核戦略に影響する一般的諸要因をまず分析し、その後日本の核戦略について考察する。

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1 核戦力のレベルおよび各レベルでの弾頭数と核戦略

・非核国

 0発、いずれかの核大国に拡大核抑止力提供を全面依存するか、敵性国の核恫喝に屈するしかない。自国の安全保障を自国の責任で保証できる自立した大国にはなり得ない。

・潜在能力抑止

 潜在保有能力あり、0発。非核国と同様の依存戦略をとるが潜在核保有国として拡大核抑止提供国からも敵性国からも国際社会からも重視される。

 今の日本が該当。韓国も潜在能力は高く、プルトニウム抽出能力を持ち、弾道ミサイル、大型潜水艦の開発を進め原子力産業、武器輸出を振興しており、過半数の国民が核保有を支持。

・即時能力抑止

 即時保有能力があり、部品を生産保管し即時組み立て可能。

 戦略は潜在能力抑止と同じだが、国際社会からの重視度は上がるものの、潜在力を核抑止力提供国も含め他国から破壊される恐れがある。日本も佐藤内閣の頃この態勢を目指した。今のイランはこの段階。

・未実証核保有抑止

 核弾頭は単発保有またはその直前、1〜0発、核実験は未実施。NPT加盟国は協定違反となり国際社会から制裁を受け、核保有国から核能力を先制破壊される危険性が最も高まる。

 国家安全保障上はこの段階をできるだけ早く秘密裏に超える必要がある。1990年から核実験前の北朝鮮は外交的時間稼ぎを硬軟織り交ぜ巧みに行い、この段階を乗り切った。

・実証核保有抑止

 核弾頭を少数保有、数発から数十発、核実験を実施。できるだけ速やかに核弾頭数と運搬手段を質量ともに最小限抑止水準に引き上げ、その能力を国際社会に見せつけることが基本戦略となる。

 先制破壊を受けるおそれは残るが時間とともに核残存能力が上がるため、破壊が困難となり、先制される恐れは減少する。ただし核戦力としては実効性に欠け抑止力として不安定。2006年の核実験後から現在の北朝鮮。

・最小限抑止

 いかなる核大国にも報復し、耐え難い損害を与え得る能力。対都市攻撃用として水爆を主に百数十発保有、敵の先制核攻撃に対する残存性を重視し、核の先制使用はしないのが戦略。

 数十基のICBM(大陸間弾道ミサイル)または/および3〜4隻のSSBN(弾道ミサイル搭載原子力潜水艦)の保有が必要。この段階に達して初めて独自の核抑止能力は安定する。

 英仏印パ、イスラエルはこの段階、北朝鮮もあと数年でこの段階に達する。イスラエルは米国の黙認のもと、核実験なしまたは1度行っただけでこの段階に達している。

・相互確証破壊水準

 いかなる核大国の核攻撃にも残存し報復第2撃で相手国の国家機能を破壊(人口の4分の1から5分の1、産業力の3分の1 から4分の1を破壊)できる能力、水爆を含め5000〜7000発の戦術核を含む各種核弾頭、ICBM、SSBN、戦略爆撃機の計数百機の保有が必要。

 対兵力目標用の数百キロトン級中小型核弾頭が主、核先制使用否定せず、場合により相手国軍事目標を先制奇襲し必要数を破壊できる能力を保有。

 しかし、相手国も同様の能力を持っているため核の先制使用は強く抑止され、相互抑止は最も安定。冷戦時代の米ソ間、現在の米露間に成立。中国の核戦力も急速に米露に対する相互確証破壊水準に近づきつつある。

 特に中国の各種核ミサイルの移動化・地下化・水中化と多数配備により残存性は著しく向上、核弾頭数も280発との見方もあるが実数は不明、核軍縮交渉に応じる可能性もない。

・核戦争戦勝水準

 全面核戦争にも勝利できる核戦力水準、核弾頭7000から1万発以上、核戦争下でも機能する各種核戦力部隊に対する全地球的な指揮統制能力を維持。戦域・戦術核兵器使用の現地指揮官への委任も必要になる。

 中朝のような独裁体制には実行困難。米ロナルド・レーガン政権下で追求されたが、冷戦崩壊後は核戦力への依存低下の方向に転換。

 ただし、ジョージ・W・ブッシュ大統領は核戦戦勝戦略計画策定を進めた。バラク・オバマ大統領は核兵器への依存を下げたが末期から強化に転じ、ドナルド・トランプ大統領は核戦力重視を明確にしている。

2 核運搬手段とその特性

・SSBN

 最も残存性に富むが、一般に指揮統制が困難で弾道ミサイルの射程と精度、威力はICBMに比べて劣る。

 一たび発射すると即座に発見撃沈されるため先制攻撃には向かないが、自国の対潜能力が優れている場合は発見されるおそれは少なく、残存報復用に適する自衛的な戦略核戦力となる。

 開発・製造・配備・運用に高度の技術を持ち訓練を受けた要員、潜水艦、水中発射弾道弾、原子力推進機構などの高度の技術および多額の予算が必要。

 指揮統制・通信システム・コンピューターも高度なものが必要。3〜4隻編成で年間2 兆円程度で約30年間運用。英仏はSSBNを核抑止力の骨幹としており、最小限抑止レベルの自衛的核戦力を維持している。

・ICBM

地上配備のため大型化ができ威力、射程、精度に優れ、多弾頭化も容易。地下化すれば指揮統制、通信、コンピューターシステムも比較的安価に残存性の高いものを構成できる。

 また即応性には最も富んでおり、発射後は敵の防空システムを突破し正確に目標に到達する能力は高い。

 ただし、近年は弾道ミサイル防衛システムが発達し、迎撃破壊される可能性も高まっている。いったん発射すれば自爆させることはできても、目標の変更や帰還はできず運用の柔軟性に乏しい。

 これらの発射後の弾道弾としての特性は潜水艦発射弾道弾も共通している。サイロ内の固定配備のものは精度の高い核・非核攻撃に脆弱で残存性に劣る。

 移動式は残存性は上がるが重量、大きさに制限を受け、射程、威力、多弾頭化などが制約される。

 現在、大陸国の中露朝の地上配備弾道ミサイルは最大級のICBMも含め移動式が主流で、残存性が重視されている。ただし、一部の大型重ICBMの開発配備も続いており、米露中ともに先制核攻撃の選択肢にも応じられる態勢を維持している。

・戦略爆撃機

 現在、本格的な戦略爆撃機を保有し開発を進めているのは米露中のみ。仏は戦闘爆撃機に搭載し、英国は核搭載型航空機を保有していない。

 爆撃機特に有人機は発進後も容易に交信を維持し、攻撃を中止あるいは目標変更することができ、運用上の柔軟性に富む。ただし、ICBMよりも即応性は劣り、地上で先制核攻撃を受けた場合は脆弱で、滑走路などが破壊されても即時の発進はできなくなる。

 攻撃目標に達する前に敵の防空網により捕捉撃墜される可能性は高い。航続距離もICBMよりも劣る。

 近年はステルス型が登場し、敵防空網の突破力も向上し、航続距離も伸びている。無人化も進み、安価に多数の爆撃機を一斉に発進させ、敵の防空能力を飽和させるといった戦法も可能になっている。

 核兵器は一発でも破壊力が大きいため、核による飽和攻撃の可能性も高まっている。

3 核攻撃目標

・対価値目標

 産業基盤、都市人口など敵国にとり価値のある、しかし堅固な防衛は困難な目標を選定する目標戦略。報復第2撃の目標となる。軍事能力はないので、先制攻撃で破壊する必要はない。

 他方、対都市攻撃能力を持てば、相手国住民や産業を人質にとることができるため、自国の核戦力に残存報復能力があれば、相手国の先制攻撃を抑止できる。

 もし、いかなる大国にとっても耐え難い損害をもたらす残存報復能力を持てば、いかなる核大国に対しても最小限の抑止能力を持てることになる。しかしそのためには人口の4分の1から5分の1、産業の3分の1から4分の1 程度を破壊できる核戦力を持つ必要がある。

 その水準はメガトン級水爆百数十発程度とされている。なお、都市攻撃の場合、目標としては、軍事施設のある都市以外は一般に人口の密集した、被害を大量に発生しやすい都市から順に目標として選定する。

 相手国の政経中枢は優先目標となるが、首都などの政治的意思決定中枢は停戦の受け入れなど交渉上の必要性から当初の目標から外される。

 指向される核弾頭は破壊面積に応じて配分されるが、軍事目標に比べて堅固化されていないので爆風圧などの破壊力は低くてもよい。精度も目標が広いため、あまり要求されない。

 ただし広範囲を破壊する必要があり、破壊半径の広い大出力のメガトン級水爆が望ましい。都市化率が低いほど、人口規模が大きいほど、対都市攻撃に対する抗堪性は大きい。その点で、中印は米露よりも対都市攻撃には強い。

 さらに、国民の損害回避を第一に考えねばならない民主主義国に比べ、あるいは人命尊重が重視される先進国に比べ、国民の損害を顧慮しなくてもよい独裁体制や人命の軽んじられる途上国の方が、対都市攻撃に強いと言える。

・対兵力目標

 軍事目標を集中的に優先する目標戦略。軍事目標が残っていると報復されあるいは占領に抵抗されるため、一般に軍事目標を優先的に攻撃するのが合理的。

 特に、先制核攻撃をする場合は、相手国の第2撃報復力を最大限に奪うため軍事目標をまず優先的に攻撃するのが原則。

 軍事目標の中では、現在は指揮統制・通信・コンピューター・情報ネットワークの中枢が最優先され、次いで戦略核部隊とその基地、大規模な輸送インフラ・兵站基地の中枢・海空基地などが目標となる。

 対兵力目標は小さく分散しかつ堅固化されている。そのため、1目標に少なくとも2発の精度の高い核攻撃を加えねばならない。破壊半径は小さくてもよく、700〜数百キロトン程度の威力でよい。

 戦場で使う戦術核は数キロトン程度でよく、味方に被害を与えたり高濃度の残留放射能をもたらしてはならない。

 施設の接収や利用を前提とするなら、電子装置を一時麻痺させる高高度爆発による電磁パルス攻撃、施設は破壊せず人のみを殺傷する中性子爆弾の使用もあり得る。

 地下数百メートルの目標に対しては地下浸徹型核爆弾による攻撃も可能だが、地上に放射能が漏れる恐れもあり、また数百メートル以上の深部の目標破壊には限界がある。

 核攻撃は地下などに貯蔵された生物・化学兵器を瞬時に破壊無力化できる。これは通常弾頭ではできない。

4 指揮統制権

・核の引き金を誰が引くかは、核を巡る問題の中で最も深刻な問題である。冷戦時代NATO(北大西洋条約機構)内でも米国と同盟国間で最大の懸案となった。

 ジョン・F・ケネディ政権以来、米国は西側の核兵器の引き金は米大統領が一元的に権限を持つ態勢にしている。

・これに従い、独伊蘭、ベルギーなどは、個別に米国と協定を結び自国内に米軍の核弾頭管理部隊を常駐させ、普段から自国正面の関連情報を米国から得て核作戦計画作成に意見を提出し核爆弾投下の訓練をしておく、緊急時には米国大統領の承認を得て核弾頭を譲り受け、指定された目標を攻撃するという態勢をとっている。

 この態勢は「核共有(nuclear sharing)」と言われるが、核の引き金も弾頭も米国の管理下、指揮下にあり「象徴的なもの」(キッシンジャー)に過ぎない。米大統領が拒否すれば核攻撃はできず、独自の核抑止力保有にはならない。

 むしろ、自国内に敵の核攻撃目標を作り管理・警護責任、政治的財政的コストを平時から負うことになり、あまりメリットはない。

・英国は、SSBNのみを投射手段として保有し、米国との「特殊な関係」を利用して、米国との実質的な核共有を実現している唯一の国である。

 英国は、核弾頭と潜水艦は自ら開発配備し、弾道ミサイルのみ米国と共有している。米国の核作戦計画に英国の核戦力は組み込まれているが、英首相独自の核作戦の指揮権も指揮統制・通信系統も保有している。

 ひとたび核弾道ミサイルを発射すれば、敵国からは米国のものか英国のものか判別できない。このため米英いずれが先に核の引き金を引いても、英米は自動的に相手国の報復攻撃の対象となる。

 まさに米英は運命共同体であり、米国の核拡大抑止の傘は最高度の信頼性をもって保証されていると言える。

・フランスはシャルル・ドゴール大統領の当時、米国による仏に対する核の傘を保障する米国の核作戦計画の開示を求めたが、米国は提示できなかった。ドゴールは米国の核の傘には実体がないと判断し、仏独自核の開発配備を決心し1966年にはNATOからも脱退した。

 仏は核搭載型の爆撃機を保有しているが、核部隊の主力はSSBNである。すべて独自の装備、核弾頭、指揮系統を保持し、独自の核戦力、核指揮権を保有している。

 複雑抑止という戦略に基づき、核保有国の数を増やし、米英と仏の核使用に関する連携および核使用の意思決定の見積をより複雑困難にさせることで、潜在敵国に対する核抑止能力を高め得るとしている。

 基本的な価値観や体制を共有する米英その他NATO加盟国との核作戦に関する連携は維持するとし、全く独自の核戦略を保持しているわけではなく、あくまで西側の一員としての核保有国の地位に留まっている。

 2009年NATOの軍事機構に復帰して以来、SSBNの作戦海域について英国と調整するなど、NATOとの連携を強め独自色は薄らいでいる。

5 核弾頭の開発・製造・管理組織

・核戦力を配備され、それを指揮命令系統に基づき運用するのは軍の役割だが、核弾頭、核戦力の開発・製造・維持管理・保管などは専従の監督省庁や指定された別の指揮系統のエリート部隊が担当するのが一般的である。米国ではエネルギー省が担当している。

 北朝鮮の場合、弾道ミサイルの開発・配備は軍の管轄だが、核兵器開発・管理は最高指導者に直結した組織が担当しているとみられている。

 輸送、警護も特別に指定された部隊が担当することが多い。万一にも事故、窃盗、テロ、横流し、秘密事項の流出などがあってはならず、最高指導者の意思に従い的確に管理・運用されねばならない。

 そのために最高度のセキュリティ態勢が求められる。関与する人員も最高度の信頼性が要求される。最高指導者に直結する完全に保全された独自の指揮統制・命令・通信系統が必要になる。

6 核開発インフラと予算

・核開発インフラとしては、人的には研究開発のみでも数千人規模の各種分野の専門的科学者、技術者が必要となる。

 核物理、金属材料加工、化学処理、原子炉、爆薬、電気式起爆装置、シミュレーション、数学などの専門家が厳格な秘密保持の可能な環境で数年間は専従する必要がある。要員の募集と選抜、家族を含めた生活と身分の保証、機密保持協力確保も重要課題になる。

 大学での要員教育との連携、特殊技能者確保についての大学、民間の協力も不可欠である。施設としては、原子炉、ウラン濃縮工場、プルトニウム抽出施設、核弾頭製造工場、保管庫などの建築、管理運営も多額の経費を要する。

 予算面では米国の場合、1940年から1996年の間の核関連予算の総額は5兆8210億ドル、そのうち核爆弾製造に要した予算は4094億ドルで7.0%に過ぎない。核投射手段の開発・配備、指揮統制・通信・情報・コンピューターシステムの展開、警護などに多額の予算を要した。

まとめ: 日本として採るべき核戦略

基本方針

・先制核攻撃を前提としない最小限抑止戦略を可能にするレベルの核戦力を構築する。運搬手段としては、残存性が最も高く我が国の四面環海という地政学的条件に適したSSBNを採用する。

 SSBNの数は、3000キロに及ぶ日本列島の特性、敵性国が複数近隣に存在することから、常時2隻が哨戒できるよう4隻態勢とする。

 SSBNは努めて国産とするが、抑止に機能停止期間が生まれないよう、少なくとも初期は米国から導入することも考慮する。潜水艦要員その他必要な制服要員は海上自衛隊の定員を増加し確保する。

・指揮統制権については、英国型を追求し、米国の戦略核とのリンケージを確実にし拡大抑止の信頼性を最大限に確保する。潜水艦と核弾頭は国産とし弾道ミサイルは米国製を導入する。

・米国が同意しない場合は、独自核の仏型を追求する。

・独自に核爆弾を製造できる場合は、ステル戦闘爆撃機に核爆弾を搭載し、敵基地を攻撃できる態勢を維持する。米国の核爆弾を譲り受けるドイツ型は採用しない。

・SSBNの建造が間に合わない場合も、イプシロンを改造した射程8000キロ程度の固体燃料弾道ミサイルを開発し移動式にして地下に展開する。

・最低限でも、秘密裏にシミュレーションにより核弾頭を設計し、部品を製造しておき即時組み立て可能な態勢を維持する。

・核兵器の開発・製造・管理を担当する新たな組織を創設するとともに、専従の警備部隊を編成する。国際的にも通用する秘密保護法を制定しセキュリティ態勢を強化する。

・防衛予算を年間2兆〜3兆円程度増額しSSBNを建造、プルトニウム239は国内保管分を転用し、必要な場合はプルトニウム抽出用原子炉を建造する。

 ウラン濃縮、プルトニウム抽出施設は既存施設を転用するが努めて地下化する。核兵器製造工場を地下に建設する。

・従事する科学者、技術者を募集するが、セキュリティチェックを最も重視する。家族を含め特定の管理下にある施設に収容する。

・NPTについては、「異常な事態が自国の至高の利益を危うくしている」として正式の手続きを経て脱退する。先制不使用を宣言し最小限抑止水準まで早期に核戦力を増強する。

・秘密裏に行うか部品として持つ場合は、NPTに留まる。関連施設は地下化し秘匿する。できる限り、査察の入らない防衛用施設敷地内の地下に枢要な施設を建設する。

問題点と制約

・日本国内での政治的合意形成と国民の理解
・米国の黙認または支援の拒否、介入阻止のおそれ

・予算と要員の確保
・セキュリティ確保体制の確立

・NPT脱退に伴う国際的制裁
・科学者、技術者、民間企業の協力確保

対策

・SSBNの建造を目指すが、それが困難な場合もSSB(弾道弾搭載型通常動力型潜水艦)までは現行技術で建造可能。SSBを改良しSSBN並みの性能に近づける。

・通常動力型潜水艦またはSSNへの巡航ミサイルの搭載は容易だが、巡航ミサイルは突破力と射程に欠け報復用核運搬手段としては不適なため、イプシロンの技術を生かし、潜水艦発射型弾道ミサイルを開発、搭載する。ここまでは、NPTに触れることなく開発配備できる。

・核弾頭はシミュレーションにより設計し、部品製造をメーカーに依頼し国の管理施設内に必要数を分散保管する。

 その際、あくまで秘密厳守に徹し、最小限の要員と予算のみで実行する。政治コストは秘密保全のみ。わが国はNPTに留まり続ける。米国と国際社会の反発を招くおそれはない。

・緊急時に独自の核抑止力顕示が必要になった場合、首相自ら我が国が核兵器能力を持っていると宣言、独自の核抑止力を確保しつつ米国の戦略核とのリンケージを確実にする。

・NPT脱退を宣言する際には、事前に米国に対する秘密裏の外交的説得が必要となる。その際には、以下のように説明する。

 「北朝鮮の事実上の核保有、中露の急速な核兵器と通常戦力の増強近代化、尖閣周辺・南シナ海などでの中国による力を背景とした覇権拡大などの動きに対し、米国も国際社会も有効な対応策を取れず、抑制できなくなってきている」

 「日本はこれまで一貫して米国の核の傘に核抑止力を全面的に依存してきた。しかし、今や核の傘の信頼性は低下していると判断せざるを得ない」

 「このような『異常な事態』により、我が国固有の領土などの主権と国の安全、国民の生命・財産などの『至高の利益』が脅かされる、NPT第十条に規定する脱退理由に該当する事態が生起していると、我が国は認識している」

 「そのため我が国はNPTを脱退し核保有することを決断した。NPT脱退宣言前に、それを黙認するよう米国に要請する」

 さらに、以下のような説明を付加する。

 「米国が日本の核保有を容認しなければ、米国の拡大抑止が低下した場合、日本は通常戦力を増強しても、中露朝による核恫喝に結局は屈し大陸勢力に取り込まれることになるであろう」

 「そうなれば、米国は第2次世界大戦でのアジア太平洋で得た成果をすべて失うことになる。それを阻止するには米国は、中朝さらには露も敵にすることを覚悟して通常戦力により大規模軍事介入をせざるを得なくなるであろう」

 「米国としては、北東アジアと太平洋の既得権と覇権を守るために日本を同盟国として維持しなければならない」

 「そうとすれば、日本に核保有させ、英国型の核保有態勢にし米国の戦略核と確実にリンケージするようにしておけば、日米ともに核抑止力は飛躍的に強化され、核戦争も大規模通常戦争も抑止され、アジア太平洋の平和と安定は維持される」

・米国が応じない場合の対策は上に述べたとおり。米国が黙認しても、中露朝、韓国は反対するであろう。

 韓国には、北と相互核抑止態勢をとらせるため、核保有を黙認する。中露の反対はあっても米国が黙認するなら核保有に踏み切り、中国全土、極東ロシアを攻撃できるSSBN核戦力を整備する。

 英仏とは対露、インド・ASEAN(東南アジア諸国連合)・豪州とは対中核抑止で連携を働きかける。台湾の核保有も黙認し、大陸の台湾侵攻を抑止する。

筆者:矢野 義昭