさん。急なんだけど、良ければ明日私達とランチしない?」

確かに明日は何の予定もないが、なぜ急にG3のメンバーにランチに誘われたのか、わからない。しかも、なぜだか妙に断り辛い雰囲気だ。

流されるままあおいが頷くと、景子は満足げに微笑む。LINEを交換すると、彼女達は「じゃ、明日ね」と言って自席に戻って行った。

「何か、やっぱり凄い人達だね…。」

優がつぶやき、あおいは紅茶を飲みながら頷いた。

たしかに3人が揃うと物凄いオーラで、自分はもちろん、他の読者モデルとは格が違う。そんなメンバーとランチに行くなんて、本当に大丈夫なのだろうか。

「まぁ、ご飯を食べるだけなら別に大丈夫なんじゃない?」

優はそう励ましてくれたが、実際はランチだけでは終わらなかった。



翌日、景子から指定された『エンポリオ アルマーニ カフェ青山』に向かったあおいは、「カリスマ読者モデルとしての自覚と美意識」がどれほどのものかを思い知ることになる。




まず驚いたのは、景子から来た

ー明日のドレスコードは、ファーにします♥

という突然のLINE連絡だ。

ランチをするだけなのに、わざわざドレスコードを決めるその感覚にまず驚く。たまたまSALEで買ったファーのバッグがあったから良かったものの、連絡が来たのは前日の夜だった。

ということは、全員が必ずファーアイテムを持っている前提で、Instagramでよく見かける集合写真的なものを撮るつもりなのかもしれない。

「何を着ていくか」にはさんざん迷ったが、シンプルな黒のタートルネックに赤いチェックのタイトスカートを合わせ、その上にオーバーサイズのコートを羽織るという、『GLORY』に掲載されていたコーデをほぼ真似した。

だが店に入った途端、景子たちの刺すような視線に思わず足がすくんでしまう。この格好で正解だったのだろうか。

「あおいちゃん、こっち。」

景子に呼ばれ、おずおずと席に着いた。オーダーを済ますと、彼女は待ってましたとばかりに喋りだす。

「ね、あおいちゃんって確か他の読モのお友達がいないのよね。普段はどんなことして遊んでるの?」

そう聞かれて、あおいは思わず答えに詰まってしまう。

フルタイムの仕事や月1の「読モ活動」に自分なりに対応し、一人暮らしの家事をこなしていれば日々はあっという間に過ぎる。

優と時たま会ってランチするのが唯一の遊びらしい遊びだ。

「あの、遊びの方はあんまり…得意じゃなくて。」

景子がへぇー、と心底不思議そうに声を上げる。

「あおいちゃんて本当、読モには珍しいタイプよね。ね、じゃあこれから私たちと遊びに行かない?」

そう言って、景子達は悪戯っぽく笑った。


景子流の「遊び」とは


カリスマ読者モデルの買い物


3人に連れられてやってきたのは、表参道ヒルズだった。

「まずはVALENTINOよね。」

景子はそう言って、高級そうな店内にスイスイと入ってゆく。首周りにファーがあしらわれたロングコートを脱ぎ、じっくりと品定めを始めた。

あおいは仮に高級店に入っても、値段を見て驚くだけで、店内を一周して終わるのが関の山だ。

だが、3人は当たり前のように試着したり店員さんからバッグを出してもらったりしている。

リナがスタッズの沢山付いたパンプスを履きながら教えてくれた。

「あおいちゃんの今日のコーデもGLORYらしくて可愛いけど、やっぱり1つでもハイブランドのアイテムがあるとぐっと洗練して見えると思うのよ。」

惚れ惚れするほど美しい脚でパンプスを見事に履きこなすリナに言われると、妙に説得力がある。

「別にラグジュアリーアイテムが全てっていうわけじゃないの。でも、何か1つコーデのアクセントとして入ってるくらいだと、読者層から親しみも憧れも感じてもらえるじゃない。」




読者モデルなのに読者層のことまで考えているなんて、自分とは発想が違う。逆に言えば、そこまでこだわるからこそ誌面でも一際目立っているのだろう。

しかし、珠緒に勧められたバッグ類は一番安くても15万円台だった。恐ろしくて買えません…と答えると、皆に大笑いされる。

「あおいちゃん、可愛い〜」

景子はそう言いながら、ごくさりげない様子でスタッズの付いたアンクルストラップのパンプスを購入した。彼女は月に、一体いくら稼いでいるのだろう。

だが、読者モデルとしての格は全く違うのに、景子は何故かあおいを気に入ってくれているようだ。

その後は3人が呼ばれているというアクセサリーブランドの展示会に行き、Instagramもフォローし合った。今度、彼女たちが通う有名な美容室も紹介して貰えるという。

あおいは初めてできた読者モデルの友人達との刺激的な1日に、緊張しながらも思った以上に満足していた。

だが、しかし。

帰宅後に彼女たちのInstagramを見たあおいは、予想外のショックを受ける。

そこには4人で撮った写真は使われず、景子たち3人で撮った写真だけがアップされていたのだ。

彼女たちはそれぞれのアカウントをタグ付け合っているが、あおいも一緒にいた気配は微塵も感じられない。

その後もG3のInstagramは何度か更新されたが、その日のコーデ写真や展示会のPR写真など、全てにおいてあおいの存在は完全に排除されていた。

フォロワーの数も桁違いに多い彼女たちのInstagramには、次々に大量の“いいね”とコメントが増えていく。

「さすがG3!みんなオシャレで可愛すぎる」「本当に3人仲良しなんですね、羨ましいです」「もっと3人の華やかな写真をアップしてください」

あおいはついコメントまでチェックするが、G3ファンの言葉がチクチクと胸に刺さる。

しかしさらに胸を抉られたのは、景子たちがお互いの投稿に「今日も楽しかったね♪また明日(笑)」などとコメントし合い、甘い親密さを漂わせていることだった。

あおいはそんな写真を眺めながら、どうしても“いいね”が押せずに呆然としてしまう。

ーみんなでフォローし合ったのに、私はインスタに載せる価値がないってこと…?

だが、かといって3人が意地悪なわけではない。来週のランチにも誘われているし、LINEでも優しい。

ただあおいの感覚では、みんなで写真を撮れば、それをFacebookなりInstagramにそのまま載せるのが普通だった。

しかし、読モの世界は究極にインスタ映えを意識するあまり、映えないと判断されたものはこうして無慈悲に排除されていくのだ。

あおいは読モ3年目にして、遅すぎる洗礼を受けたのであった。

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G3メンバーからお食事会の誘い。アッパー読モの華麗なる人脈とは?




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