SPIなどの適性検査は、パソコンなどWEB上で行われるケースが多く、自宅で受検可能なケースも増えている (写真:jyapa / PIXTA)

多くの企業は、採用選考において「適性検査」を学生に課しています。志望企業への就職を実現するための第一関門と考えている人も多いのではないでしょうか。

しかし、企業が適性検査の結果をどのように活用しているかは、あまり知られていません。企業は適性検査を、自社で活躍できる人材に出会うため、また、採用した人材が入社後に活躍できるよう導くために活用しています。その実態を、リクルートキャリアが開発する適性検査「SPI」の開発・導入に長年携わってきた経験からご紹介します。

SPIの判定基準は、企業によって異なる

適性検査には、大きく「性格検査」と「能力検査」の2種類があります。性格検査では受検者の人となりを、能力検査では働く上で必要となる基礎的な能力を測定します。

これらの検査の活用方法としてまず挙げられるのは、「直接会う人を決める」ためにあります。つまり、面接等に進む人を決定する手段の一つとして使っているのです。大手企業に限って言えば、約8割がこの目的で適性検査を実施しています。

適性検査を基に、どのくらいの人数と会うのかは、企業の採用予定数や採用ポリシー、採用体制によって大きく異なります。例えば、採用予定数が30名程度のところに毎年万単位の応募書類が提出される企業が2社あったとします。片方はそれほど多くの応募者に会える採用体制ではないため適性検査で絞り込み、もう片方は「できるだけ多くの応募者に会う」という方針でゆるやかに絞り込むなど、方針はさまざまです。したがって「何点取れば良い」というものではありません

では企業はどのようにして会う人を決めているのでしょうか。IT業界のA社は、採用予定数が、数百人程度に対して、毎年1万件を超えるプレエントリーが寄せられます。できるだけ多くの人に会うことを大事にしており、プレエントリー者全員に適性検査受検を案内し、その受検結果を見た上で3000〜4000人の学生と、グループディスカッションという形で直接の接点を持つことにしています。

A社は能力検査を、働く上で必要となる基礎的な能力を測るものととらえています。そのためA社独自の基準を設け、それに達しているかどうか確認をしています。

「商社っぽい答えをした人が通る」はない

それと同時に性格検査の結果を用いて、自社への適応のしやすさや、人をまとめる力、思考力など、各職種に必要な力をどのようなバランスで持っている人なのか、また個々の能力においても、例えば行動の量や質に特徴がある人など、細かくタイプ分けをしています。


SPIの回答画面の一例

すべての力をバランス良く持っている必要はなく、「この人は思考力に強みを持っているタイプ」「この人は行動力に強みを持っているタイプ」などと応募者の一人ひとりの特徴をとらえ細かく確認しています。これらの情報は、選考活動場面においても次の選考に進む人を判断する基準にも使っているだけでなく、会った人をより深く理解するために使用されています

A社の強みは多様性にあることから、応募者の個性や特徴を確認して判断基準にしています。職種や職場によって必要とされる力は違います。どんな強みを持つ人をどのくらい採用するか見通しを立て、次の選考に進んでもらう人や内々定を出す人を決定しているのです。

A社だけでなく、多くの企業で、画一性ではなく多様性を重視し、さまざまな個性を持った人材をバランスよく採用することを意識しています。つまりそれは、「商社っぽい答えをした人が通る」、「銀行っぽい答えをした人がウケる」、「その会社に合うような答えをした人が有利」というわけではないということです。新しい価値を生み出すことが求められている今、相手を攻略しようというような考え方が通用するほど単純な世の中ではないといってもよいでしょう。

また、求める人材として同じキーワードを使っていても、企業によってその意味は異なります。

例えば、最近では「イノベーション人材」というキーワードが、採用現場でよく聞かれます。私が過去に担当した、有名食品メーカーのB社、大手化学メーカーのC社でもイノベーションをキーワードに採用したいという話がありました。そこで、どんな社員がイノベーション人材と考えられるか、実際の活躍社員に関する事実情報をもとに、当社の測定技術を活用して定義するお手伝いをしました。すると、B社では「発想力」「挑戦する力」が重視される一方、C社では「アクションの速さ」がより重視されるという全く異なる結果が出ました。

これは、B社ではゼロから全く新しいものを生み出すことが求められ、C社では顧客との対話からさらに新しいものを生み出すことが求められているからです。このように、企業の事業内容や強みによって、同じイノベーション人材でも、求められる特性は異なるのです。

一方、中堅・中小企業の場合は、「直接会う人を決める」という目的で適性検査を活用しているケースはまれです。採用人数も少なく、一人の影響力をより大きく捉える中小企業は、「応募者一人ひとりをより深く理解すること」を目的として実施しています。

大手企業も、「会う人を決める」だけの用途で適性検査を実施しているわけではありません。「応募者への情報提供」、「最適な配属を決める」といった場面でも、適性検査が活用されているのです。通信・放送大手のD社では、適性検査の結果に加えて、個人が大事にしている価値観や、志向をとらえる検査を行い、2つの検査結果を組み合わせて配属に生かしています。

適性検査の準備は、テスト対策とは異なる

例えば、「新しいこと」に対して、「やりたい」と「得意」は異なります。「やりたい思い」は強いけれど「得意ではない」という人もいるわけです。そのような人に対して、「やりたい思い」を重視し、新しいことに取り組む部署への配属を行うと、うまく仕事に入っていけず、心身ともに疲弊してしまうことも起こりえます。そうならないために、内定者一人ひとりの志向や価値観を理解しながらも、適性検査で測定した資質・能力と合わせて多面的にその人の個性を見た上で、個性に沿った配属、また組織の受け入れ態勢を整えることに取り組んでいます。

医療品メーカーのE社では、適性検査の結果から応募者をタイプ分けし、タイプ別に自社をどのようにとらえているのか、どんなところに魅力を感じているのかを把握しています。その上で、それぞれの興味・関心にあった情報や、不安を払拭する情報を取捨選択して学生個人の専用ページ(マイページ)やメール、説明会などで伝えています。

このように、企業は「応募者一人ひとりの個性を捉えて存分に生かしたい」という考えで適性検査を行うケースが増えています。

限られた時間の面接だけでは十分に応募者のことを理解できるとは言えません。ですから、皆さんも適性検査を受けるときは、自身の個性や能力を素直に伝えられるよう回答してもらいたいと思っています。性格検査を通して素の自分を伝えることが、自身の個性を生かして活躍できる会社に出会うことにつながります。能力検査でもそれは同様です。「自分の力をあるがままに発揮している状態」と、「背伸びをしたために、本来の自分とはかけ離れた姿を周りが期待している状態」を比較してみてください。自ずと取り組み方が見えてくるのではないでしょうか。

適性検査の準備というと、テスト対策のように国語や計算の練習を重ねることと思われがちですが、その訓練によって得られる効果は実は限定的です。もちろん基本的な知識の習得やおさらいは大事です。ただ、さらに能力検査の点数を上げたいと思っているなら、日々の大学での勉強や生活の中で磨くことを心がけることをお勧めします。

能力検査では、ビジネスの世界の中で活躍していくための土台となる力を測定しています。それはすなわち、複雑な状況の中で課題を見つけ出し、その解決策についてさまざまなアイディアを検討して自分の考えをまとめ、相手に伝えて説得し、物事を動かしていくという力です。この力は付け焼き刃では得られません。自分の中に定着させる機会は、むしろ大学での勉強や、普段の活動の中など、日常の中にあると言えるでしょう。ぜひ実践の中で「土台の力」に磨きをかけていってほしいと思います。

当然、テストの形式に慣れておくと、本来の力を発揮しやすくなる側面は確かにあります。適性検査の問題は学校のテスト問題とは異なりますし、Webで回答するので慣れが必要です。実際、初めて受けたときよりも2回目以降の方が能力検査の得点が上がることはあります。

付け焼刃では能力検査の点数は上がらない

さらに、忘れてしまっていた数的処理の考え方や話の要旨を捉える力を取り戻しておくなど、「サビ落とし」することで、本来持っている力を不足なく発揮することができるでしょう。肝心の本番を、そのサビ落としにしてしまうのはもったいない。リクナビでも無料のSPI模擬受検が可能になっています。ぜひ活用して欲しいと思います(「SPI公式ガイド」)。

我々が大事にしてきた考え方として、「個をあるがままに生かす」というものがあります。採用適性検査の先駆けであるSPIが生まれた1974年当時の採用選考は、「学歴主義」「男女差別」「身元調査」が主流でした。そうではなく、なんとかして一人ひとりの特性や良さを知り、個性を生かした就職がでないかと考えて生まれたのがSPIです。

多くの企業が一人ひとりの個性を尊重し、その人の良さや強みを存分に発揮してもらうことが、企業の成長にもつながると考えています。皆さんもぜひ、自分の特長をあるがままに表現し、個性を最大限に生かせる会社に出会う方法として適性検査に臨んでいただきたいと思います。