修正指示だらけの資料……。限られた時間ですばやく完成させるには?(写真:ふじよ / PIXTA)

外資系コンサルでIT戦略の策定・実行支援の仕事をする傍ら、日々の仕事で見つけた気づきや役に立った方法論を整理して紹介するブログ「NAEの仕事効率化ノート」。このブログを運営するNAE(なえ)さんに、今回の記事では上司などから「資料へのダメ出し」を受けた場合の対応について語っていただきます。生産性を上げるためのコツがそこにはあります。

レビューの指摘はすべて修正しなくていい

作った資料が、修正指示だらけで泣きそうになる……。これは、「若手あるある」のひとつでしょう。私も入社してすぐの頃は、「なにをしたい資料かわからない」「言いたいことと全然違う」「デザインが最悪」「構成がめちゃくちゃ」「1秒でダメ資料だとわかる」など、辛辣なレビューを受けてきました。時には「自信作」さえズタボロになり、ゼロから作り直しを命じられることもありました。

このような厳しいレビューを受けると、焦りや恐怖心から、「次回レビューでは、指摘事項を全部反映した完璧な資料を出さなければ」と思ってしまうものです。すると再レビューに出すタイミングが遅れ、「まだできていないのか」と言われて萎縮し、さらなる完璧を求めるあまり仕事の効率やスピード感が失われ、重ねて怒られた結果、仕事に対する自信が失われ成果が出せなくなっていく……。資料レビューをきっかけに、この「負のスパイラル」に陥ってしまうのはつらいものです。どうすればいいのでしょうか?

実は、「レビューの指摘はつねに全部反映すべき」と考えること自体が誤りなのです。限られた時間ですばやく資料を完成させるコンサルタントは、レビューの指摘内容を仕分け、優先度を判断しています。これにより、資料の目的や仕事の進め方に応じた、効率的な「レビュー指摘対応」をしているのです。今回は、その具体的な方法を紹介します。

指摘対象を「文脈」「内容」「表現」に仕分ける

ポイントは、指摘対象を「文脈」「内容」「表現」に仕分けることです。

文脈への指摘:資料の目的や読み手のニーズをとらえていない
内容への指摘:資料に書かれたことが正しくない
表現への指摘:構成やデザインが適切ではない

たとえば、「スマホの使い方を知りたい人に向けて、操作手順を説明する資料を作って」と指示を受けて作った資料に対し、レビューで「全然ダメ」と指摘を受けたとします。これを「文脈・内容・表現」に分解してみましょう。

「文脈を外している」からダメ:なぜかスマホの性能のよさを説明する資料になっており、「スマホの使い方を知りたい」という読者ニーズを外している
「内容に誤りがある」からダメ:資料に書かれた手順が明らかに誤っており、資料を読んでも目的が達成できない
「表現が適切でない」からダメ:手順説明の文言がまわりくどく、パッと見るだけでは理解できない・伝わらない

こうしてみると、指摘対象によって修正の優先度が異なることがわかるでしょう。「文脈を外している」場合、言葉どおりの「ダメ資料」であるため、文脈に対する指摘は必ず修正しなければなりません。「内容に誤りがある」場合も、資料の品質に直結する指摘なので修正すべきものですが、資料が読まれるとき口頭で補足できるシチュエーションでは「文脈」より劣後できるでしょう。

一方、「表現が適切でない」場合は、ただ伝わりにくいだけで資料としての目的は果たしているため、修正の優先度は「文脈」「内容」よりも低くなります。場合によっては修正を見送ることもできるでしょう。

実は、記事冒頭で紹介した、私が若手時代に受けた辛辣なレビューも、文脈・内容・表現に分類ができます。

文脈への指摘:「なにをしたい資料かわからない」
内容への指摘:「言いたいことと全然違う」
表現への指摘:「デザインが最悪」「構成がめちゃくちゃ」「1秒でダメ資料だとわかる」

こうすると、レビュー指摘の内容を具体的に聞かなければならないのは「なにをしたい資料かわからない」「言いたいことと全然違う」のみで、残りの3つは必要以上に重く受け止めなくてもよいことがわかるでしょう(ただし、資料を読む相手がひと目で「これは読みたくない」と思ってしまうレベルの見た目ではないことが条件です)。

このように、一見「言ったことは全部反映しろ」と聞こえるレビュー指摘でも、文脈・内容・表現の観点から優先度を見極めてみると、必ず対応すべき範囲とそうでない範囲が見えてきます。これを意識することで、たとえば「細かな表現修正を優先してしまったため、1時間たっても内容の直しに着手できていない」といった非効率を避けることができます。

ただし、優先度が低い指摘だからとスルーを決め込んではいけません。状況によっては、表現の誤り1つが大問題になりかねないからです。

たとえば、医療従事者向けのマニュアルに誤解を与えかねない表現が使われていた場合、文字どおり致命傷につながるおそれがあります。国家機関が発表する資料のように、多くの人や企業が参照するものの場合、複数の解釈ができる表現は大きな混乱につながります。また、重要な意思決定を行う役員会議資料では、文言のよしあしが大勢を決する場合があります。資料の使われ方によっては、言い回しレベルの細かなレビュー指摘にまで対応する必要があるのです。

加えて、資料のレビュアーのタイプによっては表現レベルの対応が必須になることもあります。たとえば、レビュアーが「私の指摘どおりになっていないと気がすまない」タイプの人だと、文脈・内容・表現問わず、すべての指摘をくまなく反映し終えるまでレビューが完了しません。また、内容よりも見た目のインパクトを重視する人がレビュアーの場合、文言・色合い・レイアウトなど、表現レベルでの微調整にすべて対応しなければならないでしょう。レビュアーのタイプに応じた仕事の進め方を誤ると、そもそもレビューが通らない、つまり仕事がそもそも進まないことになってしまいます。

レビュー対応の効率化による仕事のスピードアップももちろん大事です。しかし、スピードに気を取られるあまり、資料のアウトカム(誰にどう使われ、どのような影響を起こすか)を軽視してしまうのは品質の点で問題になります。

また自分の仕事効率を優先するあまり他人を軽視した仕事の進め方をすると、かえってスピード感が失われます。つまり、「優先度の低いレビュー指摘は劣後する」というコツ自体も、どのような状況でどこまで使うべきか、見極めるべきものといえます。

「神は細部に宿る」と「Quick and Dirty」を切り換える


このように、レビュー指摘に優先度をつけ、優先度が高く資料の価値を大きく左右しやすい部分に重点的にリソースを投入することで、レビュー指摘対応の生産性を高めていくことができます。

とはいえ、「負のスパイラル」に陥らない範囲であれば、レビュー指摘をすべて反映し、細部まで完璧な資料を作ろうとする積極性はすばらしいものです。加えて、レビュー対応を通じて上司の「技」を盗むことは、若手にとって非常に良い学びの機会になります。レビュー指摘の効率化を求めるあまり、自分の成長機会を削ってしまうのは、長い目で見るとマイナスになるでしょう。

だからこそ、表現に至るまで細かくこだわる「神は細部に宿る」モードと、スピード重視で仕事を終わらせる「Quick and Dirty(粗くともスピード重視)」モードを、状況に応じて切り換えるべきでしょう。Facebook共同創始者のマーク・ザッカーバーグは「Done is better than perfect(完了は完璧に勝る)」と言いましたが、自分の成長を考慮すると、時にはあえて茨の道を行くこともまた、重要なのです。