AI、ブロックチェーン、VR・AR・MR・・・これから先端テクノロジーはどのように活用されるのか。そして、どんな新しいテクノロジーが登場するのだろうか(写真はイメージ)


 1月28日、仮想通貨取引所、コインチェックから大量の仮想通貨「NEM(ネム)」が不正流出するという衝撃的な事件が起きた。奪われたのは同社が顧客から預かっていた5憶2300ネム(当時の実勢レートで約560億円)。同社は仮想通貨取引所として対応しておくべき「マルチシグニチャ」「オフライン管理」など不正アクセス対策を怠っており、ずさんな管理体制を狙われる格好となった。今回の事件によって、常にハッカーに狙われ流出・消失しかねない仮想通貨のリスクが浮き彫りになり、仮想通貨の将来を不安視する声も聞かれる。

 しかし、仮想通貨そのものが「危険な存在」であるわけではない。さらに言うと、この事件によって仮想通貨の基盤技術であるブロックチェーンの信頼性や将来性が損なわれたわけではない。

『』(城田真琴著、日本経済新聞出版社)


 野村総合研究所 ビジネスIT推進グループ グループマネージャー/上級研究員の城田真琴氏は、最新著書『大予測 次に来るキーテクノロジー2018-2019』で、ブロックチェーンは経済や経済を変革する可能性を秘めているという。

 ブロックチェーンは「障害に強い」「透明性が高い」「改ざんできない」「管理者が不要」という特徴を持つ画期的な技術である。 <今後は、仮想通貨のインフラとしての利用から、取引や権利の記録、さらには、スマートコントラクトのような、将来、発生する手続きや処理の記録へとブロックチェーンの適用分野は広がっていくだろう> というのが城田氏の見立てだ。長い目で見れば、今回の事件は、仮想通貨が投機対象から脱却する機会と捉えられるかもしれない。

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進展するセンサー技術、錠剤の中にも

『大予測 次に来るキーテクノロジー2018-2019』は、先端技術の動向をウォッチし続けたきた城田氏が、「次に来るキーテクノロジー」として8つの技術や技術のソリューションを国内外の先行事例とともに紹介した本である。取り上げているのは、「人工知能(AI)」「自動運転」「音声操作インターフェース」「チャットボット」「VR・AR・MR」「バイオメトリクス認証」「IoT」「ブロックチェーン」だ。

 本書には、現在開発が進められているテクノロジー、まだ誕生したばかりだが将来有望なテクノロジーなど、さまざまなテクノロジーが登場する。そうしたテクノロジーが、現在主流となっているテクノロジーとどのように入れ替わっていくのか、私たちの生活やビジネスをどう変えていくのかなどを、城田氏は解説する。

 例えば、現在ビジネス分野でAR(Augumented Reality:拡張現実)の活用が進んでいる。ARは、目の前にある現実世界の環境に、コンピュータで作られた映像や画像を重ね合わせることで、現実世界を拡張する技術だ。アパレル分野では、自分のサイズに合わせてバーチャルに試着できるARアプリケーションが登場している。自動車業界でも、自動運転の進展に伴い、フロントガラスへの「ARヘッドアップディスプレイ」の搭載が当たり前になる可能性がある。

 当面はスマートフォンがARデバイスの主役になるが、城田氏は、<スマートフォンに代わり主役の座に就くと予想されるのが、「グーグルグラス」のような「ARスマートグラス」である>という。

 ARスマートグラスは、AR機能を有するメガネ型デバイスだ。<工場や医療現場などのように両手で作業したい場面でも、手を離すことなく、メガネ上でマニュアルの確認や指示内容の参照ができる> というメリットは大きい。物流倉庫のピッキング作業での利用など、先進的な企業ではすでに実証実験を開始しているという。スマホの需要が減速する中、ARスマートグラスはポスト・スマホの最有力候補とも目される。

 IoTの分野でも、新しいテクノロジーや活用法が続々と登場している。城田氏は、<産業機械や産業機器などのモノを対象としてIoTが一定の成果を収める中で、今後、注目を集めるのは、人間、あるいは人間が直接触れる衣服や靴などを対象としたIoTであろう> と記す。

 こうした人間を対象としたIoTは「IoH(Internet of Health)」と呼ばれる。IoHはセンサーによって生体データを収集し、体調の管理などを行う。心拍数や睡眠時間などの生体データを収集するデバイスは、手首に装着するタイプが主流だが、ウェア型の「スマートクロージング」も登場している。また、センサー技術の進展はすさまじく、米国では1ミリ大のシリコンチップセンサーを埋め込んだ錠剤も開発が進んでいるという。

インターフェースは音声が主流に?

 世界のトップを走るIT企業群が、“何を巡ってどんな戦いを繰り広げているのか”も、本書のよみどころの1つだ。例えばこれから激しさを増しそうなのが、音声アシスタント端末市場での戦いである。

 現在、パソコンのインターフェースといえばキーボードやマウス、テレビや電子レンジといった家電のインターフェースならば操作ボタンやリモコンが一般的だ。だが、城田氏は、<5年後、あるいは10年後には別のものに置き換えられている可能性がある> <次世代のインターフェースの主役となるのは、ほとんど誰もが使える音声になる可能性が高い> という。

 人間にとって音声ほど直感的に機械を操作できるインターフェースはない。米国の市場調査会社、comScore社は「2020年までに検索の50%は音声で行われる」という予測を発表している。

 アマゾンは2014年に米国でスピーカー型の音声アシスタント端末「アマゾン・エコー」を発売し、音声アシスタント端末市場を切り開いた。同社の独自の音声認識技術「アレクサ」を搭載するアマゾン・エコーは、累計で500万台以上が売れたとされる。

 現在、音声アシスタント端末市場では、アマゾンの存在感がひときわ大きい。だが、戦いの火ぶたは切って落とされたばかりである。 <アマゾン・エコーとアレクサがさまざまなサービスや機器と連携して勢力を拡大するのを横目で見ていたグーグルやアップル、マイクロソフトなど他のITベンダーも、同様のデバイスやサービスを2016年末から相次いで市場に投入し、熾烈な競争が始まりつつある> のだ。特に「スマートホーム」「オンラインショッピング」などを舞台に、アマゾンとグーグルの激突が予想される。

 城田氏の「予測」が、その通りになるかどうかは分からない。しかし、本書で描かれる先端テクノロジーの見取り図やIT業界の動向は、新しいテクノロジーやサービスを開発したり、テクノロジーの活用方法を考えたりする際の有効な指針になるはずだ。デジタルトランスフォーメーションに関わる人に、ぜひ一読をお勧めしたい。

筆者:鶴岡 弘之