「投信は、コストの安いETFを買っておけば大丈夫」。これは本当だろうか。投信を選ぶ場合は、もう少しコストの中身を見るべきだ(写真:プラナ/PIXTA)

投資信託は本当に誤解が多い。前回(投資信託は、本当に「長期保有」が正しいのか)は投資信託の長期保有が必ずしも正しくないことを指摘したが、今回は「運用管理コスト(信託報酬)」について。たとえば「ETF(上場投資信託)は運用管理費が安いから優れている」が「常識」だが、本当だろうか。そもそも運用管理費とは何だろうか。良い投資信託商品の見極め方について、引き続き元・敏腕ファンドマネジャーで、運用会社の社長も務めた大島和隆氏に聞く。

投資信託の「運用管理費用」の内訳はどうなっているのか

投資信託を購入、保有するにはコストが掛かります。その中で最も大きいのが、「購入時手数料」と「運用管理費用(信託報酬)」の2つです。

これ以外にも細かく見れば、監査費用、組入有価証券の売買コストなども、投資信託の保有者が負担するコストに含まれますが、まずは2大コストである「購入時手数料」と「運用管理費用」が本当に妥当なものであるかどうかを考えてみましょう。

この2つは、同じコストでも何が違うのでしょうか。購入時手数料は文字どおり、投資信託を購入したときに発生する手数料で、それ以降はいっさい取られません。そして、投資信託を購入した人が払った購入時手数料は、全額が販売金融機関のものになります。

これに対して運用管理費用は、投資信託を保有しているかぎり、ずっと取られます。仮に年率2.0%が運用管理費用の料率だとすると、日々その365分の1に相当する0.00547%(100万円購入すると、約55円)が、自動的に引き落とされていくのです。投資信託会社は、この「運用管理費用の一部」を収益源として得て、会社としての経営を維持しています。調査にかかわる費用は当然のこと、ファンドマネジャーやアナリスト、その他さまざまな計理・事務作業などを行っている社員の給料も、ここから支払われています。

また「運用管理費用の一部」といったように、運用管理費用は投資信託会社だけの収入源ではありません。信託銀行にも、投資信託の資産を管理しているという仕事に対する対価として、運用管理費用の一部が支払われています。

ただ、ここでひとつ気になるのは、運用管理費用の半分程度、もしくはそれ以上が販売金融機関にも払われているという事実です。

販売金融機関は、投資信託の保有者に対して情報提供を行っているという名目で、運用管理費用の一部を「代行手数料」として受け取っています。具体的に、代行手数料がどの程度なのかということですが、仮に運用管理費用が年率1.6%だとすると、この内訳は、たとえば信託銀行の取り分が年0.1%、投資信託会社が0.75%、販売金融機関の代行手数料が0.75%といった割り振りになります。

投信を売る金融機関は、管理費用を取りすぎている

つまり、販売金融機関は、購入時手数料だけでなく、運用管理費用の約半分(時に半分以上)を受け取るのです。元投資信託会社の社長の立場で言えば、正直なところ「ちょっと! どれだけ持っていくの?」と、文句のひとつも言いたくなります。

では、販売金融機関は代行手数料を受け取る代わりに、投資信託の保有者に対して、どのようなサービスを提供しているのでしょうか。もし興味がある人がいたら、是非、販売金融機関に直接、電話を掛けるか、もしくは店頭で直接質問してみて下さい。

おそらく、ほとんどの販売担当者からは「お客様への情報提供をはじめとした継続フォローをさせていただきます」という答えが返ってくるでしょう。

でも、情報提供って何でしょうか。今時、多くの人がパソコンやスマートフォンを通じて、運用会社のホームページにアクセスできる環境を持っています。投資信託の基準価額が直近でいくらなのかは、リアルタイムでわかりますし、運用レポートも読むことができます。

おそらく情報提供といっても、年に1回か2回、投資信託が決算を迎えた後に作成される運用報告書を郵送する程度でしょう。その運用報告書も、最近では電子交付に切り替わりつつあります。こうなると、はたして販売金融機関に代行手数料を払う意味が、どの程度あるのかという疑問が浮かんできます。

最近はETF(上場投資信託)など、インデックス運用の投資信託が個人の間で人気を集めるなか、「投資信託のコストは、安ければ安いほど良い」というのが半ば常識化しています。確かに、投資家サイドから見て、リターンを最大化させるのであればそのとおりです。

運用管理費用の内訳が良い投信選びの判断基準の1つに

しかし、運用管理費用の一部を収益源としている投資信託会社は、運用管理費用が下がれば下がるほど、投資信託のリターンを支える運用業務の充実化に、経営資源を割けなくなります。最初にカットされるのが調査関連費用、次が人件費です。コスト削減の行きすぎがリターンの低下につながるような事態になったら、それこそ本末転倒でしょう。

国内外の株式などに投資するアクティブ運用の投資信託については、販売金融機関の代行手数料を引き下げれば、その分運用管理費用の料率をかなり下げることができます。たとえば、前出の例で言えば、運用管理費用が年率1.6%で、信託銀行の取り分が年0.1%、投資信託会社が0.75%、販売金融機関の代行手数料が0.75%だとしたら、代行手数料を除いた部分の運用管理費用の料率は0.85%ということになります。

しかし、販売金融機関は現在も、できるだけ自分たちの取り分を増やそうと必死です。某大手投資信託会社が運用している、世界の割安株で運用する投資信託の運用管理費用の料率(手数料)は、実に奇妙です。税抜きの料率は年1.120%で、その内訳は投資信託会社が0.4%、信託銀行が0.02%、販売金融機関が0.7%というように、販売金融機関に大きく傾斜配分されています。

興味深いのは、このお互いの取り分は、純資産総額が250億円未満のものだということです。250億円以上になると、投資信託会社の料率が0.4%から0.3%に引き下げられ、販売金融機関の料率が0.7%から0.8%に引き上げられるのです。つまり、この料率設定は、販売金融機関にインセンティブを与えているとしか考えられません。


一方、「販売時手数料が無料(ノーロード)」の投資信託の方が安くていい」という「常識」も時には疑ってかかるべきです。本来もっと安くあるべき運用管理費用が相当高くなっている投資信託があるからです。私が「ほとんどの既存の投資信託には問題がある」と言っている理由は、このようなところにあります。

こうして見ていくと、金融機関が「フィデュシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営に関する原則)宣言」をしている意味とは何か、当事者は、もう一度考える必要があります。投資信託を選ぶ基準はさまざまですが、運用管理費用も判断基準のひとつです。少なくとも、投資信託会社と販売金融機関の料率が同一か、販売金融機関の料率が投資信託会社のそれを上回っている投資信託は、再検討の余地があると言っても良いと思います。