外為どっとコム総研の取締役調査部長兼上席研究員の神田卓也氏(写真)は、「あまりにも思惑によって進んだドル安・円高は、長続きしないだろう。ドル反転のタイミングは近い」と語った。

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 2018年の年初から進んだドル安・円高は、今後、どのような展開をみせるのだろうか? 外為どっとコム総研の取締役調査部長兼上席研究員の神田卓也氏(写真)は、「日銀が量的金融緩和からの出口戦略を模索し始めたなど、あまりにも思惑によって進んだドル安・円高は、長続きしないだろう。ドル反転のタイミングは近い」と語った。神田氏の見通しは、以下の通り。

 ――ドル安・円高が進んだ要因は?

 円高が進んだ要因は、いくつかあると思うが、一番効いているのは、日銀の金融政策が「正常化」に向かっているという見方だろう。従来は、世界的に金融政策が正常化に向かう中、日本だけが周回遅れで量的緩和を継続するとされていたが、昨年11月の黒田総裁のスイスでの講演で「リバーサル・レート」に言及して以来、日銀の金融政策が転換するのではないかという見方が強まっている。

 そこに加えて、今年1月9日の日銀の国債買い入れ額を前回より200億円減額したため、「日銀の出口戦略」が一気に市場で意識された。

 また、年明け以降には、米国債の世界最大の保有国である中国が、米国債の購入を縮小するという見通しが伝えられ、ドル売りの材料視された。

 さらに、米国のムニューシン財務長官が「ドル安が米国にとって良いこと」と発言したと伝えられ、ドルを一段と落ち込ませた。

 いずれも、関係者から否定のコメントが出ているが、市場は聞く耳を持たずドル円は年初から5円ほどのドル安・円高に振れてしまった。これらの反応は、あまりにも思惑先行といえ、このようなドル安は長続きしないだろうと考えられる。

 日銀は、改めて「オーバーシュート型のコミットメント」であることを強調し、消費者物価指数の伸び率が2%に乗って、さらに、その状態が維持されるまでは、緩和策を継続すると明言している。

 中国も国家外貨管理局(SAFE)が公式に否定の声明を発表した。現実問題として最大の米債保有国である中国が米債を売っても、その巨額資金を振り向ける受け皿はない。

 また、ムニューシン財務長官のドル安歓迎発言に対しては、トランプ大統領が「強いドルを望む」と発言し、これを否定したほか、財務長官もメディアが発言の一部を強調して取り上げたものだと主張し、改めて「強いドルは国益であるとの考え方を絶対的に指示する」と発言した。

 マーケットの動きとしても、米10年債利回りが、2014年以来の高い水準に上昇したにも関わらず、ドル/円が昨年安値の107.32円を割り込む事は考えにくい。何か予測もしないようなことがあって一時的に108円を割り込むことはあるかもしれないが、ドルの下値には届いているように思う。昨年1年間のレンジである107円〜115円の間での値動きに収まって、それを逸脱するような動きには発展しないだろう。

 ――ドル円が戻るポイントは?

 ドル円が転換点を迎えるのは、3月のFOMCで、新議長、新メンバーになった上で、金融・経済見通しについて、どのようなメッセージが出てくるかということがポイントになるだろう。それまでは、昨年のレンジを意識しつつ、大きな動きは出てこないと考える。当面は、1ドル=107.50円〜112円程度を予想する。

 ――ポンド/円でポンドが年初から上昇したが、今後の動きは?

 ポンドについては、英国の2017年通年のGDP成長率が1.8%と16年の1.9%よりも落ちたとはいえ、意外と底堅かったこと。また、EUから離脱した後もEUとは良好な関係が保持されそうだという楽観的な見方が強まっていることが、ポンド高の背景にある。

 特に、英国のメイ首相とフランスのマクロン大統領が会談し、「英国はEUの深く特別なパートナー」「オーダーメイドの協定を結ぶことも可能」などという発言が伝わり、EUと英国との関係が非常に友好的であるという印象が強まった。さらに、英国内で一部に国民投票のやり直しとの声も聞かれ、Brexitの危機感が後退した。