円高の背景には、何があるのか。また、円高トレンドは続くのか・・・。外為オンライン・アナリストの佐藤正和さん(写真)に2018年2月の相場動向をうかがった。

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 先月は、一時的に1ドル=108円40銭台にまで円高ドル安が進み、久しぶりに円高が急速に動く、変動幅の大きな為替相場になった。トランプ米大統領が、年1回開催される「世界経済フォーラム」の年次総会、通称「ダボス会議」に出席。そこで何が語られるかが注目され、ダボス会議に向けて、ドル円は一時的に大きく円高に振れて1ドル=108円台をつけた。円高の背景には、何があるのか。また、円高トレンドは続くのか・・・。外為オンライン・アナリストの佐藤正和さん(写真)に2018年2月の相場動向をうかがった。

 ――1月は大きく円高に振れましたが、その原因と背景を教えてください。

 1月中旬にかけて大きく円高ドル安が進みましたが、その背景には3つの要因があったと思います。ひとつには、黒田日銀総裁が言及した「リバーサル・レート」の問題。マイナス金利など金利が下がりすぎると金融政策の効果が薄れてしまい、デフレ脱却に繋がらないという意味ですが、為替市場は敏感に反応しました。

 第2には、日銀の「買いオペの減額」です。現在、日銀は年間80兆円の国債を買い入れており、そのペースで「買いオペ」をしてきたわけですが、年が明けてすぐの1月9日、長期国債の買い入れ額を減らしてきました。特に、なにか発表があったわけではありませんが、テーパリング(国債買い入れの減少)の開始ではないのかという観測が市場に出ました。

 そして、第3の要因は黒田日銀総裁の1月の金融政策決定会合の後の記者会見での発言でした。「出口戦略はまったく考えていない」「粛々とインフレ目標2%を目指す」ことを意思表明しました。

 これらの要因が重なって円が買われて、ドルが売られたというわけですが、全体のトレンドとしては何かがあれば、ドル売りに振れるという市場のコンセンサスができつつあります。問題はこのトレンドがいつまで続くのか、ということです。

 ――スイスで開催された「ダボス会議」を挟んで、相場は大きく揺れ動きましたが・・・?

 最初に動いたのは、ムニューシン米財務長官の「ドル安容認発言」ですが、その後トランプ大統領が「長期的にはドル高が望ましい」趣旨の発言があり、1ドル=109円70銭までドルが買い戻される場面がありました。ところが、その後の黒田日銀総裁のダボス会議での記者会見の発言がきっかけとなって、再び大きくドル安円高に振れることになりました。

 黒田総裁の「インフレ率は目標に近い」といった趣旨の発言に海外の金融マーケットが反応。金融緩和政策の終了が意識されたために、急激な円買いドル売りが進みました。ドル円は一時、1ドル=108円台前半まで円高が進みました。

 黒田総裁の発言内容は「賃金が上昇している兆候がいくつか見られ、物価も一部ですでに上昇」「中長期のインフレ期待は若干上向きつつある」といった内容でした。発言直後から日銀のスポークスマンが「従来の発言内容と変化はない」と、火消しに躍起になったとも報道されていますが、少なくともドル円相場では、ドル売り円買いが大きく意識される相場になっているようです。

 ――1月30日に行われた米大統領の一般教書演説の影響は?

トランプ大統領にとっては、最初の一般教書演説となりますが、今年の11月には中間選挙も控えているため、全体的に過激な発言は抑えられ、この1年の成果をアピールする話題が多い印象でした。

 これまでにも報道されてきた内容ですが、インフラ整備の規模を10年で1兆ドルから1.5兆ドル(約160兆円)に拡大すること、通商政策では貿易不均衡の是正に取り組み、米国にとって有利な貿易交渉を行っていくこと、そして大型減税法案の成立などなど、この1年で米国経済が好転し、失業率は幅広く下がり、株式市場も好調であることなどを訴えました。